第21話
今話は「15分経過〜」あたりからちょっと読みにくいかと思います
音楽と主人公とある人との会話と、実況・解説が入り混ざっています
〜 〜 〜 試合当日、時間を少し遡って 〜 〜 〜
実況)改めまして、プロレスリング・ドリーム・ファクトリー マンスリー中継fromGPWOをお送りしています、実況の塩野春雄です。本日は第4試合開始前に重大発表があるという事でドリーム・ファクトリーの代表でエースの上田選手にお越しいただいております。上田選手、この後にご自身の試合が控えてますがよろしくお願いします。
上田)よろしくお願いします。
実)さて、重大発表という事で一体どのようなことが今後起こるのか大変楽しみですね。
上)はい、期待を裏切らないと思いますのでもう少しお待ちください。
実)楽しみですね。それでは第一、第二試合を一緒に振り返っていきたいと思いますが、新人選手の成長と活躍が凄まじいですね。入団当初から期待されていた立野・山田両選手をはじめ、堀田選手、工藤選手もここのところ急に成長してきているんじゃないでしょうか。
上)ええ、みんな頑張ってくれて嬉しいですね。工夫をこらしながら個性を生かしているので見ている私たちも楽しいですよ。そして彼女たちに触発されて他の選手たちも負けられないと、さらなる努力をしています。
実)下からの突き上げが激しくなると先輩選手たちもウカウカしてられないでしょうからね。
上)そうですね、今までは新人がうまく育ってくれなかったのでこういった状況が初めてですから。でもこれを乗り超えていって欲しいですね。
実)そうすることで団体内の競争が激しくなると試合にも熱が入って盛り上がってきそうできそうです、期待しましょう。
実)それでは第三試合です。松本選手の曲で入場してきました佐藤選手ですが、これまで惜しい試合が続いていましたがなかなか結果に繋がっていません。デビューから一年ほど経ちますがこのあたりはどう捉えていますか。
上)そうですね。真面目に練習をして同期の選手にアドバイスをもらったりと努力はしてきているので、あとは何かきっかけがあればと思っています。
実)佐藤選手は入団するまで格闘技はおろかスポーツの経験ががなかったという事もあるのでしょうか、そのきっかけというのが掴みきれてないようですが頑張ってほしいです。さあ元気にリングイン、客席に向かってお辞儀をしていきます。
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実)こうして見ていると佐藤選手のグラウンドの攻防は他の選手と比べても遜色ないようです、やはり基礎はしっかりと練習していることがわかりますね。
上)それはもちろん、基礎と受け身は私と渡辺選手がいいというまでみっちりとさせてますから。今後どういうファイトスタイルになるかわかりませんが、土台がしっかりしてないといくら技を積み上げても力の入った技が出せませんからね。
実)おっと離れぎわに鋭いエルボースマッシュ!佐藤選手も技を返していきます。
上)佐藤選手は気持ちの上げ方が他の選手と比べてゆっくりなのでここからですね。
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「5分経過、5分経過〜」
実)ここで胴締めスリーパーを狙っていきます佐藤選手、松本選手もこればかりはと首を極められないようにと耐えていきます。この攻撃はどういった意図があるんでしょうか。
上)そうですね、終盤に向けて相手の体力・スタミナを奪っていくんだと思います。今までは松本選手のぺースで戦ってきてましたが、技術面ではどうしても敵わないとわかって戦い方を変えてきたんでしょう。
実)極められそうで極まりません。静かですが熱い攻防が繰り広げられています。ここで足がロープにかかります、一旦ブレイク。やはり体の使い方は松本選手の方が一枚上手のようです。
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「10分経過、10分経過〜」
実)リング中央で今度はロックアップ。佐藤選手がヘッドロックから投げる、ヘッドシザースでー切り返せない!体重を乗せて袈裟固めでグイグイ締め付けていきます。これは息が苦しい、松本選手はバタバタと動いて逃れようとしていますがなかなか逃げられません。
上)こうしているうちに体力を使わされて苦しくなってくるので、佐藤選手は逃がしたくありませんね。
実)どうにか体をずらして足がロープに近づいてー、今届いた。技が解かれます。松本選手が場外にエスケープ、体制を整えるようです。
上)それだけじゃにようですね、自分のペースに持ち込めない苛立ちを落ち着かせるように間をあけたんでしょう。
実)なるほど、そういう意味もあるんですね。そこに佐藤選手が追いかけていきます。あっと松本選手がフロントキック!そこに鉄柵に向かって投げた!大きな音が会場に響きます。ぐったりしている佐藤選手を強引に起こしてエプロンサイドに顔面を打ちつけます!さらに鉄柱攻撃!強引にでも自分のペースに持っていきたかったんでしょうか、ラフファイトで形勢逆転、佐藤選手はダメージが大きかったんでしょうかその場でぐったりしています。ん?松本選手が本部席の横で何やら怪しい動きを?椅子を取り出しましたよ?そのまま佐藤選手に襲いかかる!これは厳しい!
