表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
133/228

初代チャンピオン決定戦の話 第1話

山田さんの勝利で盛り上がった後の試合はというと、山田さんの頑張りに負けないようになのか分からないですけど、久々のメインイベントに出場した中野さんと大森さんがいつも以上に奮闘したみたいでさらに盛り上がり、その日の大会は大成功に終わりました。

全試合が終わった後の片付けをしているとき、私は昨日の立野さんと今日の山田さんの試合を思い出しながらだったのでたまにボーッとしていたようで「晴ちゃん、早く片付けを終わらせちゃいましょうよ」と工藤さんに促されたり「あんたが試合したわけじゃないのに何にふけってるのよ」と堀田さんに突っ込まれたりしてしまいます。

そうなんですけどね、あんな試合を間近で見せられちゃいましたからね。そう思いながらも片付けをしていきます。


そしてお二人の5番勝負の成績ですが、立野さんは0勝2敗3分け、山田さんが1勝4敗0分けとなったのですが、お兄ちゃんの大好きなサッカーで例えると、どちらも勝ち点で言うと3になります。山田さんの価値ある1勝をよしとするのはもちろんですが、立野さんだって格上の先輩たちから3回も引き分けたのも評価されてもいいと思うんですよ。しかも負けた試合でも20分を超える熱戦を繰り広げられていたことですから。長い時間試合をしていたらいいわけじゃないですけど内容もよかった思いますよ。

あーあ、なんだかお二人が私の手の届かないところまで登って行っちゃったような気がします、いや、たとえそうでも少しでも追いつけるようにしないとダメですよね。今は離されてしまっていましたがこれ以上離されないための努力だけは続けていかないといけません。


そんな私のことよりもですよ、メインイベントが終わった後に発表された初代チャンピオン決定トーナメントです!3月の3週目の土曜日に1回戦、日曜日に2回戦、次の週の土曜日に準決勝・決勝戦という日程が正式に決まりました。会場のスクリーンにそのことが表示されると大きな拍手が起こり、そして1回戦の第1試合に上田さんと渡辺さんの対戦が表示されるとなんとも言えないどよめきが起こります。第2試合は大森さん対ダイヤモンズの佐々木さん、第3試合は工藤さん対豊田さん、第4試合は堀田さんと横田さん、第5試合はクリスさん対宇野さん、第6試合は立野さん対中野さん、第7試合は山田さん対萩原さん、第8試合は松本さん対C・R・Gの志村さんとなりました。


佐々木さんや志村さんの出場でこれは盛り上がるなとか、これは新人には厳しいかなーとか、決定戦まで勝ち上がった選手は1日2試合しなくちゃいけないとかお客さんが盛り上がっていく中でだんだんとザワザワし始めていきます。トーナメント表に表示された選手たちの名前を見ていくと、順当に先輩たちが勝ち上がると予想すれば、上田さんと志村さんが対戦するには決勝戦までどちらも負けられないということに気づいたようです。交流戦から始まったお二人の因縁?のシングルマッチが見られるかもしれないと長年待ち続けていたお客さんはヤキモキしているのかもしれませんね。


ちなみにですが、その決定トーナメントの申し込みまでに参加資格を得られなかったので私は出場することはきません。ちょっとほっとしたような、ちょっとがっかりしたよな気持ちですが、その分同期の皆さんや先輩たちの応援とセコンドを頑張りますよ。その日まで1ヶ月とちょっとありますので、出場する皆さんにはくれぐれも怪我のないよう練習を重ねていってほしいです。私もちょっと、何か新しいことに挑戦するのもいいかもしれません。


ところで、立野さんと山田さんの5番勝負の評判が良かったということで、月刊女子プロレスの取材を受けることになりました。デビューしてからこれまでのこと、試練の5番勝負の前はどのようなことを準備していたのか、何を考えながら試合をしていたのか、今回学んだことや今後の目標、3月のトーナメントへの意気込みからプライベートなことなどをインタビューされています。私服と取材先が用意してきた衣装に着替えての写真撮影の時、何気ない状態の時はよかったのですが青年誌のグラビアみたいなポーズをしているときは笑顔も固くぎこちなかったものです。しかしいざリングコスチュームに着替えると表情が一変、新人とは思えない迫力がファインダー越しに感じたとカメラマンさんが後で話しているのを聞き取材を終えました。

