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第8話

手に汗にぎる接戦は最後までどちらが勝つか分からないまま続き、結局時間切れ引き分けとなりましたが、終盤はずっと立野さんが有利だったんじゃないかな?と身内びいきかもしれませんがそんな風に見えました。

あと10分、いや5分もあれば勝敗の行方はどうなったかとは思いましたが、上田さん曰く「あと何分あったらとか、あの技を決めていればとか後から言っても結果が変わるわけじゃないんだし、そんな風に思わないように今できることを一生懸命頑張りなさい」ということなんでしょうね。それにしてもって思ってしまう私はまだまだ勝負事に関しては考え方があまいんでしょうかね。


さあ、そしてメインイベントです。お客さんはまだザワザワしてますが、これからはクリスマス大会のメインイベントらしく明るく楽しいプロレスの時間ですよ。何たって堀田さん・松本さん組対クリスさん・上田さん組という超がつくほどのエンターテイナーが3名もいらっしゃるんですから。この中だと上田さんがちょっと浮いちゃうんじゃないかと思いますが、そこはうまく対処してくれるんじゃないかなという信頼感があります。


まずは堀田さんから入場です。いつもは白を基調にしたメキシコの国旗の色を使ったコスチュームですが今日は赤が多い?もしかしておニューですか?ポンチョみたいなコートもオーバーマスクも赤が多めでスパンコールでキラキラしています。これならクリスマスっぽいようでそうでもないから次からも使えそうですね。

続いて松本さんの入場です。シャンシャンシャンとご自身の入場曲をクリスマス風にアレンジてしてきましたね。そしてリハーサル(させられた)通りに私と工藤さんにトナカイのカチューシャを付けさせ、本人はピンクのふわふわサンタコスで入場です。こちらも新しいコスチュームのようです。

お二人がリングに上がるとニュートラルコーナーに駆け上がり、自分たちのグッズを客席に投げ入れていきます。後ろの方のお客さんに向けて投げているようですが、うまくいってないようです。プレゼントを配り終えるとリングの中央でお客さんに向けてポーズを取ります。


それが落ち着くとクリスさんと上田さんの入場です。まずはクリスさんからですが、フード付きの茶色いロングコート姿です。フードにはツノのようなものが付いているし胸元としっぽあたりには白いファーがあるのでトナカイコーデというところでしょうか。なんかクリスさんぽくなくて、ゴージャスでセクシーなのを期待していたお客さんも半分がっかりしていますね。そして音楽が変わり上田さんの入場です。こちらもクリスさんと同じような格好です。8割くらいのお客さんががっかりしているようですが、そんなこと気にせずにリングに上がります。クリスさんと上田さんがリング上でスポットライトを浴び、そのタイミングでコートを脱ぐとあらビックリ!お二人がお揃いのコスチューム姿じゃないですか!これにはお客さんも大盛り上がり、さっきまでのがっかりを吹き飛ばしてしまいます。これを狙っていたんですね。


そのコスチュームというのがミニスカート風のショートパンツにチューブトップとアンダーバストコルセットを組み合わせたようなセパレートタイプのコスチュームに、ロングブーツにアームカバーも同じデザインです。クリスさんは赤・青・白とアメリカンなデザインで上田さんは緑をメインに白とシルバーでアクセントを付けて、エナメルのようなツヤのある素材が光を反射してキラキラしてかなりセクシーです。

客さんに向かってポーズを取ると、あちこちからカメラやスマホのフラッシュが瞬いています。マスコミ関係者さんもリングサイドに集まり、こぞって「こちらにも目線をお願いします」みたいに手を上げパシャシャシャーと連写しまくっていますね。配信用のカメラマンさんもこれを正面から撮影しようと駆け寄ってきたものの、途中で転んでしまうというハプニングがありながらも撮影会が終わると、やっと場内が落ち着いてきたようです。その間、堀田さんと松本さんはちょっと悔しそうにしていますが、今日は松本さんたちの可愛らしさよりもクリスさんたちの大人のお色気が受けったってことだと思いますから。試合前なのにそんなに気を落とさないでくださいよー。


