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第9話

今年の最終戦が終えると一日お休みをはさみ、練習半分商店街のお手伝い半分というスケジュールで日々を過ごしていきます。


今年のクリスマスは平日ということもあり土日と比べるとそこまで忙しくありませんが、それでも夕方になるにつれて賑やかなお祭り騒ぎのようです。ケーキ屋さん・おもちゃ屋さん・電気屋さん・お花屋さんなんかも混んでたかしら?お肉屋さんのあれはチキンの丸焼き?え、七面鳥!わお、思った以上に大きいですね。そういったところにお手伝いをしていると声をかけられています。特に立野さんや山田さんには「こないだはもう少しだったなー」とか「次は勝てるわよ、頑張ってね」とか。こういう時に地域密着っていうのを感じられますね。


クリスマスが終わってお正月を迎える準備のお手伝いをしていき、合同練習は28日で終わるということでささやかながら忘年会を開くことになります。商店街の皆さんも年末の忙しい中、ちょいと顔を出すだけとか夜になったら来られるとか、全員がいっぺんに集まることはできませんがそれなりにワイワイと過ごすことができました。


29日からは完全休日なのですが立野さんと山田さんは軽く練習をするというので私たちもつられて練習をすることになります。というか、なんか動かないと落ち着かない体になってしまったみたいです。でもしっかり体を休ませないといけないのでほどほどに。だったらと先輩たちの過去の映像を見て、残りの5番勝負のために生かそうということになりました。山田さんがいうには見るだけでも練習になるそうです。見取り稽古とかミラーニューロン細胞がどうのこうの言ってましたね。


大晦日は恒例の年越しプロレスを観戦してから初詣へ向かいます。神様には、今年も選手一同大きな怪我もなくすごせました、ありがとうございました。と、来年は立野さんと山田さんが試練を乗り越えられますように、ドリームファクトリーの安全とチャンピオントーナメント戦の成功を見守ってください、と、私に聞こえるおじさんたちの声はなんですか?どうにかなりませんか?とお祈りをしてから屋台飯に突撃するのでした。


『どうにもなりません、てか早く俺を出せ』


年が明けて4日、今日から練習が始まるということで選手全員が集合します。年始の挨拶から始まり休んでいた体を動かせるように合同練習は軽めにしていきます。流石に先輩たちの体調管理はバッチリのようで動きがスムーズなようで…す?松本さんがお腹のお肉をつまみながら何かブツブツいっているようですが見なかったことにした方がいい気がします。


商店街やスタッフの皆さんへの挨拶回りが落ち着いてくると練習量もペースもお休み前に戻ってくるといよいよ本格的な練習が始まります。立野さんと山田さんは5番勝負が週末に控えていて、特に立野さんは新しい技を使っているので先輩たちも気合が入っている様子です。あの技を食らわないにはどうするかなんて対策を考えているのかもしれませんね。


そして土曜日。今日は山田さんの第二戦目、対戦相手は豊田さんです。

ロックアップからスタートしたお二人、グラウンドテクニックはほぼ互角といったところでしょうか。先輩と遜色ない攻防に驚きなのですが、豊田さんのパワーに負けてるのがわかっているのに正面突破を試みようとしているのにも驚いています。しかし、やられた分をしっかり倍返しする豊田さんの迫力にも驚いています。劣勢に立たさせながらも豊田さんのラリアットを少しでも封じ込めようと右手を中心にじっくりと集中して攻めていきますがすぐに返されてしまいます。それでも15分過ぎくらいにはラリアットをカウンターで脇固めへ、前転で逃れたところに間髪入れずに腕ひしぎ十字固めという得意の連携技が決まった!と思ったのですが、直後に決められたままの腕で山田さんを持ち上げるとパワーボムのようにマットに叩きつけます!これに山田さんも予想していなかったようでもろにダメージを受けて、あとは何もできずに負けてしまいました。(18分02秒)


次の日、今日は立野さんの第二戦目、対戦相手は渡辺さんです。

渡辺さんは立野さんの技術がどのくらいできているか腕の取り方、バックの取り方、それの返し方などじっくりと査定するかのように試合を続けていきます。その間、会場はしんと静まりかえっていて、たまに聞こえるのはカメラのシャッター音やロープを繋いでいる金具が擦れる音くらいです。そして両者が離れたりロープブレイクがかかると「おおー」とか「はぁーーー」とため息のような声が聞こえてきます。お客さんもこの試合に見入っているようで、息をするのも忘れているという感じでしょうか。静かな試合展開ですが熱い攻防が繰り広げられているようです。15分過ぎ、そんなところから一転して場外戦に誘いラフファイトを仕掛けられた立野さんが首を痛めたらしく、そこを中心に狙われていきます。鉄柱にぶつけられたりエプロンサイドに叩くつけられたり、リングに戻ってからも攻め続けられ最後はDDT→バックドロップ→バックドロップホールドを連続で叩き込まれてしまい万事休す、23分17秒で負けてしまいました。


次の週の土曜日、立野さんの第三戦目、対戦相手は萩原さんです。

萩原さんとは渡辺さんの時と同じようなグラウンドテクニックの応酬ですが、少し動きスピーディーなように見えます。腕の取り合いからヘッドロックへ、そこから投げて袈裟固め、それをヘッドシザースで返して立ち上がり両者が向き合うとお客さんから拍手が送られます。

10分過ぎくらいから立野さんが積極的に攻めていきます。バックを取ってそもまま持ち上げ前に落とすと首を取りにいきますが、萩原さんはうまく切り返しハンマーロックとか、ロックアップからヘッドロック、フライングメイヤーからのスリーパーホールドを腕を取られてハンマーロックでまたもや切り返されてしまいます。