上)これはキツいですね、ここまでのラフファイトはやってきてないですから体よりも気持ちが切れないか心配です。でもここは乗り切って欲しいですね。
実)ここで息を吹き返したでしょうか松本選手、カウント17で佐藤選手をリングに戻します。そこからコーナーに座らせて強烈なストンピング!ロープを掴んで全体重をかけていきます!これはいけません、レフェリーが体を張って両者の間に入ります。お、どうした、マイクを掴んだぞ?一体なんだ?
「おい!このどっ素人ヤロー!お前が影でコソコソしてるみたいだけど私には通用しないんだよどっ素人ヤロー!丸め込みやエルボースマッシュを覚えたからって勝てるなんて思ってるんじゃねーよこのどっ素人ヤロー!最後はダブルアームスープレックスでご機嫌ちゃーんてか?私に勝とうなんて10年と3日早いんだよどっ素人ヤロー!」
実)おっとこれは!いきなり技の名前を出しましたよ?どうしたというんでしょうか。
上)これはですね、松本選手との対戦のために同期の選手たちと秘密練習をしていたんですが、必殺技としてこれを練習していたんだと思います。それがなぜか松本選手にバレてしまったみたいですね。
実)これは精神的なダメージを負ってしまうでしょうか、緊張の糸がプツンと切れなければいいんですが。ん?佐藤選手のそばにセコンドが集まってきました、同期の選手たちのようです。それぞれ声をかけて励ましています。これは絆を感じさせるシーンです。ここでレフェリーが表情を確認していますがどうだ、続けられるか?ダウンカウントを取りました!
「15分経過、15分経過〜」
『それではミュージック、スタートっ!』
ちょーっ!ミュージックって何よーー!!聞いてないわよーーー!!!
♫ズッタタカタカタタッタン!
え?なになに?急に何ですか!ホントに何か!ドラムのリズムが聞こえてきたよ?
♫ズーンズズズズズズデーーーン ズズズズズズズデーーーン ズズズズズズズデーーーン…
今度はギターか何かでロック調の音楽?どうしちゃったのよ?
実)さあどうだ、カウント7、8、お、立ち上がるようで…そのまま松本選手に向かっていって、エルボー、エルボー、エルボー3連発!思わぬ反撃を食らってたまらず場外へ!佐藤選手はその場に片膝をついて呼吸を整えながら首の様子をみているようです。
『いいか、エルボーってのはな、腕だけで直線的に打つんじゃなくて体をひねって遠心力を使うんだよ』
ひえ〜〜〜、痛くないけど腕に当たる衝撃がすごいです。自分の力だけで叩くのよりも何倍も力が入ってる感じがします。しかも体じゃなくて顔ですよ?松本さん大丈夫かな?
♫デーーンデデデデーデッデデデッデーデデデーーーン…
音楽に合わせてズズチャーズズチャーっていう軽快なリズムは気分が上がるのはいいけどいつまで続くんだろう。
実)ひと息ついている佐藤選手は場外の様子を伺って?反対側のロープに走り助走をつけて場外へ!違う!ロープを鉄棒のように前方回転、すぐに後ろに一回転、さらに後転してリングの中央へ戻ります。見事なロープフェイントに場内も湧きます。
『こうやって挑発してな、怒らせて相手の冷静さをなくすのさ、ひとつの心理戦な』
な、じゃないですよ、わざと怒らせるの?えー心理戦とはいえ私にはそんなことできるかなー?