堀田さんとクリスさんで試合開始、力くらべを仕掛けるように堀田さんが片手を上げるとそれを上回るように手を上げるクリスさん。ジャンプしてやっと届くかというところで一旦ニュートラルコーナーまで離れ、セカンドロープに上がると高さをアピールし再び力くらべをしようと手を上げますが、そこはレフェリーに止められてしまいます。流石にクリスさんも手が届かないしロープブレイクと同じですからね。気をとりなおして今度はちゃんと力くらべ、すぐにロープに逃げるというコミカルなやり取りを繰り返していきます。


次は松本さんと上田さん。じっくりとしたレスリングでバックの取り合いから腕の取り合いへ。腕を取られた松本さんは側転をしたり前転したりとアクロバチックに腕を取り返そうとして逆回りをしてしまい自ら腕を痛めてしまうなどというクスッと笑えるところを織り交ぜていきます。

途中で堀田さんと松本さんの場外ダイブの共演や合体攻撃、クリスさんと上田さんが松本さんの上半身をロープの外に出し、顔を足の裏で挟むようにしたり、カメラマンに向かって変顔を作って撮影させたりするなど終始和やかな試合運びをしつつもプロレスの基礎や技術、受身や身体能力の凄さを如何なく発揮してメインイベントを終わらせるのでした。


試合が終わると恒例のオモシロ?動画の上映会です。ストーリーは落ちこぼれた生徒を更生させて東大に受かるまでの数ヶ月、ヤンキーな先生が鉄拳制裁で様々な問題を解決するというとんでもドラマになっています。暴力的なシーンになると「役者さんたちは特別な訓練を受けています」っていう字幕が出た時は、確かにそりゃそうだって思っちゃいましたね。学校を支配するイケメン4人組が出たり、地味な生徒をプロデュースしたり、先生が生徒全員を監禁したり、生徒が放送室に立てこもったり、なぜか急にラグビーを始めたりと歴代の学園ドラマの名シーンや出演者を無秩序に登場させてハチャメチャな内容になってしまいましたがお客さんは楽しんでくれたようです。



第五試合終了後の舞台裏 赤コーナーサイド


「さて原口さん、何か言いたいことがあれば今のうちに聞いておきましょうか」

「いや、吉岡さん、もうちょっと…ハアハア、息が…ハアハア」

「いえいえ、記憶が鮮明なうちに思ったことを言語化しておかないと今後も同じような過ちを続けてしまいかねないですから。まず原口さんの今日の対戦相手はどのような方でしたか?」

「え、ドリームファクトリーの若手で5番勝負をできるくらいの立野選手…はあ、交流戦の時と比べ物にならない実力者だったのは認めるよ。ナメてかかって準備もろくにしなかった私が全面的に悪い」

「そうですか、ご自身のミスを認めるということですね。それは良しとしまして、具体的にどこがダメだったか分かりますか?」

「スタミナとレスリング技術が凄かった、特にスタミナはあんなにあるとは思ってもみなかったよ。交流戦では気づかなかったというか見誤ったというか。あと最後の技も。あれは今日のためにとっておいたのかもね」

「それで、彼女の過去の経歴などは頭に入ってましたか?」

「・・・いや、そこまで重要じゃないと思ったのがそもそもの間違いだった、と言うかしょっぱなの蹴りで頭に血が上って全て吹っ飛んだかも」

「原口さんのファイトスタイルは味方にしていると勢いがあって頼もしいんですけど、一度それが崩れると立て直しができなくなってしまうのは今後気を付けないといけませんね」

