第11話
実)間も無く始まります本日の第三試合は、初代チャンピオン決定トーナメント第二回戦、青コーナーより上田選手が入場してきます。緑色に光るスポットライトの中、悠々とした入場です。第一回戦はドリームファクトリーの盟友、渡辺芹香を22分弱で下しています。さあ今、スッテプを登りガウンを翻してのリングインです。
そして赤コーナーよりダイヤモンズの佐々木北斗選手の入場です。大将である佐々木選手を支えようと4人の若手選手がセコンドとして従ってきています。普段はこの4人を育てる厳しくも優しい母親のような存在ですが、今回の出場が決まった時から1人のレスラーとして決定トーナメントに臨んできています。リング下で一度祈るようなポーズを取ると気合一発声を出しセコンドに見守られながら今リングインです。
「ただいまより、ドリームファクトリー初代チャンピオン決定トーナメント第二回戦第一試合、30分1本勝負を行います。青コーナー、140パウンドー、うえだー、ショー、コーーー!」
「赤コーナー、160パウンドー、ダイヤモンズ、ささきー、ほくーとーーーー!」
実)選手それぞれのカーラーに染まった、リングを覆い隠すほどの紙テープを片付けられていきます。解説は月刊女子プロレスの佐倉さんです。
解)よろしくお願いします。
実)さあここでドリームファクトリーのエースとダイヤモンズのエースが直接対決となるシングルマッチとなります。この試合も場合によってはタイトルマッチ級の組み合わせといってもおかしくないと個人的には思ってしまうのですが、佐倉さんはいかがですか?
解)団体のトップ選手同士ですからね。実力者同士がこうも簡単に当たってしまうのはもったいないように思えてなりませんが、トーナメント戦ではたまにあるんですよねえ。
実)上田選手はコーナーで自然体で構えているようですが、その上田選手をじっと微動だにせず睨んでいる佐々木選手。赤コーナーリング下に控えているセコンド陣も一挙手一投足を見逃すまいと緊張の面持ちで待機しています。
「レディ、ファイッ!カーーーン!」
実)さあ始まりました30分1本勝負です。お互いにじっくりと相手の動向を伺っています。ゆっくりと近づき、今組み合った!じりっじりっと押し込む佐々木。
「ロープ、ブレイク!」
実)クリーンに手を、逆水平ーーー!離れ側に強烈な一発!大きな音が場内に響きます!挑発的な行動ですがこの一戦にかける意気込みを感じる一発です。
リング中央で再びロックアップ、ここも佐々木がロープに押し込んでいきます。ロープ際、体を入れ替えて上田が押し込んでいきます。
「ロープ、離れて」
実)エルボーーー!離れ側に強烈なエルボーが佐々木を襲いたまらず場外へ!
解)先ほどの逆水平のお返しですね。上田選手からもこの一戦がいかに大切なことだと感じられますね。
実)さあここでロープに走ったぞ、これは?ロープで一回転、佐々木も逃げてことなきをえます。
解)開始早々佐々木選手から仕掛けていきましたが上田選手もやり返してきましたね。ロープフェイントで挑発のお返しもしてきましたね。
実)佐々木がリングに戻ると上田が低く構えていきます。素早くバックを取り体をコントロール、テイクダウン。レスリング技術は上田に軍配が上がるようです。佐々木は早めに抜け出したいところです。
解)上田選手のレスリングは業界屈指の実力ですからね、まだ序盤ですが佐々木選手はペースを握られてしまっていますね。
実)そうですねー、腕を取られてから再度ヘッドロックへ移行しています。がっちり決まって簡単に外すことができそうにありません。万力のように締め付けていきます。セコンドの声を頼りに体を伸ばしていきます、どうだ、届くか。ここでやっとロープに足が届きました。
「5分経過、5分経過ー」
実)ここまでペースを掴めない佐々木ですが、ロックアップからサイドヘッドロック、ロープにとばされてショルダータックル!打ち勝った佐々木はすぐにカバー、カウントは2、すぐにスリーパーをかけていきます。
解)佐々木選手はやっとひとつ返すことができました。ここからどう反撃していくのか期待したいですね。
実)しかしこれはロープが近くて足が届きました。いったん仕切り直しです。
実)組み合ったところを強引に外し佐々木の逆水平!逆水平!逆水平の連打でコーナーに押し込み串刺しラリアットー!さらに対角線のコーナーへ!追い討ちのフェイスクラッシャー!そして吠えた!
