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第10話

1月が終わり立春を過ぎると、いよいよ試練の5番勝負の最終戦を迎えることになります。


これまでの対戦成績は、立野さんが0勝2敗2分け、山田さんが0勝4敗0分けとなっています。やはりというかさすがというか、立野さんの頑張りが目立ちますね。C・R・Gの原口さんと引き分けた時はホントに凄かったんですから。よその団体だから立野さんの成長とかを気にしなくてもいいはずですから、そんな原口さんと引き分けたんですからほぼ1勝したと言っても過言じゃないと思います。山田さんは勝敗も大事ですが、私や先輩たちも分からない何かを試してるんじゃないかと思っています。


そんなこんなで最終戦、土曜日がやってきました。立野さんの第5戦目、対戦相手は横田さんです。

「これより、試練の5番勝負最終戦、30分1本勝負を行ないます!青コーナー、120パウンドー、たてのー、みづーきーーー!」

「赤コーナー、130パウンドー、よこたー、みーくーーー!」「レフェリー西中シュウ」


立野さんはゴングが鳴るとレスリングの動きを生かした立ちまわり、横田さんもじっくりとその動きに合わせているその姿は、まるで試験官のようです。そこからヘッドロック、ヘッドロックホイップからの袈裟固め、それをヘッドシザースでかわす。ヘッドロックからフライングメイヤー、スリーパーホールドが極まる前に切り返してグラウンドのハンマーロックをさらに切り返して腕を取ります。グラウンドのヘッドロックをかけられた時は体をずらして半回転すると立野さんの肩がマットに付きます。これをカウント2で返すとそこから立ち上がりロープへ、一旦ブレイクして距離を取ります。両者とも1回も止まることなくスムーズに、流れるように技の攻防が繰り広げられています。


リング中央でロックアップ、立野さんをロープに振ると横田さんがそれを追いかけて、立野さんが返ってくる直後にお腹にヒザ蹴り!(※1)うげぇ〜、これは苦しいです。ロープの勢いがついてるから普通のヒザ蹴りよりキツイはずです。空中で一回転してマットに倒れ、お腹を押さえてうずくまっています。横田さんは強引に立たせ、同じようにヒザ蹴りを続けていくと、お客さんから悲鳴のような声が聞こえてきます。これには立野さんも表情からわかるくらい苦しそうです。以前、お腹を攻めるとスタミナを奪えるとか教わったような?だからですか、立野さんは2試合引き分けてるから、横田さんはそれを狙っているんでしょうね。


なかなか起き上がれない立野さんに横田さんがフォール、カウント2で返されるとすぐにフォール、これもカウント2。3度4度と続き、今度は両足を掴んでガッチリとフォール!カウント3ギリギリで何とか返すことができました。

そこからは横田さんはお腹を中心に攻めていき、その度に苦しい立野さんですが、やっとの思いで反撃をしていきます。ロープに振られると、お返しにばかりと横田さんのお腹にカウンターのショルダータックル(※2)、そこから俵返しで投げてフォール、これはカウント2で返されてしまいます。


立野さんのペースになりそうでも横田さんは冷静に切り返していきます。エルボーで立野さんの動きを止めてロープに振ると、自らも走り込んでのジャンピングニーアタック!フォールを返されると四つん這いの体勢の立野さんの首に絡みつきグググーっと自分の腕で締めあげていきます。(※3)これはまずい!と直感的に思った私は「立野さん、ロープ!ロープ!」と大きな声をかけます。足を伸ばして何とか逃れた立野さんはとても苦しそうです。


そこからはほとんど一方的に横田さんが攻めていきましたが、あと一歩手前というところで立野さんも粘り、何とか出したバックフリップを横に落とす技を出そうとしたところで横田さんがヘッドロックで阻止されると、その体勢から強引にバックドロップ!フォールしようにもこれまでのダメージが凄すぎて動けずにいるとゴングが鳴らされてしまいました。中盤から終盤にかけてずっと攻められていた立野さん、最後の最後に一矢報いることができましたが30分時間切れ引き分けとなりました。


ゴングが鳴った瞬間、お客さんのため息からの温かい拍手が起きたということは残念だけどよくやった・想像以上に頑張った、と受け取っていいんでしょうか。



次の日の日曜日は山田さんの最終戦です。対戦相手は2回目の登場、C・R・Gの原口さんです。前回と同じように大木さんが団体のロゴタオルを掲げて入場してきます。おや、今回は吉岡さんだけじゃなくて志村さんも来場されてますね。そんな後ろじゃなくてもっと前で見たらいいのに。