後日、その雑誌が道場まで送られてきたのを皆さんで見ていると「くっそー、晴子ちゃんどころかみづきちゃんや綾ちゃんにまで先を越されたー!もうっ、次は絶対、絶ーっ対私が載るんだから!江利花ちゃんには負けないんだからね!」などと言い出します。堀田さんはなんか違うところでも勝負をしているようです。


毎週末の試合と日々の練習を繰り返していく中で、トーナメント戦に向けてだんだんと熱がこもっていくように思います。特に松本さん、大森さん、宇野さん、中野さんの力の入れようが目に見えて今までと違っているようです。サボりぐせのあった松本さんまで真面目に練習に励んでいる様子は、立野さんや山田さんの活躍に触発されたというか、やっと自分たちの立場が危うくなっていることに気づいたという状態らしいです。松本さんは元々やっていたレスリングの技術の見直しとスタミナをつけること、宇野さんは基礎練習を中心にと瞬発力を、大森さんは下半身の強化とキックを、中野さんは筋力トレーニングでパワーアップを目指すそうです。今更だけど何もしないよりマシか、っていうのをちょっと怖い笑顔の渡辺さんから聞きました。


私はというと、スタミナをつけることと大森さんのマネをしてキックを鍛えようかと奮闘中です。対戦相手を叩いたり蹴ったりするのはいまだになれないんですけど私から攻撃するときもありますからね。どちらかと言えば叩くよりも蹴る方がいいかなという消極的な理由なんですけど。あと、合宿所で見つけた”実戦におけるローリングソバットの考察と研究”なんていう本があったので、それにちょっと興味が出てしまったわけでして。


少しずつ機運も高まってピリピリとしていく空気感の中でも、ほっとひと息できる休憩もあります。ずっと緊張しっぱなしというのも体に精神に良くないですから。

そんな休憩中に松本さんとクリスさんが何やら盛り上がっている様子。その内容はというと、立野さんの肩に担いでから横に落とす技に名前をつけるならどういったのがいいかを話しているようです。まず国内外で同じような技を使っているかを調べていくと、海外の選手が使っている方が数名いらっしゃいました。その方々は自分の名前をつけて◯◯スラムとしているのが一般的みたいですね。それを知った松本さんが急に乗り気になって自分の使ってみたい技(オリジナル技ではないようです)に名前をつけ始め、クリスさんに相談しています。


「クリスー、今度ね、パイルドライバーを使おうと思ってて、名前をヒナちゃんドライバーってしようと思うんだけどどう思う?海外でも使える?」

「ヒナコ、それならちゃんとドリル・ア・ホール・パイルドライバーかツームストン・パイルドライバーってしないとダメよ。そのままじゃヒナちゃん運転手ってなっちゃうよ?」

「えー、それじゃあカッコ悪いじゃん。じゃあさー、フライングボディアタックをヒナちゃんドラゴンフライっていうのは?かっこいいでしょ」

「Dragonfly?直訳するとトンボだけどいいの?空を飛ぶドラゴンのイメージならflying dragonにしないと」

「えー、これもダメなの。じゃあさー、素早い動きで丸め込むのをヒナちゃんフラッシャーにするのは?」

「flasher?ヒナコは露出狂なの?やめた方がいいよ」

「なんなのよ、もうっ!全然使えないじゃない!」

「それよりもヒナコはもっと英語の勉強した方がいいよー」


え、えーと…...と、とにかく、皆さんには大きな怪我をすることなく万全の体調で決定トーナメントに挑んで欲しいものです。

「惑星メーテル」聞いた時の衝撃はいまだに忘れくことができません

謹んで松本零士先生のご冥福をお祈りいたします journey to the star!

次話は3月15日を予定しています

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