第14話
プロ野球チームの応援歌の発車メロディを聴きながらJR水道橋駅の西口改札を出て右手に曲がり、神田川にかかる後楽園ブリッジを渡ると見えてくるのはクリーム色のビル、スポーツ新聞社と競馬関係の看板が目立ちます。橋を渡りきると右手にはボウリングやローラースケートなどが楽しめるスポーツ総合施設、その後ろにはジェットコースターやパラシュートが上下するアトラクションがある遊園地が見えます。特撮ヒーローが「僕たちと握手!」といっていた場所はここでしたか。悪役の下っ端が観客席のちびっ子をステージに連れてきて自己紹介させたり簡単なゲームをさせるヒーローショーをやっているんですよね。
ここではなかったけど、子供の頃お兄ちゃんと少し離れたショッピングモールでそれに出たことがあって、泣きながらもステージでゲームをしてちゃっかりおもちゃをもらってきた事があったっけ。
その隣にはドーム型野球場の白い屋根が見えます。広い土地の大きさをわかりやすく例えるのに◯◯ドーム何個分でお馴染みですね。でも◯◯ドームの大きさがわからないと例えられてもねーっていつも思ってます。
それはともかく、クリーム色のビルの先にあるのが今日の会場である後楽園ホールビルがあります。入り口付近に当日券売り場があり(お!並んでくださっている方々はうちのお客さんですよね?)、中に入ると左手にはエレベーター乗り場、右手には高級そうな中華レストランに続くエスカレーターが見えます。案内板で見ると後楽園ホールは5階ですね、3階と4階は会社の事務所っぽくで6階にはボクシングコミッション?何かわからないですけどボクシング関係の施設があるようです。
エレベーターで5階まで上がり、扉が開くとすぐ目の前に入り口があります。ロビーに入ると売店とトイレ、ホールを囲うようにある壁にはボクシングの歴代チャンピオンの写真が飾られています。おー、ほとんど見た事ない選手ばっかりです、ん?この人見たことある。えーーーっ!このおとぼけタレントさんて元はボクシングの選手だったんですか?しかも世界チャンピオン?あ、この人もこの人も。へえー、知らなかったですよ。
ほうほう、施設利用表ですか。今日はちゃんと私たちドリームファクトリーの名前が書いてありますね、当たり前ですけどなんか嬉しいです。他にも男子の団体やボクシング、格闘技のみなさんも結構利用されているんですね、さすが聖地と言われるだけあります。
おや?もしかして日曜夕方の大喜利番組もここでやってるんですか!じゃあ倉庫には大きな座布団とか着物とかあったりして。おやおや?社交ダンスの大会もここを利用してるんですか、なんか意外ですね、格闘技とは全然関係ないのに。あ、聖地と呼ばれているけど格闘技専用じゃないんですもんね。しかも都内で駅に近いから色々使い勝手がいいんでしょうから。
エレベーターがあったところまで戻り10段くらいの階段を上がって扉を開けると、わあーーー、中央にはおなじみのリング、それを囲むように椅子がすでに並べられています。正面に舞台のように少し高くなっていてその奥に木製のベンチが何段もあり、壁には大きなスクリーンがあります。こっちが北側で私が入ってきた扉側は南側でオレンジ色の座り心地の良さそうなシートがびっしり並んでします。西側と東側も北側と同じような木製のベンチが階段のようになっていて番号が振ってあるだけなんですね。
リングサイドまで来て周りを見ると、なんかうちの道場に作りというか雰囲気が似ているような気がします。オレンジの椅子席とベンチの階段のようになっている席がなかったらほとんど同じじゃないかな?控え室に繋がる通路もそうだし天井の高さもあるし、もしかして道場を作った時にここを参考にしたのかもしれませんね。
そして天井にはリングと同じか大きいくらいの四角い照明がいくつもぶら下がっています。うわーカッコイイなーこれ。ここから赤とか緑の光が選手に向けられるんでしょうね。
と、お客さん目線で駅から後楽園ホールまでのレポート、みたいな雰囲気をやってみまし…
「晴ちゃん!そろそろ休憩終わりよー!こっちの準備手伝って!」
工藤さんに呼ばれて最終的な準備に取り掛かろうと思います。こういうのって堀田さんだったらもっと上手にレポートできたんだろうなー。今度コツとか教えてもらおうかなー。
そうそう、駅からこっちに向かう途中の橋を割っている途中くらいからやたらと女の子が並んでるんですよね。何かなーと思ってチラッと見ていると「チケット譲ってください」みたいな手書きボードを持ってる人がいたんですよ。うわー、ドリームファクトリーも女の子たちに支持されるくらい有名になったんだなーってニヤけそうになったんですよ。でもよくよく見てみると、国民的アイドルグループがドーム型野球場でコンサートをするんですって。その日とちょうど重なってそういう勘違いが起こっちゃいました。なんだ残念。先週の大会終わりに実況の人が前売りチケットが売り切れました!みたいなことを言っていたのでついね、期待しちゃったんですよね。
実)視聴者の皆様こんにちは。プロレス・格闘技の聖地、東京後楽園ホールからライブ配信でお送りしております。本日はこれまで数々の熱戦を繰り広げ、勝ち進んだ4選手からドリームファクトリー初代チャンピオンが決まります、決定トーナメントの準決勝と決勝戦が行われます。実況は潮野真琴、解説は月刊女子プロレス副編集長の佐倉和代さんです。どうぞよろしくお願いします。