そこで立野さんでも冷静さを失っちゃったんでしょうか、ちょっと強引に攻めていきます。萩原さんをロープに振ってショルダータックル、倒れたところを立たせてまたショルダータックル、続けてショルダータックルを狙ったところにタイミングよくフランケンシュタイナーで丸め込まれました!ギリギリで肩をあげますが、いやー危なかった。

丸め込まれた後はちょっとためらいながらも攻め続けていく立野さんはバックを取るとジャーマンスープレックスを狙いますが萩原さんはこれを阻止、逆にバックを取ると同じようにジャーマンスープレックスを狙います。立野さんはそれを耐えると前転して萩原さんの足を取りアンクルホールド!これはロープに逃げられてしまいました。

その後もバックフリップを体を揺らして耐えられて回転十字固めを決められたりしましたがなんとか3カウントを取られずにいましたが、いつの間にか30分経ってしまい時間切れ引き分けとなりました。


後から聞いたところ、萩原さんは「遊びすぎちゃった、試練というより私が楽しくなっちゃった、テヘペロ」テヘペロっておーい!遊びすぎたんかーい!と心の中でどこかの男爵さんのように叫んでしまいました。でも、振り回された立野さんには申し訳ないんですが、見ていてとても楽しかったんですよね。萩原さんが次はどんな技をしてくれるんだろうとワクワクしちゃいました。

立野さんはほぼほぼ負けのような引き分けと思っているようですが、どこか充実したような表情で控え室に向かっていきました。それにしてもお二人とも、30分も動き続けていたの忘れていませんか?ってくらい試合後に普通に過ごせるのってすごいことだと思いますよ?


そして日曜日、今日は山田さんの第三戦目、対戦相手はお久しぶりの登場、ダイヤモンズの佐々木さんです。

前回来ていただいた頃より、なんかマッチョになってませんかってくらいの筋肉モリモリで山田さんがほっそり見えます。山田さんも女性の平均よりも逞しいはずなんですけど目の錯覚じゃないですよね。

リング上ではもっと大きく見える佐々木さんですが、グラウンドテクニックは基本に忠実に攻めている山田さんの方が有利みたいです。みたいなんですが、そんなテクニックをあざ笑うかのように圧倒的なパワーで技を外していきます。ヘッドロックやハンマーロックくらいは普通に切り返しているのですが、脇固めや腕ひしぎ十字固めは「ふんぬっ!」って感じで強引に外した時は「そんなことして逆に痛めたりしませんか?」とか思っちゃいました。それと同時に見ている私もそりゃないよって思うほどどうにもならない感が漂ってきます。それでも諦めずになんとか頑張っていたのですが15分27秒、ラリアットからの片エビ固めで負けてしまいました。


こちらも後から聞いた話ですが、佐々木さんには最初の10分くらいは山田さんに付き合ってあげて、そこからは全力で叩き潰して欲しいというオーダーを出していたようです。先輩たちは山田さんのいいところを引き出すように少しずつ力を入れていたようですが佐々木さんはそれをしなかったんですね。ということは、立野さんと対戦するときも今日と同じようなことがあるって事ですか。なかなか厳しい教育方針ですね。


その次の週の土曜日、山田さんの第四戦目、対戦相手はクリスさんです。

今日のクリスさんはいつもの明るくてセクシーな感じが全くありません。コスチュームは同じ型なのですが色がダークブルーのシンプルなデザインですし表情もキリッとしていて、ただならぬ雰囲気を醸し出しています。

試合はロックアップから始まり、パワーで押し込むクリスさんに対してテクニックでなんとかしのいでいく山田さん、という感じで進んでいきます。なんか先週の佐々木さんとの対戦と似たような試合運びですね。それでもしっかりと山田さんの技を受けているようです。

10分過ぎくらいからクリスさんのパワーになんとか対処できるようになると山田さんの反撃が始まります。普段しないラフな打撃技やロープを使いながら左手を集中的に攻めていきます。腕を攻められるたびに悲鳴のような声を出しているのでなかなか効果的なんだと思います。そこから得意の腕ひしぎ十字固めを狙っていきますが、そこはクリスさんも対策しているようでギリギリのところで回避していきます。山田さんはそれに焦ってしまったんでしょうか、自らロープに走って何かを狙ったようですが、そこにカウンターのビッグブーツを受けてしまいます。そこからはクリスさんが力技や打撃技で自分のペースに持っていき、最後はジャーマンスープレックスホールドで試合を終わらせました。(16分29秒)


日曜日、立野さんの第四戦目、対戦相手はダイヤモンズの佐々木さんです。

ロックアップから始めようとする佐々木さんに対して姿勢を低くして足やバックを狙おうとする立野さん。試合開始から主導権争いをしています。それにイラっときたか佐々木さんは強引に立野さんを捕まえてコーナーに据え付けると、右手でチョップ、左手でラリアットを連発していきます。レフェリーに止められると立野さんはその場に崩れ落ちてしまいました。山田さんの時は最初の10分くらいは様子見というか付き合った動きをしていたようですが、ブレーンバスターを踏ん張ってこらえると反対にかけ返したり、今日はなんだか立野さんのやりたいことに付き合わないつもりなのかもしれません。終始立野さんを叩き潰すような戦い方を続け、それでもなんとか耐えて反撃をしていきましたが最後はラリアットからの体固めで試合を終えました。(21分12秒)

次話は2月25日を予定しています

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