「これより、試練の5番勝負最終戦、30分1本勝負を行ないます!青コーナー、115パウンドー、やまだー、あーやーーー!」

「赤コーナー、C・R・G所属、140パウンドー、はらぐちー、タイームーーー!」「レフェリー中山マキ」


ゴングと同時に山田さんから向かってロックアップ、ちょっとぐらつかせたもののしっかりと受け止められると、ゆっくりロープまで押し込まれます。原口さんはブレイクの際に山田さんの肩をポンと軽く叩いてゆっくり下がります。続けて行われたロックアップもロープに押し込まれるとクリーンにブレイク。原口さんは両手を上げてニヤニヤしながら下がっていきます。今度はリングを半周してからロックアップ、これもロープまで押し込まれてしまいます。離れぎわ、原口さんは頭をポンポンと叩いて離れようとすると、これに怒った山田さんは体を入れ替えて胸元にハンマーパンチを連続で打ち込みます。そこから反対側のロープに振ると顔面にドロップキック!これは予想外だったのか原口さんは転げ落ちるように場外に出ます。そりゃね、山田さんだってあんなことされたら流石に怒りますよね。


追いかけて場外に出ようとするもレフェリーに止められたようで青コーナーに戻ってきます。原口さんは顔を気にしながらカウント10くらいでリングに戻って来ます。リング中央でのロックアップを直前で山田さんのお腹に前蹴りを入れ、うっとなった背中にハンマーパンチ、そこからボディスラム!山田さんの上半身が起き上がるとその背中にサッカーボールを蹴るようなキック!(※4)背中を押えて悶絶する山田さんをフォール、カウントは2で返されます。


髪の毛を掴んで起き上がらせるともう一度背中にハンマーパンチ!ヒザが崩れ落ちそうな山田さんを場外に投げ落とします。原口さんも場外に降りると山田さんを鉄柵に向かって投げます。ガシャーンという音とともに背中を打ち付けられぐったりしているところを強引に起こしてもう一度!さらに起こして度鉄柵へ投げると、追いかけるよう走り出し顔面にフロントキック!勢いのあまりに鉄柵を乗り越えてしまいました。


お客さんからは「やりすぎだろーっ!」みたいな声がかかると、その方向に向かってテレビではお見せできないフィンガーアクション!特に外国の方には見せちゃいけないやつじゃないですか!これにはお客さんも怒り出してブーイングをしていきます。


山田さんの髪の毛を持って場外を引きずり回すと、カウント17くらいでリングに戻りすぐにフォール、これはカウント2で返されます。お腹や腰辺りを小突くように蹴るとロープに寄りかかり「おい、起き上がらないぞ、ダウンカウント数えろ」みたいなことをレフェリーに言っているようです。それでもカウントを数えないのを見てるや、起き上がらせようとするところで山田さんの反撃が始まります。原口さんの手を振りほどくとハンマーパンチを何発も打ち込んでからロープに走ります。待ち構えている原口さんのフロントハイキックをかわすと左腕にドロップキック!フォールをカウント2で返されると左腕にストンピングから腕十時固め!ロープに逃げられて立ち上がったところに詰め寄ると左腕を取り自分の体ごとねじったり引っ張ったり、自分の肩に担ぐようにしたり(※5)柔道の技のように腕を掴んだまま投げた後に両手でその腕をマットに固定してヒザを落としたりと、左腕に集中して攻めていきます。

そこから自分の手と足を4の字固めみたいに絡めていく(※6)と、何とか耐えている原口さんは山田さんを強引に持ち上げてそのままマットに叩きつけました!なんてパワーなんでしょう。


腕を気にしながら立ち上がると山田さんをロープに振り、返って来たところを前かがみで待ち受けて、タイミングよく上に放り投げます(※7)原口さんの身長より高い落とされるなんて!一応トップロープから落ちる受け身の練習をしていますがこれはキツいです。

背中を押さえながら体を起こすと胸元にキック、背中にキックからフォールカウント2で返されると、次の技できめるぞー!と両手を広げるポーズを取りました。山田さんのバックに回るとジャーマンスープレックス!綺麗なブリッジでホールドするもカウント3ギリギリで返されます。すると自然とお客さんから山田コールが起き、それにつられて私もマットを叩きながら大きな声で山田さんを応援していきます。せっかくのサラサラロングヘアーがボサボサになっちゃって。


