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立野さんと山田さんの5番勝負の話 第1話

「それじゃあ、晴子がメインを無事に勤め上げたっていうことで乾杯」

「「カンパーイ!」」


最近は少なくなってきましたが、今回は私が交流戦の最後に勝てたということで同期の皆さんと集まって祝勝会みたいなものが催されました。今回は炭酸ジュースファイトはありません、念の為。

それにしても山田さんと堀田さんからの質問が多いというか面倒というか、それはそれはもうね、という状態だったんですよね。


で、山田さん曰く「あの連携技はいつ練習したのか!」に尽きるんですけど、まさか「おじさんの声が聞こえて体を貸したら音楽が鳴ったらあんな動きができました、てへっ」なんて言っても信じてもらえないのはわかっているので「上田さんとコソッと練習してました。詳しくは内緒と言われていますので」となんとか誤魔化すと「そうですか、それは残念ですね。でも上田さんの許可が下りたら教えてくださいよ、絶対ですよ!」と念を押されてしまいます。


そういえば柔道や他の格闘技にはプロレスのタッグマッチみたいな試合形式はありませんものね。団体戦とはいってもあくまで対戦するのは1対1の戦いですし、そもそも5カウント以内なら反則もできるしレフェリーが見てなかったら反則し放題なんていうのがルールで許されている事自体が珍しいですからね。


そこからあの連携はどういった練習をしたらできるのか、合図とかサインとかあったのかなどしつこく聞かれてしまいました。本当にね、私としてもどうなったらあんなことができたのか不思議でしょうがないんですよ。もしかして上田さんにもおじさんの声が聞こえてたのかしら?いや、それはないですね。少し前に芸能界で広まっていた小さいおじさんのエピソードじゃないんですからね。そんな頻繁に出てたら他の人たちも私みたいに不思議な体験をしているはずですから。ちなみに小さいおじさんことを聞いてみましたけども、どなたも見たことがなかったようです。


とりあえず、先ほどの試合の模様をリング全体を斜め上から映してある動画を見ながらあれやこれや言い合いながら見ていきます。ちなみにこの動画はドリームファクトリー独自のもので、実況はなく会場内の音声のみとなっています。またカメラは固定された1台で撮影されているので選手の細かい動作や表情などはよくわかりませんが、その分場内の雰囲気がそのまま伝わってきますね。

第一、第二試合は失礼ながら後でゆっくり見させていただくとして、第三試合から第五試合はご本人たちの解説付きでじっくりと観戦していきます。「これはどうだった」とか「あ、フォールされてる時ロープに足がかかってるじゃない、ずるうまい!」とか「この技ははこうやって決められたのかー全然わからなかったわ」とか「この時の原口さんうるさくてねー嫌んなっちゃう」とかなんとか言いながら。


そしてメインイベントを皆さんで見ていきます。ん〜〜〜、自分が映ってる動画を見るのってなんか恥ずかしいですね。それにしても中盤から終盤にかけて、よくこんな動きができたなーと感心してしまいます。


「ねえ、これってどのくらい練習したの?」

今度は立野さんが聞いてきますが何も答えられないのが本当のところです、ですが

「練習が終わった後に上田さんと2人で、時間とか回数とか決めずに」と思わず言ってしまいました。

「じゃあどこで練習したのよ、道場じゃないわよね。それに合宿所では工藤さんもいたでしょ?」

「そうよね、練習が終わった後はずっと一緒だったものね、そんな時間あったかしら?」


堀田さんと工藤さんからも聞かれてしまいました。どうしよう…

「や、休みの日にHoney or Trapの工場で、です。それ以上は本当に勘弁してください!ノーコメントでお願いします!」それしか言えないんですよね。


「…じゃあ今回はそれで許してあげるけども。それよりもさ、最後のアレはなんなのよ!C・R・Gとローズさんと言えば、今グラビア界でも有名になってきてるのよ?青年誌ではもう常連で出版社から声がかかりまくってるのに、なんでそんな人が晴子にキスなんてするのよ!ジャスミンさんの時といい、ホントにもう、超羨ましい!!」


そう言われてもですね、私が狙ってできたことではないのでさっぱりわからないんですけど。でも今回の場合はコスプレイヤーではなくプロレスラーとしての志村さんに、上田さんとのタッグマッチの試合内容が認められたからじゃないかと思うんですよ。ただ、次も同じようなことができるかと聞かれたらよっぽど練習をしていかないとダメだと思います。本人が言うんだから間違いないです。


「みづきさんが以前おっしゃってましたけど、晴子さんが劇的な勝利をおさめるたびに他団体の方から注目されるようですので、次もどこからか声がかかるかもしれませんね。だとしたら晴子さんの近くにいれば私にもチャンスがあるかもしれませんね、うふふっ」

