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第13話

第六試合、青コーナーからクリスさんがノリノリの入場曲で明るく元気に、通路側のお客さんとハイタッチしながらリングに向かっていきます。赤コーナーから立野さんの入場なんですが、緊張してるのかしら?表情がちょっと硬い感じがしますね。お客さんの声援はクリスさんに負けてないくらいなのは立野さんへの期待の表れかもしれませんね。


リングに上がっても余裕を見せるクリスさんとは対照的に相変わらず硬い表情の立野さん、ボディチェックが終わりいよいよ試合が始まっちゃうけど大丈夫かしら?


ゴングが鳴るとリングの中央に吸い寄せられるように移動していくクリスさんと立野さん。おや、立野さんの表情がキリッとしているような気がします。試合が始まるのと同時に気持ちが切り替わったようですね、さすが歴戦の猛者は違いますね。

腕を伸ばし、低い体勢でクリスさんの様子を伺っていた立野さんはフェイントから左足にタックルをしたかと思ったらすぐにバックにまわり腰のあたりに組みつき、ぐっと持ち上げてうつ伏せに倒すとヘッドロックをかけていきます。その腕を取り返されてハンマーロックをかけられ、その肩口にヒザを落とされました。

カモーーン!と言いながら少し距離を取るクリスさん、立野さんが立ち上がるとさっきと同じように腕を伸ばして牽制していきます。

クリスさんが強引にロックアップのように組み合うと立野さんをロープに振りショルダータックル。倒れない立野さんを見るとロープに走り今度はフロントハイキック!これでも倒れない立野さんにもう一度フロントハイキックを狙うもそれを躱されると立野さんがショルダータックル!その勢いでロープまで飛ばされるもクリスさんがさらにフロントハイキック!倒された立野さんはコーナーまで下がっていきます。

同じ技を何回も出してやっと倒したクリスさんはガッツポーズ!そして立野さんを睨みつけています。フロントハイキックで倒れなかったのがよっぽど悔しくて意地でも倒したかったんでしょうね。対する立野さんは顔に手を当てながらクリスさんを笑顔で、笑顔?で見ています。いやいやそんことないはず。でもちょっと笑っているように見えてしまいます。


それを見たクリスさんは立ち上がるのを待ってから突進してフロントハイキック、立野さんはその蹴り足を捕まえるとそのまま押し倒してフロントネックロックを狙っていきます。クリスさんはなんとかその腕を掴んで決まらないようにしていきます。すると立野さんはバックにまわりスリーパーホールドを狙っていきます。しかも胴体に足を絡めて動かないようにしながら。うわあ、こんなの極まったら一瞬でギブアップよ、なんていう私の予想を覆すようにしのいでいるクリスさん。その足を完全にロックされないようにしながらも首を守りながら、とにかく立野さんの攻撃に対処してギリギリ決めさせないクリスさん。たまに練習で立野さんとスパーリングをさせてもらっているのですが、私だったら既に何回ギブアップしてるんだろうっていう攻撃が決まってないんですから。意外といっては失礼かもしれませんが、思ったより器用でテクニックもあるのかもしれません。今まではセクシーでパワフルなイメージが大きかったからこういうレスリング的な動きは不得意と思っていましたけどしっかりした技術は持っているんですね。まあこれくらいんことができなかったら日本や本場のアメリカでも活躍できてないか、そりゃそうか。


立野さんは、そんなクリスさんの動きが分かるのか、うまくコントロールしているのか分かりませんが自分が有利になるように技をかけていきます。クリスさんは本当にそれらを躱すだけで精一杯な感じです。

そんな立野さんが有利な状況でもクリスさんの長い足がロープに掛かると技を外して両者とも離れていきます。ちょっと疲れが見えるクリスさん、立野さんも疲れてるのかも?有利な立場だったけど体の大きいクリスさんを動かしていたんですからそれなりに体力も必要でしょうからね。お互いに疲れが見える中でも試合が続いていきます。


改めてロックアップをするとクリスさんがいきなりニーリフト!立野さんのお腹にさらに2発目3発目と放つとロープに振ってフロントハイキックが炸裂!倒れた立野さんの両足を掴むと、なんとここでジャイアントスイング!この技はかけた自分も目が回っちゃうんですよね。練習の合間に堀田さんと見よう見まねでやった時は本当に目が回ってフラフラしちゃってしばらく立てなかったんですから。トーナメントの一回戦の時は出さなかったから久々に見ました!お客さんは回転数を数え始め、10回を超えると大きな拍手が起こり、15回くらいで手を離すとさらに大きな拍手とクリスさんへの声援が届きます。やっぱりクリスさんも目が回っちゃったようでクラクラしながら立野さんをフォール、カウント3ギリギリのところで返されてしまいます。


クリスさんはエルボーとニーリフトを2発ずつ出すとバックにまわりジャーマンスープレックスの体勢に入ります。立野さんはこれを腰に回された腕を掴んだりロープに手を伸ばしたりなんとかこらえると、不意にクリスさんの足をふんずけたかと思うと前転するようにその足を掴み、なんとアンクルホールドを掛けながら立ち上がりました!

