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第2話

夏真っ盛りの季節になっていました…じゃなかった!重大発表があったのをすっかり忘れていました、っていうか私と松本さんだけ後から聞いたんですよ、試合後はあんな感じになってしまいましたからね。


重大発表その1として、立野さんと山田さんの試練の5番勝負が決定しました。デビュー戦と同じくして最速の挑戦となるみたいです。まず、ドリームファクトリーから3名、外の団体の選手を2名ずつ招待して、30分1本勝負で行われるそうです。普段のシングルマッチは20分が多かったので体力的にどうなのか心配です。立野さんの相手は横田さん、クリスさん、上田さんが、山田さんの相手は豊田さん、渡辺さん、上田さんが対戦することになり、他団体の選手は調整中、後日発表とのことです。でもお二人はデビューして同期の中で一番期待されていて、他の団体の選手からも注目されているようなのでここは是非とも頑張って欲しいところです。


重大発表その2はドリームファクトリー独自のチャンピオンを決めることとチャンピオンベルトが作られることが決まりました。そこでお客さんがドカーンと盛り上がったそうです。そういえばタイトルマッチ?みたいなのってありませんでしたよね。シングルチャンピオン、タッグチャンピオン、それと若手を主体とするベルトの3種類になるそうです。

最初に合計16名参加のシングルマッチのトーナメントやってチャンピオンを決めるそうです。そこでまたお客さんが盛り上がり、準決勝と決勝戦は1日でやることでまた盛り上がり、その会場が後楽園ホールというところで行われるのが発表されるとさらに盛り上がったそうです。そんな大切な試合ならいつもの道場で地元の商店街の皆さんに見てもらった方がいいんじゃないかと思ったんですが、そういうことじゃないそうです。後楽園ホールというところは格闘技・プロレスの聖地と言われている場所で、そこで試合ができるということは業界に認められて、一種のステータスのようなことらしく、いつも来てくださっているお客さんたちも憧れの場所なんだそうです。その分試合内容に厳しい方々もいらっしゃるらしいのですが、先輩たちも「やっとここまで来られたか!」という思いがあるらしいです。皆さんがそう思うのならすごいことなんでしょうけどちょっとピンと来ませんね、なんて言ったら怒られそうですけど。


でも、何で今頃チャンピオンを決めるのかっていうと、GPWOがそういう管理をしているそうです。そのルールによると、団体内に10人以上レギュラー参戦できてないといけないというのがあって、私たちがデビューしたことでそれに当てはまり、申請が通ってこの度の運びとなったようです。それまでは9人しかいなかったのでそれが叶わずやっとの事でできるようになったそうです。クリスさんを入れたら10人になるんじゃない?と思ったけど、その時は出場日数からレギュラー参戦と認められなかったそうです。そんなに厳しくしなくてもって思ったけど、チャンピオンていうのはその団体の強さや華やかさの象徴であって、それが少人数で決めるのってどうなの?強さや華やかさが保証されるの?ってことから厳しくなったようです。そんなことからデビューしただけじゃなくてシングルマッチで1勝しないとトーナメントに参加できないとか。ってことは私も参加しなくちゃいけない…じゃないか、参加できるってことですか?ギリギリ間に合ったってことでいいですよね?これはちょっと責任を感じちゃいますね。

ある意味ひとりひとりの力量を試されているようです。ちなみにこのベルトにはGPWOに所属している選手は誰でも挑戦できるみたいです。と言っても簡単に挑戦できるわけじゃなくて、ある程度その時のチャンピオンに認められるのと、お客さんから「是非挑戦してほしい」みたいな後押しがないとダメなんだそうです。フリーの選手や少人数しかいない団体の選手はそういうことを狙って実力を示したりすることもできるらしいです。


参加選手とトーナメント表と日程は後日発表するということですが、所属選手の他に誰が参加するかとか、誰と誰が対戦するかとか、今から決勝戦が楽しみだ!みたいな声が各方面から入ってくるようです。もちろんそこには上田さんも参加するでしょうから、あの新聞の記事は何だったってことですよ。本当にもう、その記事を書いた記者さんは何やってるの!って感じですよね。