って山田さんの目的はそっちですか。ホントにもう、どこまで未知なる強豪に出会いたいですか。


「それはそうと、立野さんと山田さんにはこの後に大事な5番勝負がありますけど、私が心配するのもなんですけど大丈夫なんですか」

私の話からちょっと強引ながら話を振ると、お二人はお互いに目を合わせてから私を見て、うふふ、という感じで返してくれます。何も知らない人が見たら美女と美少女の美しい微笑みなんですが、これから行われるのはプロレスですからね、見た目と行動のギャップが激しいですよ。


「晴子がノーコメントだったから私たちもノーコメント、って言いたいところだけど、それなりに準備してあるわよ。何をするかは見てからのお楽しみってことで」

「そうですね、久しぶりに使ってみた技ですが、体は覚えていたようなので実戦でも使えると思いますよ。それまでにもう少しサビを落として研いでおかないといけないんですけどね」

研ぐとかサビを落とすとか刃物じゃないんですから、とんでもなく物騒なこと言わないでくださいよ。でも、お二人に関しては何も心配しなくても良さそうですね。

こうして女子会のような祝勝会を過ごしてその日が終わりました。



「それにしてもメインの試合はなんだったんです?ショウ子さん、詳しく話を聞かせていただけますよね?」

こういう時の芹香はちょっと面倒なのよね。詳しい話とは間違いなくタッグマッチのことでしょうね。でもどうしようかな、誤魔化せないかな?


「ん〜?何のことかしら、今日の大会もうまくいったしよかったんじゃない?ただの交流戦とはいえ、うちの選手の負けが多かったのは残念だったけど」

「確かに残念だったけどそれじゃないんですよ。メインのことです!なんですかアレは!」

やっぱりそうよね、でもどうしたらいいか。


「あの卍固めはローズが先に仕掛けてきたからお返ししただけよ?後はマスコミサービス?」

「それじゃないですって、連携技です!れ・ん・け・い・わ・ざ!なんですかあの動きは!」

「ダブルのブレーンバスターもサンドイッチハイキックもショルダーも練習通りできてたじゃないの。さすが芹香先生ね」

「誤魔化そうとしてもダメですよ?終盤のエルボーとフットスタンプとかカニバサミからエルボードロップとかです!あんなのいつ合わせたんです?晴子に無理させてませんか?」


そうよね、晴子とは四六時中一緒にいた訳じゃないし怪しまれてもしょうがないか。ここは誤魔化せないし素直に話した方がいいか。

「あれ?合わせてないわよ?道場では変な目で見られてた練習のタマモノよ?」

「あれだけのことであんなことできたら今からでも私にも教えて欲しいくらいですよ。って本当に合わせてないんですか?」

「本当よ。試合後のインタビューでは何とか誤魔化したけど。芹香は私の行動をほぼ把握してるでしょ?そんな時間があったと思う?」

「確かに無理っぽいですけど…じゃあ過去の映像を見せてイメトレとかさせてました?」

「そんなことさせても不器用な晴子が身につくはずないじゃない。しかも試合で使えるような、私と合わせられるようなことありえないわよ」

「じゃあ何でってなるんですけど、何か心当たりありません?」

「私にもわからないけど、もう閃いたっていうしか説明がつかないのよね、実際にそうだったから」

「実際に?その辺をもう少し詳しくお願いします」

「試合中盤までは私から支持を出してたのはわかってたでしょ?その後からは私から出してないのよ。目が合うとあの子が何をしたくて私は何をすればいいかわかっちゃったのよね、それであれ。しかも最初の連携はあの子から支持がきたんだから、あれにはびっくりしたわよ。精神修行を取り入れたのがよかったのかしらね」

「それは知らないですけどそんなことがあったんですか、ちょっと信じられないですけど…でもこれからどうします?あれほどの試合ができちゃったら次からお客さんや周りからの要求が高くなりそうですよ?」

「どうすることもできないでしょ。あれはあの時限りでしょうね。これであの子に注目が集まることで、成功と失敗を繰り返しながら成長することを見守っていくしかないわよ。そろそろ末っ子根性を叩き直してもらって同期の連中をライバル視できるようになってくれたらいいんじゃない?」

「そうなれればいいんですけど。わからないものをずっと考えててもしょうがないですからね。今やらなきゃいけないことがあるんだからそっちを先に片付けましょう。まあ実際のところあの子だけ気にしてる余裕はないんですよね、これからハロウィンもあるし5番勝負も迫ってきてますから。ただ、ひな子と悠のお尻に火がついたのが今回の収穫ってことにしておきましょうか」


誤魔化せた訳ではないけど話をそらせただけいいのかな?それにしても...まさか、ね。

プロレスを通じて日本とメキシコの相互理解を深めたとして

千の顔を持つ男ことミル・マスカラスさんが旭日双光章を受賞されました!

ビバ!メヒコ!

次話は12月5日を予定しています

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