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第2話

「えいっ!」スカッ…「えいっ!」スカッ…

私は今、サンドバックの前でローリングソバットの練習をしているのですがどうもうまくいきません。一応大森さんにアドバイスをいただいたときにこういう風にするんだよって教わったのですが、大森さんて感覚の人だったらしくお手本を見せてもらいながら「くるっと回ってバーンよ」というのでその通りにすると、なぜかうまくいきました、うまくいってしまいました。すると「おお!初めての割にはいいじゃない!その調子で頑張って、私は私の練習に戻るから」とどこかへ行ってしまいまして。なんだ、意外と簡単にできるじゃん?なんて思ったのもつかの間、それ以降は全然なんですよ、空振りしてばっかりです。さっきのはいわゆるビギナーズ・ラックというやつなんでしょうか。今から大森さんを呼んでもう一度教えてもらおうかと思ったのですが、トーナメントに向けての個人練習をしている最中でしょうからと諦めて、ひとまず自分なりに考えながら練習を続けていきます。


あるときはサンドバックを通り越してから足が出て、あるときはサンドバックの手前で足が伸びてしまい、あるときはサンドバックとの距離が近かったり遠かったりしてしまいローリングソバットが的確に当たりません。スカッと空振りするたびに足の筋に余計な力がかかったり上半身が傾いてしまったりしてしまいます。

このままじゃ時間の無駄だと思いまして、ちょっと動画を見てイメージを膨らませながら再度挑戦。くるっと回って斜め後ろにいる人に向かって足を出す、言葉にしたらそれだけなんですけどやってみるとなかなか難しいです。何度か試して失敗したら動画を確認して、それからやってみるもののうまくいかずにいます。そういうことを何度か繰り返していたらなんだか股関節が痛くなったり空振りをしてバランスを崩して倒れそうになったりすることが多くなってきました。それにちょっと目が回ったような気がします。うーん、これはローリングソバットの前に基本的な蹴りから始めないとダメなような気がしますね。


サンドバックの前であーでもないこーでもないと悩んでいると

「おーハルコ、練習頑張ってますね」

とクリスさんが声をかけてくれました。挨拶をした後にローリングソバットって難しいですね、こんな感じで練習してますけどうまくいきません、なんて話をしていきます。クリスさんはローリングソバットを使わないからどうかと思いましたけどつい出ちゃいました。


「ハルコは新しい技に挑戦するんでしょ?じゃあ仕方ないよ。焦らず、焦らず、失敗してもdon’t worry!」

ん?そこはドンマイじゃないんですか?

「OH〜、ハルコもですか。こいうとき日本人はdon’t mindって言うけど、それは”私は気にしない”って意味になるよー。相手に”心配しないでいいよ”って意味で使いたいならdon’t worryよー。ハルコももう少し英語を勉強した方がいいよー」

あちゃー、私ドンマイ、じゃなっかったドントウォーリー。


3月の1週目のこの時期は、数々の出会いと別れが織りなす人間模様が…うん、難しいことを言おうとしても思いつかないからやめましょう、そんなキャラじゃないし。とにかく、卒業式や転勤、入社式などがあり、商店街内外の企業さんが表彰式やら説明会やらの各種イベントなどで道場を利用してくださいます。

初めてリングに上がって表彰されている大体の方たちは緊張のためか足早にリングから下りるのですが、たまーにコーナーポストに登ってダーーー!とかイーーーッヤっ!とかオーーー!っとかとかする方もいらっしゃいますね。元ネタを知ってる方がどのくらいいるかわかりませんが、当人を知らなくてもポーズだけでも残っていくのってなんかいいなーって思っちゃいました。


練習後の諸々の後片付けが終わった後に少しだけは仕込みを始めました。技術を身につけるのにはまだまだ時間がかかりますが、体力やスタミナならそれよりも早く身につきそうだと思ってのという素人考えです。道場から商店街を抜けて神社へ向かいます。平坦な道よりも坂道を使った方が鍛えられそうですからね。神社へ続く道路はお祭りや初詣の時の賑やかなイメージが強いのですが、屋台やそこで買い物をしているお客さんたちがいない静かな道路が普段の姿なんでしょうね。ちょっと暗いけど街灯もあるのでジョギングくらいなら大丈夫です。

たまにペットを散歩させている方とか部活帰りの学生さんとかとすれ違うたびに挨拶を交わしながら走り、階段を上ると境内に到着です。ここまでノンストップで来るとやっぱりキツいですね。歩きながら息を整えていると境内の桜が今にも開きそうなつぼみがチラホラと見えますね。テレビで聞いた話によると、開花してから1週間後くらいから満開になるそうで、ちょうどその頃はチャンピオン決定トーナメントが始まりますね。今年はゆっくりとお花見ができそうじゃないなあと思いながら道場へ戻ります。


練習が終わったある日の夜のこと、同期の皆さんと私のローリングソバットの練習をしているけども進展していない話になりました。立野さんたちはキック系の技をほとんど使わないので詳しくないけど、まずは普通の回し蹴りから始めて体の使い方を覚えてからの方がいいんじゃない?ということになりました。それもそうですね、基礎ができてないのに難しいことできませんからね。具体的なアドバイスはできないけど地道に練習するしかないね、なんて言ってくれましたけどヒントをいただけました。それじゃ時間があるときに空手やキックボクシングの動画を見てみることにします。


ついでに皆さんはトーナメントに向けて何か特別なことをしないのかと聞いてみると意外な答えが返ってきました。

「今さら新しいことを始めるよりも今までのことを繰り返していった方がいい」と立野さんが言うと「ある武道家が言うには”1000の技を1回だけやった者より1つの技を1000回繰り返した者の方が恐ろしい”なんて言葉があるくらいですからね」と山田さんが教えてくれて「まるで夏休みの宿題を最終日に慌ててやろうとしても間に合わないでしょ」と堀田さんが呆れたように言うと「以前からそういう話があったんだから準備をしておくのが当たり前だと思うのよ」と工藤さんが諭すように言ってくれました。皆さんが仰ることはもっともなんですよね、大森さんもそうだったけど松本さんや松本さんも何かコソコソしていたような?そんな話をしてみると「あははは、ひな子はいつもそうだったよ、ギリギリにならないと行動に移せないのは相変わらずね」だそうです。


山田さんや工藤さんが立野さんと同じような考え方なのは格闘技経験者なのでなんとなく分かるのですが、堀田さんまで似たような考え方だったのにはちょっと驚きです。

プロレスリング・ノアの原田大輔選手が引退しました 原因は頚椎環軸椎亜脱臼だそうです

幸い症状は出てないそうですが、このままプロレスを続けていくと命に関わることになるようです

自覚症状のないまま引退を決断するのには相当な葛藤の上での決断だったと思います 本当にお疲れ様でした

次話は3月25日を予定しています

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