決めるぞーのポーズをしたのに決められなかった原口さんはちょっとお怒りモード。フラフラの山田さんをコーナーに投げると足を引っ掛けて尻餅をつかせ、肩や胸元にストンピング!レフェリーに止められてもしつこくストンピングを繰り返し、山田さんに乗っかるとロープを掴んで自分の体重を押し付けていきます。これにはお客さんもブーイングです。レフェリーの体を張ったブレイクで一旦離れるも、山田さんを捕まえて反対側のコーナーへ投げるところを切り返されて投げられてしまいます。山田さんはコーナーにいる原口さんに向かうと体ごとぶつけるようにバックエルボーを放ち、続けてブレーンバスター!フォールはカウント2で返されてしまいます。


原口さんを起こしますが手を振り払われて顔面に連続でエルボーを受けてしまいます。原口さんはロープに走り、何か技をかけるのを待ち構えていた山田さんは、ここでなんとアームドラッグぅ?私の中ではアームドラッグって序盤に使う技だと思っていたのでちょっとびっくりですが、その投げている最中に体勢を入れ替えたかと思うとマットに落ちた時には腕ひしぎ逆十字固めになっているじゃありませんか!しかもさっきまで集中的に攻めていた左腕!


それでも完全に極まってないようで、原口さんは右腕を伸ばして腕が極まらないように掴もうとしたり、体をひねりながら持ち前のパワーで抵抗しています。逆に腕を極められながらも持ち上げようとかフォールしてやろうとか思っているのかもしれません。

そんな中でも山田さんは原口さんの右腕をなんとか極めようと原口さんが左手を掴まないように、立ち上がれないようにしていきます。「山田ー極めろーっ!」とか「折れーっ!」とか聞こえてきますが折っちゃダメです。

原口さんは左腕がぐっと伸ばされると両足をバタバタとさせてロープに逃げようとしますがなかなか体が動かないようです。何度も脱出を試みていたようですがそのままの状態が続き、原口さんが今にも泣きそうな表情になった時、レフェリーが急いで本部席に合図を送りました。


「カンカンカンカンカン!」「18分30秒、18分30秒ー、レフェリーストップにより山田綾選手の勝ち」

一気に湧く会場、レフェリーが山田さんの技を解くと、セコンドの大木さんが氷のうを持ってリングに駆け上がり原口さんの左腕を冷やし始めます。

私と堀田さんで山田さんのところへ行き「山田さん、勝ちましたよ!」と言うと「そうですか、それでギブアップは取れたのでしょうか?」と聞き返されてしまいました。なんて冷静な。「いえ、レフェリーストップです」と答えると「それは残念でしたね、交流戦の時の借りを返すのに、自ら参りましたって言わせたかったのですけどね」ですって。なんか怖いです。


「そんなことより勝ったんだから、応援してくれたお客さんに挨拶しないとダメじゃない」と堀田さんが提案してくれたので山田さんが立ち上がろうとした時、ふらっとよろけて私の肩に手をかけます。「ちょっとダメージを受けすぎたようですね」ちょっとどこじゃないと思いますけど、とにかく勝てて良かったです。


原口さんが大木さんに連れられて控え室に戻るところでレフェリーに右手を上げられるともう一度会場が湧き上がり、山田コールが鳴り響くなかお客さんにお辞儀をしてリングを降りて控え室に向かうのでした。



※1 キチンシンクみたいな技だと思ってください

※2 スピアーみたいな技だと思ってください

※3 フロントネックロックみたいな技だと思ってください

※4 サッカーボールキックみたいな技だと思ってください

※5 アームブリーカーみたいな技だと思ってください

※6 キーロックみたいな技だと思ってください

※7 ショルダースルーみたいな技だと思ってください

2月21日、武藤選手が引退試合を行いました 内藤選手との死闘の後、リングに呼び込んだのはなんと蝶野選手!

謀られたと言いながらもリングに上がり、タイガー服部レフェリーが裁く中でシャイニングケンカキックからのSTF!短いながらも三銃士同士の試合を見ることができて本当に良かったと思いました

それにしても引退で2回も負けるなんていう前代未聞のことをするなんて、最後は全部持っていく武藤選手にただ脱帽です

本当にお疲れ様でした

次話は3月5日を予定しています

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