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第14話

そして、いよいよ最終戦の日を迎えました。今日も朝からお客さんが列をなして待ってくれています。ここのところ先頭はC・R・Gさんが第一目的の婦人会の皆さんがキャンプで使うような折りたたみの椅子に日傘、寒くなったときはストールなど準備万端で待ってくださっています。そんな皆さんにも私たちのプロレスを気に入っていただけるとありがたいんですけどね。

今日はいつも以上にお客さんが待ってくれているということで20分ほど早く開場することになりました。扉を開けると続々とお客さんが入場してきます。C・R・Gさんが来てからお客さんの数が少しずつ増えてきてるんはわかっていましたが、今日はそれ以上に多いみたいです。私たちも会場の準備でいつもより多く椅子を並べていましたが、それでも足りないみたいじゃないかと予備の椅子を用意しているスタッフの皆さんがいます。やはり志村さんと上田さんの久しぶりの対戦というのが大きな理由なんでしょうね。


〜ただいまより、リング調整のため20分のお時間をいただきます〜


「さあ、これで前半戦の3試合が終了しました。改めまして、プロレスリング・ドリーム・ファクトリー マンスリー中継fromGPWOをお送りしています、実況の塩野春雄です。本日はクリムゾン・ローズ・ガーデンとの交流戦最終日ということで全6試合が組まれています。ゲスト解説には選手兼トレーナーでもあります渡辺選手にお越しいただいております。第一試合がお終わってお疲れのところですがよろしくお願いします」

「よろしくどうぞー」


「さて、今回のクリムゾン・ローズ・ガーデンとの交流戦、とうとう最終日を迎えました。これは若手だけでなく中堅選手にもいい刺激になっているのではないでしょうか。そして今日の対戦カードもいつもとは違うものとなっているように思われます。これはどのような意図があってのことでしょうか」

「そうですね、これほど長期間にわたり交流戦が行われるのは初めてのことでしたので、みんなにはいい刺激、いい経験なってると思います。そして、メインは初登場になる佐藤選手にはあまりにも大きな試練になってしまったと思います。でも、その前に同期の試合を持ってくることで少しでも力になれたらと思いましてこのように組みました。彼女たちにはこれからの団体を背負ってもらわないといけないので、今までにない緊張感を経験させてあげたいという、ちょっとした親心のようなものですね。後半に試合を組んだ意味をわかってほしいと思います」

「まさに百獣の王ライオンが自分の子供を千尋の谷に落として、這い上がってきた子のみを育てる、という思考でしょうか」

「そこまでのことまでは考えてなかんかったですが、この日を境に伸びてくれるかこのままでいるかは彼女たち次第ですね」

「なるほど。それではこれまでの対戦のおさらいをしていきましょう。まずは第一試合、横田未来・中野香織組対渡辺芹香・松本ひな子組の30分1本勝負でしたが、この試合は松本選手の頑張りが目立ちました」

「ええ、後輩がどんどん成長してメインにまで抜擢されて、しかも憧れていた上田選手に指名されなかった事がショックだったのがあってか、いよいよ自分の立場が危うくなったのを自覚したんでしょうね。もっと早く気づいて欲しかったですけど」

「ハハハ、今日から新しくコスチュームを新調して挑んだのですが、16分18秒であえなく撃沈されてしまいました」

「後半の粘りは良かったんですけど、気合を入れるところが少しずれてるんですよね。でも、今後どうなるか楽しみな試合でしたね」

「続いて第二試合は萩原香澄対大森悠の20分1本勝負です」

「こちらも大森選手の頑張りに期待したかったんですが、なんだか空回りしていたようですね」

「と言いますと?」

「彼女はがむしゃらに向かっていくタイプなので試合序盤の勢いは良かったんですが、これを耐え切った萩原選手の方がまだまだ一枚も二枚も上でしたね」

「そうですね、開始10分過ぎくらいからの勝負を決めに行ったところは素晴らしいものでしたが、12分54秒で敗れてしまいました。敗因はどこにあったのでしょうか」

「スタミナですね。彼女も後輩の追い上げで焦っていたようですが、体が気持ちについていけなかったようですね。動きが止まったところを狙われたわけですから、上の選手と対戦するときはもう少し攻め方を考えないといけなかったですね」

「そうですか。そして第三試合は豊田エツ子・工藤江利花組対クリス・ホークフィールド・宇野愛菜組の30分1本勝負でしたが、先輩選手の中に1人、工藤選手が入ったことでどのような試合展開になるか注目が集まりましたが、渡辺選手にはどのように映りましたか」

「宇野選手以外はパワーファイターだったので力任せになってしまったのが悔やまれますね。クリス選手との手に汗握るような力勝負はこちらも興奮しましたし、終盤に工藤選手が宇野選手を吹き飛ばしてから大技に入ろうとしたときまでは良かったんですが、こういう試合は宇野選手の方が慣れているのでうまく丸め込まれてしまいましたね」

「これも経験の差が出てしまったんでしょうね。最後、宇野選手を担ぎ上げたときはあわや!と思いました」

「ええ、豊田選手、クリス選手に見劣りすることなく十二分に自分の力を発揮できていたと思いますが、そこは宇野選手がうまかったですね。今後の課題というところでしょうか。このままパワーファイターで突き進んでいくのも面白いと思いますが、ああいううまいタイプの選手に対応できてくると別の意味で面白くなるかもしれませんね」

「そうですね、21分29秒で宇野選手が工藤選手をくだしたわけですが、最後レフェリーのブラインドをついてロープに足を引っ掛けて体重を乗せてのフォールでしたね。こういったインサイドワークを力でねじ伏せるところもみたい気がします。これから目が離せない選手となりそうです」