「それは面目無い」

「とはいえ、今更ファイトスタイルにとやかく言っても原口さんの魅力を半減させるだけでしょうからね。まあ、今後のことは帰ってから皆で相談しましょうか」

「重ね重ね申し訳ない」

「そういう素直に聞き入れられる態度は評価できますけど、ついカッとなってしまうと忘れてしまうんですよね」



第五試合終了後の舞台裏 青コーナーサイド


「っしゃー!綾ちゃんどうよ、見てくれた?」

「みづきさんお疲れ様でした。もう少しのところで金星でしたのにね」

「お疲れー、いやー、最初から私をナメてかかってきたから最初にペースを掴めたのは良かったんだけどね、想像以上だったわ」

「交流戦の時からいろいろプランを練っていたようですけどうまくいきませんでしたか?」

「まあね、スタミナや試合勘が少ないかなって思っててその通りだったんだけど、力任せの技は思ってた以上に効いたわー。当初のプランでは持久戦に持ち込んで25分過ぎから決めに行こうとしてたんだけど、私の方も消耗しちゃってたみたいでギリギリ間に合わなかったわ。そういう綾ちゃんは試合後に宇野さんと何を話していたのよ」

「トーナメント用に準備してた技を出させやがって、もう少しでこっちに来られるな、ですって」

「凄いじゃん、奥の手を出さざるを得ないところまで追い込んだってことでしょ?」

「そうだと思いますけど、まだまだ余裕がありそうなんですよね」

「そうかもしれないけどさ、でも一歩近付いた手応えはあったようね」

「だといいんですけどね。あとはそのスタイルでやっていくのか?でしたかしら」

「一本を狙っていくスタイル?」

「はい、やはり体格差を考えるとギブアップを狙える技も持っていた方がいいと思うんですよ。先輩方を始め晴子さんたちもほぼ3カウントを取るようにしているので、私くらいは他のこと考えていてもいいかなと思いまして」

「それは分かる。私もアンクルホールドを使ってみたけど今日のはつなぎだったのよね」

「でもその技を突き詰めればギブアップも取れそうじゃありませんか?」

「そうね、練習していくしかないかー」

「うふふ、お互いに頑張っていきましょうね」



上映会が終わると上田さんがマイクを持ってリングに上がり、私たち選手全員はリングサイドに並びます。


「えー、本日はクリスマス大会にご来場くださいまして誠にありがとうございます。そして今年一年暖かくも力強く応援してくださいまして、選手一同、スタッフを代表して心より御礼申し上げます」

「さて、来年はドリームファクトリーにとって大切な年になりそうです。まあ毎年大切なんですけどね。まず、新人…もう新人じゃないか。若手二人の5番勝負が始まりました。残り四試合ありますけど今日の試合を見ていかがだったでしょうか。私は、これから彼女たちがどのように成長してくれるか今から楽しみでしょうがありません。そして残りの三人も控えていますのでそちらも楽しみにしています」

「そして、念願のチャンピオンを決めるためのトーナメントを開催することが決まりました。そのチャンピオンを決めるために、あのプロレス・格闘技の聖地と言われている後楽園ホールで決定戦ができるということが嬉しくてたまりません。さらに言うと、ここよりも大きくて緊張感があるあの場所で戦わせてあげられることが決まって本当に良かったなと思います」

「そんなこともありますので、年末年始は少しお休みをいただいて体のケアをしていきます。皆さんもゆっくりできる方はゆっくり休んで、そうでない方はそれなりに休んでください。そして年明けからトップスピードで走っていきますので皆さんも付いてきてください!」

「来年も皆さんが元気になれるように、ストレスが発散してスッキリできるように、少しでも前に進める勇気が持てるように頑張っていきます!」


「それでは皆さん、今年最後となりますのでここで一本締めで参りたいと思います。よろしかったらご起立をお願いします」

「皆様の益々のご発展とご健康を祈念致しまして、一本締めを行います。お手を拝借、いよ〜おっ!パパパン パパパン パパパン パン!ありがとうございました!」

皆さんも自動車を運転するときは気を付けて、シートベルトは必ず装着してくださいね

謹んでジェイ・ブリスコ選手のご冥福をお祈りいたします R.I.P.

次話は2月15日を予定しています

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