第3話
少し時間を遡って、ハロウィン大会前日・夜
土曜日の試合が終わった後、急いで明日のハロウィン大会の準備に取り掛かります。今回は試合数が少ないのとパレード出演者さんのアピール用の舞台に使うのでリングを控え室に近い壁際にずらしていきます。ロープのテンションを緩め、ワイヤーを外してからみんなで力を合わせて鉄柱を持ち上げ、そろりそろりと移動していって足の上に落とさないように気をつけておろしていきます。リングをずらしたらその壁に大きな映像用のスクリーンを張っていきます。そのあとに掃除をして鉄柵をいつもよりリングから離して設置しなおせば完成です。
明日の試合のために色々と特別な練習をしてきたのでお客さんに楽しんでもらえたらなーと思います。
そして当日、仮装パレードも終わり出演者の皆さんがまったりしている頃、上田さんと志村さんを含めた人たちで仮装の審査と人気投票の集計をしています。結果か出るまでの間、私たちはプロレスを使って「激突!地球の騎士ガイアナイツと勇者パーティーブライト、異世界で悪魔軍団シャドーキングの陰謀を叩け!」のヒーローショーが始まります。私もちょっとだけ出演しますがマスクをかぶっているのでそんなに緊張しないで済みそうです。
それでは、はじまりはじまり〜〜〜
〜 〜 〜 映 像 〜 〜 〜
「そこまでだ、シャドーキング!今日でお前も終わりだ、覚悟しろ!」
「ええ〜い、忌々しいガイアナイツめ!もはやここまでか。だが、そう簡単にやらせはせん、やられてなるものか!」
「よしいくぞ、私たちの必殺技!」「おう!ワン!」「ツー!」「ランニングースリィーーー!!」
「かくなるうえは、シャドーバリア!、シャドーホール!」
ボカーーン!、ドカーーン!ズガガガガーーーーン!!
「よし!やったか!」
「え、ちょっと、何あれ」
「まずい、吸い込まれる!」
「みんな、離れ離れにならないように掴まれ!」
「「「うわああああーーー!!!」」」
〜 〜 〜 ナレーション 〜 〜 〜
シャドーキングとの戦いの最後で謎の攻撃に巻き込まれ、どこかに飛ばされたガイアナイツ、彼女らは一体どうなってしまうのか。
「はあはあはあ、みんな無事?」
「ええ、大丈夫みたい、助かったわ。ヒナもいる?」
「はい、私も大丈夫です。それにしてもあの攻撃はなんだったんですかねエツコさん?」
「そうね、あんなのを隠していたなんてね」
「それにしてもここはどこなんでしょう」
「カスミさん、こんなファンタジーな建物見たことないですよ」
「よし、安全を確認してから少し休憩して、ここがどこなのか探ってみよう」
「それにしてもその情報は本当なのか、カラン?」
「はい、冒険者ギルドにも調べてもらいましたが間違いないようです、マリーさん」
「しかし、なんでこんなところに?」
「それを調べるのに私たちはやってきたんだろう?タイムよ」
「まあそうなんですけどね」
〜 〜 〜 ナレーション 〜 〜 〜
ローズをリーダーとして共に行動している”ブライト”の面々は、悪魔軍団”キングシャドー”がこの地下格闘場に何かしらの罠を仕掛けたという情報を元に調査に来ていたのである。そこに
「ここが最後だけど、何もわからなかったな」
「そうですね。あれ?エツコさん、ちょっと見てください。これって何かに似てませんか?」
「そうですよねカスミさん、これってリングみたいですよね」
「なんだお前たち!どうやってここまで入ってきた!」
「見たこともない仮面なんて付けて、怪しいですね」
「まさか、お前たちキングシャドーの手の者か!」
「ちょっと待ってください、私たちは決して怪しいものじゃありません!」
「そうです、私たちはシャドーキングの罠にかかって…」
「シャドーキング?」
「キングシャドー?」
〜 〜 〜 ナレーション 〜 〜 〜
お互いに不思議と思いながらも話せることが少ない中情報交換が行われ、キングシャドーとシャドーキングは同一人物で、地球でも、飛ばされてきたこちらの世界でも人族の滅亡を企んでいるらしいことがわかった。
「それで、あなたたちはこれからどうする?リーダーはエツコでいいのか?」
「ええ、マリーさん、地球へ帰りたいけどこのままじゃどうしようもありません」
「だったらその地球とやらへ帰るまでキングシャドーを倒すために協力してくれないか?」
「タイムさん、シャドーキングを倒さない限りこのままっぽいですからね、いいですよ」
「お互いにどのくらい実力があるかわからないと作戦の立てようがないからな、軽く手合わせなんてどうだ?ちょうどここは地下格闘場だし」