ちなみにタッグマッチのチャンピオン決定戦や若手主体の方はシングルのチャンピオンが決まってから詳しく発表されるそうです。


チャンピオンベルトは、GPWO認定・Dream factory・Championの頭文字を取ってGDCベルトと呼ぶようになりました。チャンピオンになるために、これからどんな試合が繰り広げられていくのかと思うと、とても楽しみでワクワクしてきますね。


そうそう、初勝利のことを家族に報告したくて私の事が載った新聞や雑誌を送ってあげようと思いまして、新人の初勝利ってそれなりに珍しいから記事になってるかなって思ったんですが、重大発表のことが大きく取り上げられていてそれどこじゃなかったみたいです。載ってはいたんですが小さい写真と勝負時間だけだったのでちょっとガッカリしましたね。普段ならあまり目立つことは苦手なんですがこの時くらいはちゃんと家族に伝えたかったなーと。雑誌に載るなんて、普通に生活してたらほとんどないですからね。一応プロで頑張ってるよっていうのが一番わかると思うんですよね、ただのメールや言葉で伝えるだけじゃなくてプロのカメラマンさんに撮ってもらった写真の記事があったほうがいいんじゃないかと思った次第です。


そんなことがありましたけど電話で報告することに。お父さんとお兄ちゃんは「やっと勝ったか!意外と遅かったな。もっとサクッと勝てたんじゃないか?まあ良かったな」なんて軽く言われたのにはちょっとカチンときましたね。こっちの苦労も知らないで!だったらお父さんももっと早く出世したら?とかお兄ちゃんにはまだ就職決まってないの?そのくらい私には難しいことだったのよ!って言ったらすっかり大人しくなっちゃいましてね。空気が悪くなったのでお母さんに代わってもらうと「そんなことより、皆さんに迷惑かけてない?危ないことはあんまりしないでよ?」なんて報告したいことと関係ないことを気にしているようです。えーと、どっちもしちゃってるですけどね、まあ頑張ってるよ、あはははーと言葉を濁して何とかやり過ごします。まさか何日も安静にしてたなんて言ったらどうなっちゃうんでしょうかね。

最後におじいちゃんに報告すると、おじいちゃんはその試合の配信を見ていたらしく、前半はじっくりと見ていたけどだんだんハラハラしてきて終盤には画面を見ながら声を出しちゃったって、そのくらい興奮したそうです。無茶なことしたなーってしみじみと言われ、いい動きができるようになったなーって言われ、最後は泣いちゃったって聞いたら私もなんか泣いちゃいそうになりました。



そんなことがありまして。控え室に聞き慣れた入場曲が流れてきます。これから私に取って大事なシングルマッチがあり、この日のために作ったコスチュームを着てさあこれからという時にリングシューズの紐がほどけているのに気づきました。あれ、さっき結んだのになあと思って結び直します。さあ行きますか!って足元を見るとまた紐がほどけています。おかしいなー、結び方が弱かったかなって思ってもう一度結びます。そんなことしていると入場曲がどんどん進んでいくなか工藤さんが走り込んできたではありませんか!

「ちょっと晴ちゃん何してるの!ショウ子さんはもうリングで待ってるんだから急いで!」

なんて言いますけどシューズの紐が何回もほどけちゃうですよ!なんでよもうっ!って焦りながらも、上田さんがリングで待ってる?今までそんなことあったかしら?いつもは私が先に出て上田さんが後から入場してくるのが普通なのに。ふと見ると私の座ってる横にチャンピオンベルト…ベルトぉ?!なんで—— なんで——— なんで————


ドスンと全身に衝撃があって目が覚めました。

「晴ちゃーん大丈夫?また寝ぼけてベッドから落ちちゃった?」

は、夢かー、良かったー。残念だったような安心したような微妙な気分です。

そのことを先輩たちがくる前の道場で立野さんたちにお話しすると、どうやら皆さんもコスチューが見つからないとか着られないとか、控室から出られなかったとか似たような夢を見たことあるらしいんですって。

「これで晴子さんも一人前のプロレスラーの仲間入りってことですね」

山田さんにそう言われてちょっと嬉しくなっちゃいました。

この作品はフィクションですが、今回は実在する施設を登場させました

それだけ大事な場所であり、少しでも身近に感じていただけたらなーと思います

次話は7月15日を予定しています

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