必死でもがきながらロープに手を伸ばすクリスさんを力一杯リングの中央まで引っ張ってきて、クリスさんに逃げられないように自分の足を絡めていきます。頭をかきむしり痛みに耐えながらゆっくりとロープに近づいていきやっとの思いでロープを掴みました。

お客さんの拍手とため息の中、技が外されるとよっぽど痛かったんでしょうね、足を抱えるようにうずくまってしまいます。そこに立野さんが近づきその足にストンピング、髪の毛を掴んで立ち上がらせるとクリスさんのお株を奪うようなジャーマンスープレックス!ホールドせずに立ち上がると必殺の予選スラム!これはクリスさんが耐え立野さんにエルボーで脱出すると、いきなりグーで立野さんの顔面を殴った!!これは反則です、レフェリーが間に入ってクリスさんに注意しニュートラルコーナーまで下がらせると仰向けに倒れた立野さんの様子を見ています。あー、大丈夫かな、レフェリーの問いかけに反応してるみたいだから大事には至らないと思うけど、とにかくグーはダメですよグーは。


クリスさんがレフェリーを跳ね除けるとやっと起き上がりそうな立野さんにギロチンドロップ!背中にエルボードロップ!痛めた自分の足を叩きながら気合を入れ直すように大きな声を出しました。やっと起き上がってきた立野さんのバックに回ると、ふわっと持ち上げるようなジャーマンスープレックスホールドが決まりました。これには返す体力が残ってなかったらしく、そのまま3カウントが入ってしまいました。


「17分32秒、17分32秒ー。ジャーマン・スープレックス・ホールドによりクリス・ホークフィールド選手の勝ち」


立野さんは残念ながら来週の準決勝には進めませんでした。アンクルホールがあのまま決まっていたら、最後の予選スラムが出せていたらと思わないでもないですが、これはクリスさんのほうが強かったことです。負けてしまいましたが二回戦まで来た立野さんは同期の中で一人勝ち抜いてチャンピオンに近づいたんですから凄いと思います。お客さんも惜しみない拍手が送られてきますよ、と思いながら立野さんの肩を抱えて控え室に戻るのでした。





実)さあ、初代チャンピオン決定トーナメント二回戦もいよいよ最後の試合となりました。メインイベント30分1本勝負が始まろうとしています。青コーナーより萩原香澄選手の入場です。ドリームファクトリー旗揚げから上田選手とともに団体を支えてきた一人であります。他の選手と同様にこのトーナメントには気合がこもっていることでしょう、さあ今セコンドにロープを開けられリングに立ちます。

赤コーナーからはCRGの志村選手がボレロの曲に合わせて入場してきます。通路には本物のバラの花びらが撒かれファンの方々に恭しく向かい入れられています。今回の決定トーナメントに参加した理由ははただひとつ、上田選手との決勝で対戦し勝利すること、今回が最大のチャンスとなるでしょう。ガウンを軽やかになびかせてリングイン!


「本日のメインベント、初代チャンピオン決定トーナメント二回戦第四試合、30分1本勝負を行います!」


実)さあゴングが鳴りました。低い体勢で待ち構えている萩原に対し軽いステップで距離を測っている様子、さあ組み合った。萩原の飛行機投げ腕をロック、絞っていきます。それをゆっくり立ち上がる志村をアームドラッグからキーロックへ。

解)この辺りの攻防はドリームファクトリーの中でもテクニシャンとして3本の指に入る実力者ですからお手の物ですね。

実)ここから志村が自分の腕を掴みなおすと、おおっと持ち上げたー!そのままパワーボムのように叩きつけて強引にロックを外しました。

解)思い切りましたね。これは一歩間違えると自分の腕を痛めるリスクがあるんですけど、スタミナのある今のうちにと選択したのかもしれませんね。


実)お互いに距離を取って仕切り直しです。ゆっくりと近づきロックアップ、志村がヘッドロックに捉えると体重を落としてグラウンドに持っていく。萩原はこの体勢から反転して志村の肩をマットにつける。カウントが入るもすぐに立て直すが再びひっくり返す!危なげなく戻る。そのまま立ち上がると萩原が志村をロープへ、ショルダータックルは志村が打ち勝つ。さらにロープへ、飛び越えと戻ってくると萩原がアームドラッグから腕ひしぎ十字固め!が伸びきる前に志村は自分の腕を掴む!危ないところでした。

解)志村選手が良い反応を見せていますね。対する萩原選手の腕への攻撃が後半にかけてどうなるか楽しみになってきましたね。

実)十字固めを防ぎながら足をロープに掛けたところでレフェリーが技を解いていきます。


実)先ほどから左腕へのねちっこい攻撃が続いています。志村はペースを掴むどころか攻められっぱなしです。これを打開するにはどうすれば良いでしょうか。

解)そうですね、グラウンドテクニックで勝負しようとするとそのままズルズルと引き込まれてしまいそうですので何か一発やり返して一旦距離を取りたいところでしょうね。志村選手もグラウンドには定評があったのですがこれまで良いようにやられてしまっていますね。