「ちょっと待ってください、手合わせするのはいいですけど途中から本気にならないように抑えてくださいよ?」「わかってるって、心配するなよカラン」
〈それでは当格闘場を使用する際のルールをご説明いたします〉
「な!びっくりした!いきなり声が聞こえてきましたけどなんですか?」
「そうでした、皆さんはここを使うのは初めてでしたね。ここは大昔の勇者が作った場所でして、攻撃でも回復でも補助でも、あらゆる魔法を使えなくなるんですよ地下格闘場なんですよ」
「それにあらゆる武器や防具も取り上げられてしまうから、肉体のみの勝負ができるってわけ。さっきの声がこの格闘場の魔道具の声なのよ」
「まあ使い勝手が良くて優秀ではあるんだけど、無機質で無感情な声が雰囲気を盛り下げるっていう欠点があるんだけどね」
〈コホン、それでは改めましてルール説明をいたします。この対戦は3対3のタッグマッチで時間無制限一本勝負、相手に肩を3カウントの間マットに付けられた時、ギブアップ・レフェリーストップ・試合権利者が場外に出た時20カウント以内に戻れなかった時・5カウント以上の反則を犯すと負けになります。対戦形式は1対1、選手交代の時はそれぞれのコーナーまで戻りタッチをすることで成立します。何かご質問はございますか?〉
「エツコさん、これってまるっきりプロレスのルールですよね」
「そうみたいね、カスミはわかる?」
「大丈夫ですね、魔法とか使われたらどうしようかと思いましたけどなんとかなるかもしれませんね」
「この囲っているのもロープみたいです、すごーい」
〈それでは選手紹介をいたします!青コーナー、ガイアナイツ、ヒーーナーーー!〉
「わあ、急に喋り方がが変わった!」
「いつの間にかレフェリーがいる!」
「さすがファンタジーの世界ね」
〈同じくガイアナイツ、カスーミーーー!、エツーコーーー!〉
〈赤コーナー、勇者パーティーブライトより、カラーンーーー!、タイームーーー!マーリーーー!〉
《レフェリーにボディチェックを受けるといよいよ試合が始まります。先発は青コーナーからはヒナ選手、赤コーナーからはカラン選手が出てくる模様です》
「うわあ、実況まであるじゃない、もしかして大昔の勇者さんて日本人で私たちみたいに飛ばされてきたとか?しかも相当のプヲタだったようね」
〈お褒めに預かり恐縮でございます〉
「いや、褒めてないんだけど…まあいいや」
〈お互いにクリーンファイトで、OK?OK?レディー、ファイッ!〉〈カーーーン!〉
《さあ始まりました、前代未聞の異世界対決、時間無制限1本勝負です。先発のヒナ選手とカラン選手はお互いにどのような出方か探り合っているようです》
《そうですね、どの選手と当たっても初対決ですからね、じっくりと行きたいところですね》
「実況どころか解説者もいるなんて、再現度がハンパないわ。もうどうにでもなれって感じよね」
《さあリング上でロックアップ!ヘッドロックからロープへ、リープフロックで躱すとドロップキック!高さとスピードがあります...》
《選手が代わり青コーナからはエツコ選手、赤コーナーからはタイム選手が入ってきま…おー!いきなりショルダータックル!お互いに耐えて再びタックル!3度4度目と意地の張り合い、なかなか倒れない!力のこもる戦いです!...》
《タッチを受けて青コーナよりカスミ選手、赤コーナーからはマリー選手が出てきます。お互いにじっくりと腕の取り合いからバックへ回る体勢へ、体を入れ替えてどちらも隙を見せない攻防に場内も息をするのも忘れたかのようにシンと静まり返っています...》
《まさかこの世界でこのようなレスリングが見られるとは、いやー、私は感動していますよ...》
〜 〜 〜 20分経過 〜 〜 〜
《両チームともに持ち味を遺憾なく発揮して素晴らしい試合を繰り広げられていますが、そろそろ勝負に出たいところでしょうか、肩で息をしている姿が時折見受けられます》
《そうですね、相手選手のいいとこを引き出してさらに上に行くという見応えのある展開が続いてますね。両チームともいいチームワークで相手を翻弄してますが、あと一歩のところで決め手に欠けますね》
《ここからどう攻めていくのでしょうか…お?なにやら奥の方で人影が?あーーー!何者かが格闘場に現れリングに乱入し選手たちを場外に投げ捨てていきます!これは一体どういうことでしょうか!あ、悪魔軍団キングシャドーです!!!》
後半へ続く
アニソン界の帝王!我らのアニキ!とても悲しいんだ、ゼェェェーーーーーーッ!
謹んで水木一郎さんのご冥福をお祈りいたします
次話は12月25日を予定しています