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第2話

そんな感じで五番勝負の心配もしながらも休みの日に商店街へ買い物に行った時のことです。


「よう!このあいだの後楽園ホール大会、すごかったなー。やっぱりショウ子さん強かったなー」

「ちょっと、あんなことやってて大丈夫だったの?チャンピオンもいいけどおばさんそっちの方が心配よー」

「お疲れさん、初防衛戦はいつやるんだ?今度こそ会場で観戦するぞ!前の日から並んじゃうからな!」

「後楽園の盛り上がりったらなかったなー。先にチケットを買っておいてよかったよ」

みたいな声を聞きながら差し入れなんて貰っちゃって、私の買い物どこじゃなくなってしまったんですけど。後楽園ホールにきてくれた人も配信で見てくれた人も、皆さん楽しんでくれたようで何よりです。


そして家族に報告した返事が返ってきまして。

「頑張っているのはいいけどあんまり危ないことはしないでよ?おじいちゃんから聞いただけでドキドキしちゃったんだから」お母さん、プロレスなんだからそれはできない相談ですよ。

「なんだ、落語家さんに座布団でも配ったのか?それとも何の仮装したんだ?」お兄ちゃん、多分ボケたつもりでしょうけど全然面白くないよ。っていうかあの番組があの会場でやってるのを知ってたのが驚きよ。

「まあくれぐれも、皆さんに迷惑をかけないように頑張りなさい。体に気をつけて」お父さん、多分心配してくれてると思うんだけど…なんていうか、反応に困る返事よ?

「とうとうプロレスの聖地に上がったか。最初に相談された時は、まさかここまで頑張れるとは思ってなかったわい。まあ今回はショウ子さんに連れて行ってもらったんだから、いつかは晴子が後輩たちを連れて行けるようにならないとな。とりあえずお疲れさん」おじいちゃんが一番理解してくれているみたいですけど、後輩の件はちょっとわかりません。


そして商店街の皆さんの話し合いはというと、七夕祭りや大晦日などでお世話になっている神社の宮司さんから、せっかく新しくチャンピオンが誕生したならばその報告を地元の神様にしてみるのはどうかと、さらには今後の発展と選手たちの安全を祈願してみてはと、そのためにプロレスを奉納してみませんか?より多くの地元の皆さんに見てもらって楽しんでもらえるいい機会だと思いますよ?と提案があったそうです。ただ、神社には土俵があった形跡は見えましたが屋根がない屋外では準備の段階から雨が降ると予定が立てにくく、当日が雨になってしまうとそれまでの準備がまるっとムダになってしまうリスクがあるので難しいとのことです。商店街の会長さんと宮司さんの考えに、商店街の青年部とGPWOのスタッフさんが反対ですが上田さんは乗り気です。これは開催する流れになってしまいますかね。


いざ開催するとなるといつやるの?お披露目するなら早いうちの方がいいでしょう!善は急げということで天気予報専門の会社にいつなら雨の確率が低いか聞いて、来週末に急遽決定となりました。一応雨が降ったら順延も考えて予定を組むことになりました。今の天気予報はピンポイントでここには何時頃雨雲が接近しますというのがわかるのが凄いですよね。私の使っているニュースアプリにも〝◯◯時頃から雨雲が接近します。お出かけには折り畳み傘があると安心です〝なんてメッセージがきますからね。


神社にプロレスを奉納するのが決まってからの準備がもう大変です。大会前日からのスケジュールを大急ぎで(GPWOのスタッフさんが)作って、座席をどうするか、来賓はどうするかを(商店街の青年部の皆さんが)決めて、商店街や外部への告知や案内板を(商店街の青年部の皆さんが)作って、屋台の手配やそれらを会長さんが仕切っていくそうです。

ドリームファクトリーとしてもその日限定記念グッズを作るとかでHoney or Trapのスタッフさん、デザイナーさんや業者さんと打ち合わせで忙しなく動いていたり、松本さんがまた新しいコスチュームを用意するみたいです。そして、堀田さんのアイドルグループもその場で仮お披露目するとかしないとかでにわかに盛り上がってきているようです。

