第8話
「以上をもちまして、全試合が終了となりました。本日はご来場くださいまして誠にありがとうございました。ドリームファクトリー・初代チャンピオン決定トーナメント第二回戦は、明日もこの会場で同じ時刻より開始させていただきますので皆様のご来場をお待ちしております。ただいまロビーでは、クリス・ホークフィールド選手と佐々木北斗選手の撮影会を行っております。ご購入いただいたグッズにサインと2ショット撮影をセットにしたですので、この機会にぜひご利用ください。お帰りの際にはお忘れ物などがございませんように今一度お席の周りをご確認ください…」
実)ということで、本日の全八試合が終わりました。いやー、それにしても見応えのある中身の濃い試合が続きましたね。
解)本当にそうですね。選手ひとりひとりが個性を発揮していて、いつも以上に熱い試合が繰り広げられていたのではないでしょうか。
実)ここで、第四試合から特別解説をしていただいておりました上田選手にもお話を伺っていこうかと思います。上田選手、お疲れのところで申し訳ありませんが、引き続きよろしくお願いします。
上)よろしくお願いします。
実)今回、初の試みであります初代チャンピオン決定トーナメント第一回戦を終えたわけですが、この時点での率直な感想をお願いします。
上)そうですね、一回負けたら終わりという緊張感の中、ベテラン、中堅、新人とどの選手も実力通りのファイトができていたんじゃないでしょうか。
実)やはりベルトという大きな目標があってのことだと思いますか?
上)そうですね、まあ結果だけを見るとベテランの実力派が多く勝ち残ってますね。これはキャリアの差もそうですけどベルトに対する思い入れの差だったんじゃないかと思います。
実)そうですね、旗揚げしてからドリームファクトリーを支え続けてきた選手にとっては念願のベルトですからね。
上)ええ、GPWOの基準が厳しかった分、今回のトーナメントはより激しい戦いが多くなるかと思いますが、その分チャンピオンになった選手はこれまで以上に自分の戦いとベルトに自信と誇りを持てるようになると思います。なって欲しいですね。
実)そうですよね。そして初代チャンピオンとして歴史に名を残すことにもなります。それではここで本日の試合を改めて振り返っていきたいと思います。
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実)ということで第五試合は見事なジャーマン・スープレックス・ホールドでクリス・ホークフィールド選手が二回戦へとコマを進めることとなりました。
実)続きましては第六試合、立野みづき選手対中野香織選手の対戦ですが、本日一番のサプライズと言ってもいいかもしれません。なんと、立野選手が新技のCQスラムで中野選手を破った試合です。これは観客も多変驚いていましたがいかがだったでしょうか。
上)そうですね、ここまでやってほしいと期待してはいましたが、よくよく考えれば出来なくはない結果だったかもしれませんね。
実)立野選手は五番勝負では勝利こそありませんでしたが確固たるテクニックと持ち前のスタミナで2敗しながらも引き分けが3つという成績でした。デビューしてからはどんどんと経験を重ね、CQスラムを使い始めてから同期、中堅から勝利を増やすことができ、このトーナメントで実力を発揮できたというところでしょうか。
上)そうだと思います。今まで蓄積してきた経験をプロレスに合わせるのに相当苦労していたようですが、やっと自分の戦い方が見つけることができたんでしょう。
実)CQスラムに繋げるまでの工程が実に丁寧に、着実に重ねていきましたね。
上)このキャリアでその組み立てができるようになっているんですからね、これからの活躍が楽しみですね。負けてしまった中野選手にはキツい教訓になってしまいましたけどもこれからまだチャンスがありますから意地を見せてほしいです。
実)この試合は21分ちょうど、片エビ固めで立野選手が勝利となりました。
実)次の第七試合は山田綾選手対萩原香澄選手の対戦ですが、この試合も見応えのある試合でした。
上)ドリームファクリーでも相当なテクニックを持っている萩原選手に対して真っ向から立ち向かって互角以上に渡り合っていましたね。
実)一見地味な展開が続いていましたが、これはお互いに技の読み合いやテクニックの応酬があったんですよね。
上)ええ、頭と体をフル回転させて技の組み立てをして、こうきたらこう返そう、こう返されたらこうしていこうというのをずっと考えながら、時には無意識で攻めたり守ったり返したりしていたんだと思いますよ。
実)…そんなことが起こっていたんですか、それは凄まじいですね。
上)試合時間的にはそう長くなかったのですが、試合が終わった後の二人の疲労度を見ると意外と外れてないかと思います。
実)そ、そうですか。えー、山田選手といえば先日行われた試練の5番勝負第五戦目でCRGの原口選手から腕十字固めで大金星をあげましたが、やはりこの試合で萩原選手は警戒していたんでしょうね。
上)この試合だけでなく、以前から山田選手の十字固め、それ以外にも絞め技・関節技はいつも警戒していますよ。ただ、それだけの選手ではないのでね。今回はちょっと気をつけようくらいの感覚じゃないですかね。
実)萩原選手は冷静に対処した、ということでしょうか。
上)多分ですけどね。でもギリギリだったのかもしれないけども、それを表に出さないっていうことも萩原選手ならできますからね。
実)山田選手の得意な戦法にあえて乗ってみたように見受けられました。危ない場面もありましたがそれをうまく切り返しなんとか勝利をもぎ取ることができました。ここまで追い込まれた原因というのはどうお考えですか?