解)ここから反撃開始です。パワーファイトに定評のある佐々木選手らしく強引に持っていきましたね。この一戦に勝てば一気に初代チャンピオンに近づきます。ドリームファクトリーとしてはいきなり他団体流出ということになってしまいますね。
「10分経過、10分経過ー」
実)胸元!背中!左右のラリアットが上田を襲う!そこから強引に担ぎ上げてノーザンライトボム!カウント2で肩をあげる上田!髪の毛を掴んで起き上がらせるその手を振りほどきエルボーから佐々木をロープへ、ドロップキックが顔面にヒット!打点が高い!もんどり打って場外に逃れる佐々木の様子を伺っているぞ?どうする?走った。飛んだーーー!上田のエルボースイシーダが佐々木を直撃!セコンドを巻き込んで鉄柵まで飛ばされました!場内大興奮!
解)やられた分を倍にして返しましたねー。
実)場外カウントが17で戻ってきた佐々木をカバー、カウント2、すぐにフロントネックでスタミナを奪いにいきます。
解)大技の次にこういった締め技を支えるのが上田選手の試合巧者ぶりが発揮されていますね。
実)緩急をうまく取り入れて攻めていきます。さあ佐々木の方はどうだ、ロープに逃れました。
15分経過、15分経過ー
実)お互いに決め手にかきなかなかペースを掴めない中で上田が走り込んでエルボー!ロープにとばされるもその反動を利用して逆水平!胸を押さえる上田に逆水平!ロープに振ってキチンシンク!!さらにストラングルホールド!!!これは得意のパターンに持っていけた佐々木!腰を落としてさらに締め上げる!上田がもがきながらロープへ。レフェリーが確認するが、なんとかロープへ逃れます。場外のエスケープした上田を追いかけていきます。背中にハンマーパンチ!胸元に逆水平!鉄柱に固定して串刺しラリアットーーー!これはキツい!
解)背中に鉄柱があった分力の逃げ場がないですから、相当なダメージを負ったと思いますよ。この後の試合に影響してしまいますね。
実)おっと、セコンドに何か指示を出してます?にわかに本部席周りが騒がしくなってきました。佐々木が上田を担ぎ上げたぞ?うわー本部席でボディスラム!机が真っ二つ!完全に破壊されました!!
20分経過、20分経過ー
実)上田をリングに戻し、勝負をつける場所はここだとばかりに自らもリングに上がる佐々木。何かを狙っているぞ?上田が立ち上がるのを待って走り込んでラリアット!これはバックエルボーで返す!上田の反撃、ランニングエルボーはパワースラムで返す!同時にダウン!ダウンカウントが数えられます。
実)両者立ち上がり上田のエルボー!佐々木の逆水平!エルボー!逆水平!どちらも引かない!エルボー!逆水平!エルボー!逆水平!打撃の応酬!エルボー!逆水平!いつまで続くエルボー!逆水平!佐々木の動きが止まったかエルボーの連打でついに倒れる!カバーは2!佐々木を起こしてエルボー!佐々木が逆水平で返す!エルボー!逆水平!エルボー!さらにバックエルボー!佐々木が完全に止まったか?追い討ちのランニングエルボー!!これは決まったか!カウント3ギリギリで返した!!!
大きく息を吐き汗を拭う上田。佐々木を立ち上がらせると腕をクラッチ、タイガードライバーーー!決まったか、これは、返せない!!!カウント3つ入りました!
「23分58秒、体固めにより上田ショウ子選手の勝ち」
実)熱戦を制して上田選手の勝利しチャンピオン決定トーナメント準決勝にコマを進めることとなりました。佐倉さん、手に汗握る一戦でした、率直な感想をお聞かせください。
解)いやー、両選手共熱のこもった一戦でしたね。上田選手のプライドが佐々木選手の他団体流出という野望を打ち砕いた形となりましたが、それにしてもすごい試合でしたね。
実)そうですね、ダイヤモンズに初めてのベルト、という未来もあったわけですからね。セコンドに肩を抱えられてリングを去る佐々木選手にも大きな拍手が送られます。
解)これで来週の準決勝に進む上田選手ですが、今日の試合のダメージが少なからず影響するかもしれません。相手が誰になるかわかりませんが、次の試合に挑んで欲しいですね。
実)さあ、次の第四試合は初代チャンピオン決定トーナメント第二回戦第二試合、豊田エツ子対横田未来の一戦です。
今年もこの日がやってきました
次話は6月25日を予定しています