チャンピオン決定トーナメントが終わって少しは落ち着いてゆっくりできるかなーとか思っていましたがそれがきっかけで忙しくなるなんて想像もしていませんでした。


このタイミングに合わせてかどうかはわかりませんが、ジャスミンさんが来日してきました。相変わらず凛とした切れ長美人ですが、イントネーションがちょっと違う日本語がギャップで私をほっこりさせてくれます。

映画関係の仕事をしていない時は芸能人扱いをしないでほしいらしいので、なるべく先輩たちと同じような言葉使いをするように気をつけていますが、堀田さんはその筋の大スターなので今だにガチガチなんですけどね。


改めてジャスミンさんに今回の目的を聞いてみると、ドリームファクトリーに参戦するのが半分、お花見をするのが半分みたいな感じらしいです。そういえば外国の方々が日本の桜を見たいと、この時期を選んでやってくるみたいですね。

「日本の春は本当に幻想的!天国ってこんなところなのかもね」

「ワオっ!なんてことだ!観光地だけじゃなくて街全体がピンク色に染まってるじゃないか!」

「写真で見た時は最新の画像処理の進歩だと思っていたけど、初めて日本に来たら実際にこんな景色があるなんて!って思ったよ」

「散り際の潔さがサムライに通じるものがあるんだろうね」

「日本人は1200年前からお花見をしていたんだぜ!その時は梅だったらしいけど」

「絶対、次の旅行先は春の日本にする!そのために今からお金を貯めなきゃ」

「私たちはハネムーンの行き先に決めたわ!」

「毎年こんな景色が見られるなんて、日本に住んでいる人たちは羨ましい!」

なんていう感想やウンチクを知ってくれていたり、旅行先に選んでくれるなんてちょっと嬉しく思ったりします。



「大きく胸で息を吸いますヨー」

ジャスミンさんが私たちの練習が始まる前の道場で、商店街の皆さんが集まって健康体操の太極拳教室を開いています。これはジャスミンさんがやってくると毎回恒例になっているようで、開店前の忙しい時間なのに十数人も集まっています。


「吸った息は静かに空へ返しますヨー」

私も皆さんと一緒にジャスミンさんに合わせて息を吸ったり吐いたりを止めることなく動いていきます。それにしてもゆっくり動くのってかなり大変で、それに手の動きとか足の動きが普段の生活に使ってない筋肉を使っているようでなんかプルプルしてきました。健康体操なんて軽く見ていたけどホントごめんなさいって感じです。商店街の皆さんや私がふらつきながらもやっとの思いで動いているのに対して、ジャスミンさんのなんて滑らかさよ。スーッと流れるように動いてピタッと止まって、人間てこんなに綺麗に体を動かすことができるんだなぁって見とれちゃいました。

そんな動きを10分くらいしただけで体が中から暖かくなってきました。見た目と違って運動量があるんですね。体幹が鍛えられるっていうんでしょうかそんな感じがしました。


「お疲れ様でしたヨー」と私たちに一旦休憩させると、ジャスミンさんはもう少し太極拳を続けていくみたいです。座りながらその姿を見ているとだんだん動きが速くなってきました。(※1)

「イー、アル、サン、スー」

ゆっくり中腰になったかと思うといきなり

「ウー、リョウ、チー、パー」

腕を交差しながらジャンプして反対側に向きなおします。

「ドン、ナン、シャー、ベイ」

ダンっ!と大きな足音を立てたと同時に手を横に振り

「チン、チャオ、ロウ、スー」

腕をくるっとしたかと思うと体をひねってから足を大きく踏み出してまたしても大きな音を立てました。さっきまでの太極拳の動きとあんまり変わらないように見えたんですが、何というか同じものとは思えないほどの迫力がありました。一緒に休憩していた皆さんもぽかーんとしています。男性陣からは「何だあれは、すげえな!」なんて聞こえてくるほどです。ジャスミンさんはアクションもできるからこのくらいは当たり前なのかな?ということは他にも技を知ってるかも?そうしたら、タイミングを見てキックの技について相談してみようかなー。

海外の反応 パンドラの憂鬱 を参考にしています

※1 太極拳にこんな動きはありません

筒状のものがあると左手の装着して「サイコガン」とかやってましたね

謹んで寺沢武一先生のご冥福をお祈りいたします

次話は9月25日を予定しています

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