解)月刊女子プロレスの佐倉です、本日もよろしくお願いします
実)いよいよですね、初代チャンピオンが決まります。会場も異様な雰囲気に包まれているようです。
解)そうですね、旗揚げから様々な苦労があってやっとここまで漕ぎ着けたという感じでしょうか。お客さんもそれを感じているのでしょうね。
実)旗揚げ当初から試合内容に関しては良かったのですが選手層が充実するまで時間がかかりましたからね。
解)でも、こんな歴史的な瞬間に立ち会えることができて私も非常に嬉しく思っています。
実)初代チャンピオンが決まる瞬間なんてお目にかかるなんてなかなかないですからね。そしてこの準決勝、決勝戦がチャンピオンとしての強さの指標となりタイトルマッチの基準となるかもしれません。それでは本日のラインナップをご紹介していきましょう。
第一試合、ダイヤモンズの起田寛子・北宮秀美組対ドリームファクトリーの佐藤琴音・堀田晶組
第二試合、ダイヤモンズの宮原ちえみ・中島明菜組対CRGの大木カラン・増田マリー組
第三試合、初代チャンピオン決定トーナメント準決勝第一試合、上田ショウ子対豊田エツ子
第四試合、初代チャンピオン決定トーナメント準決勝第二試合、クリス・ホークフィールド対CRG志村ローズ
第五試合、工藤江利花・山田綾組対松本ひなこ・中野香織組
第六試合、宇野愛菜・大森悠組対CRG原口タイム・吉岡ルコル組
第七試合、ダイヤモンズ佐々木北斗・横田未来組対立野みづき・萩原香澄組
第八試合、初代チャンピオン決定トーナメント決勝戦 第三試合の勝者対第四試合の勝者
実)第七試合までは30分1本勝負、決勝戦はなんと!時間無制限1本勝負となっております。本日はダイヤモンズ、CRGの選手も大会を盛り上げようと出場し全八試合が行われます。決定トーナメント以外はすべてタッグマッチとなっております。ところどころで対抗戦のようなカードが組まれていますのでお互いの団体のプライドをかけて熱い試合が繰り広げられることでしょう。
解)なかなか豪華なラインナップですね。特にCRGは志村選手が準決勝を控えていますので、自分たちが勝利することで志村選手へのいい勢いをつけたいですね。
実)ひとまずここではトーナメント以外の試合に注目していきたいと思います。まずは第一試合と第二試合にはダイヤモンズの若手とドリームファクトリー、CRGの若手同士が対戦するという形になっていますね。
解)そうですね、第一試合の4選手はキャリアも年齢も近い存在なので元気溢れるファイトでしのぎを削り会場を盛り上げて欲しいですね。そして負けん気の強い宮原・中島選手がどうCRGのタッグを攻略するのか、またはこの中ではキャリアのある増田選手が軽くあしらってしまうのか、大木選手の頑張りにも期待したいですね。
実)第五試合は工藤・山田選手が対松本・中野選手と、第六試合では宇野・大森選手がCRGの原口・吉岡選手と対戦します。
解)これはドリームファクトリーの中堅選手に対するひとつの試練なのかもしれませんね。
実)と申しますと?
解)第五試合は上り調子の工藤・山田選手を松本・中野選手がどう料理するか、もしくは下克上を許してしまうのか。第六試合の宇野・大森選手がCRGの実力者でもある原口・吉岡選手にどこまで通用するのかがポイントになるかと思いますね。
実)なるほど〜、そういう見方がありますか。若手の成長が著しいドリームファクトリーですから中堅の選手もうかうかしてられません、先輩の意地を見せつけて上位人との差を埋めて欲しいとこです。そして第七試合は初代チャンピオン決定トーナメントで惜しくも準決勝に進めなかった選手同士の対戦となります。
解)実力者がずらりと並ぶ中に立野選手がどれくら食らいつけるのかが注目されると思います。そして今日の試合内容によっては、もしかしたらこの中から次の挑戦者が出てきてもおかしくないと思っています。
実)そうですね、直接破れた佐々木選手にもチャンスが生まれるかもしれませんね。
実)ここからは準決勝の2試合です。上田選手対豊田選手はドリームファクトリーでも屈指の実力者同士の対戦となります。パワーに勝る豊田選手をどう上田選手が攻略するか、上田選手のテクニックを豊田選手のパワーで吹き飛ばすのか。そしてクリス選手対志村選手の対戦もパワー対テクニックの対戦になりそうですね。ただ志村選手にはこのトーナメントでは見せていない技がありそうです。
解)そうですね、正統派でありながら得体の知れない雰囲気を持っている志村選手に期待が集まるかも知れませんがクリス選手もそれを押しつぶす力がありますからね。
実)この戦いに勝った選手が決勝戦へと進みます。ファン待望の上田対志村は実現するのか、豊田選手、クリス選手がパワーファイトで押し通すのか、歴史に名を刻む運命の刻が迫ってきます。
解)そこで大切なのが準決勝での戦い方ですね。いかにダメージを受けないか体力を温存できるかがポイントになると思うのですが、そんな戦い方をして勝てる相手ではありませんからね。
実)そうすると、いかに早くダメージが回復できるかが勝利のカギとなりそうです。決勝戦まで3〜4試合ある中でどれだけ回復するか。その点では上田選手、豊田選手のどちらかがやや有利なのかも知れません。
さあ、段々と客席も埋まりほぼ満席状態、立ち見もチラホラと見えるようになってまいりました、雰囲気も出来上がった状態と言ってもいいでしょう。それでは間も無く試合開始です!
次話は7月25日を予定しています