実)蟻地獄のようにもがけばもがくほど巣穴に引きずり込まれていってしまう志村ですが、受けながらも虎視眈々とその機会を伺っていることでしょう。あっと、萩原のスタンディングで肩固め!これは肩と頚動脈を極める複合技!さらに巻き込むように投げるとさらに締め上げていく!(※1)必死に足を延ばすがまだ距離があるぞ、セコンドからも声が飛ぶ!どうだ!やっとロープに届いた。場外に逃れて息を整えいるのは志村。これは予想に反して苦戦している模様です。最大のライバルと対戦するには一筋縄ではいかないですね。

解)萩原選手が大きな壁となって立ちふさがっていますね。ここまでほとんどの時間を支配していて、試合前の評判とは違ってそれを上回る戦いを見せていますね。


実)肩と首あたりを気にしながらゆっくりとリングに戻ると萩原が距離を詰めてきた!志村のフロントキック!フライングメイヤーからスリーパーホールドに移行していきます。これはロープが近く萩原の足がロープへ。志村が先に立って待ち構えているぞ?何を狙う?萩原が立ち上がるとドロップキック!コーナーに追い込むと対角線のコーナーへ振る!そこに側転からのバックエルボー!さらにフェイスクラッシャー!息を吹き返したか志村の攻撃が続きます。劣勢に立たされていた志村、ここからどう挽回しくのでしょうか。



実)カバーはカウント2で返されましたがまだ志村のペース。すっと立ち上がり観客を煽っていきます。さあ次はどんな技で仕掛けるか。あっ!萩原が背後から組みつきノーモーションのジャーマンスープレックス!ホールドまではいきませんでしたがかなり危険な角度で投げられましたが大丈夫でしょうか。そこは萩原の肩固め!体を前後に揺すって絞り上げていきます。そこから一回転、志村の足を掴みそのままフォールの体制!(※2)カウントはギリギリ2!レフェリーに3つ入ったんじゃないかとアピールしていますがそのまま。隠し球でしょうか、見たことのない技を出してきました。

解)以前、グラウンドは地味ではあるが基礎だから、みたいな発言をしたかと思うのですが、この技に関してはそんなことはありませんでしたね。肩固めから一連の流れでフォールまでとは想像もつきませんでした。しかし、これで決められなかった萩原選手は逆にピンチなのかもしれませんね。


実)さらに攻める萩原、志村をロープに振ったぞ、あーーー!フランケンシュタイナー!カウントは2、志村もやり返します。萩原にエルボーを連発からバックドロップもカウント2!大きく息を吐きと両手を水平に広げた、ここで決めるつもりか。バックブリーカーで倒すとコーナーポストに登る、ちょっと距離があるぞ?いったーーー!スピードのあるムーンサルトプレス!がっちり肩を抑える!これは返せない!3カウントが入りました!


「16分11秒、16分11秒ー、体固めにより志村ローズ選手の勝ち」


実)いやー中盤までは萩原選手のペースでこのままいくかと思ったんですが、最後の最後で畳み掛け見事に志村選手が勝利を収めました。これで念願のシングル対決まであと1勝というところまでこぎつけました。

解)上田選手とのライバル対決に一歩進んだことは大切なことだとは思うのですが、わたし的には萩原選手のテクニックにも注目してほしいですね。基本的な技でも練習を重ねて組み合わせていけば立派必殺技になるんですからね。目の当たりにできたことを本当にラッキーだったと思いますね。

実)そうですね、派手な技もいいですがこういう技にも注目していくとさらにプロレスが面白く感じるかもしれません。さて、これで準決勝へ進出する4選手が決まったわけですが、改めて対戦カードをおさらいしていきましょう。まず準決勝第一試合は上田ショウ子対豊田エツ子、第二試合はクリス・ホークフィールド対CRG志村ローズと決定しました。どの試合も見応えがありそうですね。

解)どれもハードな試合になりそうですね。

実)ここまでくるとこの4選手がどう当たっても面白い試合になるのは間違いありませんね。しかもこの準決勝、決勝戦は聖地後楽園ホールですからね。ん?ここで速報が入ってきました。来週の後楽園ホール大会の前売りチケットがリングサイド、A席が完売となったそうです。そして当日券の立ち見席の発売が決定したそうです。

解)この配信を見ていた方々が慌てて購入に走ったのかもしれませんね。私たちからすれば配信で楽しんでいただけると嬉しいのですが、やはりプロレスは直接会場で、体がぶつかる音や迫力ある空気を感じてほしいですね。

実)それでは配信終了まで本日のハイライトでお楽しみください。来週はドリームファクトリーの初代チャンピオンが決定いたします。会場で配信でお会いしましょう、それではまた!


※1 回転地獄五輪パート0みたいな技だと思ってください

※2 回転地獄五輪スペシャルみたいな技だと思ってください


立野選手の技はやっぱり予選スラムにしたいと思います

次話は7月15日を予定しています

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