上)そうですね、山田選手もこれまでの経験にプロレスの技術をうまく取り入れて自分なりの動きができるようになったんでしょうね。
実)勝負タイムは12分15秒、変形アームロックにより萩原選手のギブアップ勝ちとなっています。
実)さて、第八試合、メインイベントでもあります。松本ひな子選手対CRG志村ローズ選手の対戦ですが、これもまた色々な意味で壮絶な試合になりました。ご覧になっていかがでしたか?
上)先ずは松本選手の頑張りに拍手を送りたいと思います。後輩全員にシングルで負けてから技術、スタミナをいつも以上に鍛えていたのを見ていたのでね。今日は負けてしまいましたが次に繋がる負けだと思います。この悔しさをバネに練習に励んでもらいたいですね。
解)ちょっとすみません。ひとついいですか?以前の松本選手ですとこういう注目される場面では必ずと言っていいほどコスチュームや入場時のガウンを何かしら変えてきていたのですが今日はそれがありませんでした。これは上田選手から見てどういった心境の変化があったとお思いですか?
上)多分ですけど、目立とうとするところを変えたかったんだと思います。見た目の変化にお客さんが盛り上がるのはわかりますがそれだけじゃ満足させることができないと感じたんでしょうね。後輩の活躍にこれじゃダメだと思ったんでしょうね。
実)そうですか。入場はプロレスの華というのは当然ですが、それは試合内容が伴ってのことでしょからね。今後も試合内容重視の活躍をしていけばお客さんも自然と応援に熱が入ってくると思います。
上)何回目かわかりませんが、それに気づいて行動に起こしてくれたのがいいことです。まだやり直しが効きますからそれに期待したいですね。
実)それにしてもですね、志村選手はそんなの関係ないとばかりに松本選手を攻め立てていきました。
上)最初の3分くらいはびっくりしていたと思うんですけどね。まあ彼女のことですからいくらでも修正できますから。そのくらいの実力差はありましたね。
実)最後のタイガードライバーは上田選手に見せつけるかのように、ちょうど目の前で出しましたね。
上)決勝で待ってる!みたいなメッセージってことですよねアレ。そこまでしなくてもねえって思いましたけど。
実)おそらくそうだと思います。カバーしながらこちらをじっと見ていましたからね。これに対して何か返事みたいなことはありますか?
上)いいえ、これといって特には。まあ彼女にも次の試合がありますからね。萩原選手に勝てたとしても次はクリス選手と立野選手の勝者でしょ?私だって次は佐々木選手だし豊田選手と横田選手の勝者もいますからね。負けるつもりはありませんがそんな先のことを言われてもね。もしかしたらどこかでつまずくかもしれませんし試合中のアクシデントなんかも考えると、お互いにどうなるかわかりませんからね。
実)確かにそうかもしれませんが志村選手は決勝で上田選手と対戦するつもりでいるようですし楽しみにしているようですよ?これに対しては何かありませんか?
上)そうですね、変に期待されるのは勘弁してほしいですけど、まあ足元をすくわれないように頑張って、というしかありませんね。
実)ははは、ファンとしては上田選手対志村選手の決勝戦はとても見たいところですが、先ずは目の前の戦いに向けてということですね。
実)それではここで決定トーナメント第二回戦を中心に対戦カードを発表したいと思います。第三試合に上田ショウ子対佐々木北斗、第四試合に豊田エツ子対横田未来、第六試合にクリス・ホークフィールド対立野みづき、第七試合に萩原香澄対志村ローズが組まれています。さらに第二試合、第五試合にはトーナメント第一回戦で惜しくも破れてしまった選手同士のタッグマッチが組まれています。明日の試合も豪華なラインアップでお送りします。ぜひ会場で、配信でお楽しみいただければと思います。上田選手もありがとうございました。それではこの辺でさようなら!
上)あ、明日は会場周辺で屋台村を開きますのでそれだけでも楽しみに来てくださ〜い!
実)それでは本当にさようなら〜
CQスラム→Chanpionship Qualifier 選手権予選の頭文字を取りました。
オリンピック予選スラムみたいな技だと思ってください。Worldをつけるとゴロが悪いと思ったのでやめました。
♪でっきるっかなでっきるっかな、はてはてふむー(はてふむー)
謹んで高見のっぽさんのご冥福をお祈りいたします
次話は5月25日を予定しています