「そしてここからは後半戦の展望をお聞きしたいと思います。まずは第四試合、堀田晶対増田マリーのシングルマッチです。この対戦は何か意図があってのことだそうですが」

「彼女はルチャ・リブレ仕込みの空中戦とスピードを武器にこれまで戦ってきましたが、それが通用するのか、また増田選手の冷静沈着なペースを崩せるのかがポイントになりそうです。”疾風”という異名がついた増田選手との対戦は彼女にとってかけがえのない経験になると思っています」

「そうですね、増田選手はオーソドックスなレスリングに見えてジャベの動きから一転してのスピードにどの選手も手こずってきた印象がありますね」

「ええ、グラウンドテクニックひとつ取っても緩急がすごいですから、なかなか慣れないようですね」

「それは渡辺選手もですか?」

「はい、一応情報として聞いていはいましたが、実際に対戦してみると全然違ってましたね」

「えーと、こちらの資料によりますと、二日目の第四試合で一度対戦してますね。こちらからは手こずっているようには見えませんでしたけど」

「まあ、そこはキャリアでなんとか。でも初見で対戦するとヘタな選手は数分で終わってしまうかもしれませんね」

「そこまでの選手でしたか、これはかなり興味がでてきました」

「実は、このシングルマッチはC・R・G側からの要望で決まったんですよ。増田選手はあちらでトレーナーをしているみたいなんですが、急遽こちらの選手とシングルで対戦したいと申し出がありまして。ルチャで戦っている堀田選手に興味を持ったようですね」

「そんな経緯があったんですか、堀田選手は空中戦を得意としていますがジャベの使い手でもありますからね。堀田選手にとって大きな壁になりそうです」

「次に第五試合ですが、30分1本勝負、立野みづき・山田綾組対吉岡ルコル・原口タイム組ですが、これは立野、山田綾選手がどう原口選手に立ち向かうという構図になりそうですね」

「ええ、これまでの対戦でも原口選手が両選手に対してかなり挑発的な発言を続けてきていましたからね、しかも本番とも言えるシングルマッチを控えていますので今日あたりで何か対策できそうなことを掴んで欲しいところです」

「原口選手の行為は決して褒められることではありませんが5番勝負に向けて始まってるようですね。そして、やや不気味なのが吉岡選手の存在です。原口選手と組む機会は何度かありましたが連携などはほぼ見ることがありませんでした」

「なんでしょうね。そこまでしなくても勝敗に影響しないと思っているんでしょうかね。まさか仲が悪いとかないですよね?」

「そこまでの情報はこちらには来てないのですが、試合中でもダメージを受けても表情が変わらなかった事もあって、違う意味でも不気味な存在でもあります」

「さあメインです。タッグマッチではありますが志村選手と上田選手との対決が8年の時を経て実現することになりました。この試合を心待ちにしていたファンの皆様も決して少なくないと思います」

「そうですね、まあ上田選手は表面上そこまで感慨深いものがなさそうでしたけど、志村選手は盛り上がってるみたいですね」

「以前所属していた団体から離れてからは一切接触がなかったようです。上田選手はドリーム・ファクトリーを立ち上げて、GPWOの力を借りながら渡辺選手をはじめ仲間たちと苦労しながらも選手を育て、ようやくここまで成長してきました。また、新設される王座決定戦は、かの後楽園ホールで開催される事が発表されています。対して志村選手率いるクリムゾン・ローズ・ガーデンはプロレスを続けながらもプロのコスプレイヤー集団として、違うジャンルで自らを表現し、紆余曲折あって今日の対戦です。長年追いかけてきたファンからしたら待った甲斐があったなと思います」

「ただ間違えて欲しくないのは8年ぶりのあの時の対戦ではなく、現在進行形のこれからの対戦でもあるというわけです」

「そうですね、それぞれのお弟子さんという立場の選手を率いてのタッグマッチです。ただ、この2人にとっていい経験になったと思える試合にするには、どのように戦っていけばいいでしょうか」

「まあ、どうしても志村選手と上田選手に注目が集まってしまうでしょうが、その間に割って入るくらいの勢いを持って欲しいですね。空気を読まずに横から話題をさらうくらいの気持ちがないと到底太刀打ちできないでしょうから」

「そういえば上田選手と佐藤選手は今日が初タッグとなりますね。志村選手と大木選手はずっとタッグを組んでいてなかなかのチームワークを見せていました。これについてはどうお考えですか?」

「どんな状況に置かれても対処できるようにと練習をしてきましたが、連携については上田選手の指示に佐藤選手がついていけるかがポイントになりそうです。それとですね、メインについては普段とちょっと違ったルールになるのも重要なポイントです」

「はい、それを聞いたとき、これは面白くなりそうだと直感的に思いました。両陣営にも了承されたので恨みっこなしですね。これはエキサイティングな試合になりそうです」

「ええ、期待してください」

「それではまもなく後半戦のスタートです」


〜場内のお客様にも仕上げます。まもなく試合開始のお時間になります。場内が暗くなる前に各自のお席にお戻りなられますようお願い申し上げます。繰り返します、まもなく...〜

フワちゃんがプロレスデビューを果たしました

ふと思ったんですが、声だし応援が解禁された時、フワちゃんには

「フーワーちゃん、フーワーちゃん」なのか「フーワ!フーワ!」なのか「フーワ!チャチャチャ!」なのか

どうなるんでしょうかね?

次話は11月5日を予定しています

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