♫パパラッ!タララララララーララン!パーラーラッ!タララララララーララン!パーラーラッ!...
実)松本選手が怒りをあらわにリングに戻ってきたー、ロープを挟んで迎え撃つ佐藤選手のエルボーをブロックしてボディにショルダータックル!トップロープを掴んでそのまま回転エビ固め!カウント2!
『やるなこのお嬢ちゃん、まだ冷静さを保ってたか。ちょっと見直しちゃったよ』
あっぶなー、何やってるんですかもう!でもどんな時も油断しちゃいけないってことですよね。
実)松本選手が髪の毛を掴んで起こします。その手を振り払ってエルボー、そこからロープに振ってドロップキック!一回転して見事な着地からすぐにセントーン!片エビに固めるもカウント2で返す。佐藤選手の勢いが増してきているようです。
さあ負けられない松本選手、胸元にハンマーパンチの連打でロープに押し込み投げる、そこへバックエルボー!一発返したぞ、続けてロープへ、今度はラリアット、それを躱した佐藤選手が反対にフライングラリアット!きりもみ式に着地!
上)日々の練習の成果、とはちょっと違うみたいですね。まるで人が替わったかのような…もしかしたら自己暗示が掛かりすぎているのかもしれません。
実)と言いますと?
上)佐藤選手の性格上、人を殴ったりするのに躊躇するような性格だったのでリングネームをつけてあげて、リング上ではいつもの佐藤晴子とは違う人格で戦ってみれば、なんて言ってみたんですけどね、まさかね。
実)にわかに信じられませんがそんなことがあったんですか。さあリング上ではエルボーとハンマーパンチの打ち合い、お互いに負けられないなか松本選手がの手が止まる、追い討ちのエルボー!そこへボディスラム!佐藤選手がリングの外に出るぞ?そこからトップロープへ。どうする?おー!飛んだーーー!体を縮めてから着地の瞬間に大きく体を伸ばすダイビングボディプレス!カウント2.5!松本選手も粘ります!
『いいか、前後に動いたら次は左右にと、それができたら今度は上下に。こういう動きができるとお客さんも飽きないで見ることができる。プロレスは格闘技でもありエンターテイメントでもあるから、お客さんの目線を気にしながら立体的な動きで変化をつけるんだよ』
つい最近までお客さんの目線が怖かったからそんなところまで気をつけてなかったです。こういうのは堀田さんやジャスミンさんが得意かもしれませんね。今度参考にしてみようかな?
♫パラーーーーパララーーーパララーーーララー タッタラタラララ パラーーーーパララーーーパララーーー…
実)終盤にきて勢いが増してきたようです佐藤選手!たまらず松本選手は場外にエスケープ、これまでに連続攻撃を受けてさすがに疲れた様子です。佐藤選手も息を整えます。額から流れて目に入る汗を指で弾いています。さあ、松本選手はどうだ?エプロンに手をかけてゆっくりと立ち上がってくる様子が見えます。ここで佐藤選手が立ち上がったぞ?反対側のロープに走り何をする?あーっ!ロープの間を縫って松本選手に飛んだーーー!体ごとエルボーを打ち付ける!!!鉄柵と挟まれて松本選手に大ダメージ!とっさのことでカメラクルーがついていけてません!これにはお客さんがどよめき、そして大喜び!会場が湧きます!
実)佐藤選手が先に立ち上がり松本選手をリングに入れます。すぐにカバー、カウントは2.5、ここで大きく息をつく佐藤選手、松本選手を立たせると背中側に腕を回しでロック、リバースフルネルソンの体制に。これは先ほど暴露されはダブルアームスープレックスか。松本選手も腰を落として耐えます。背中にハンマーを落として再びダブルアームへ、しかしまだ耐える。松本選手がそのままコーナーに押し込むぞ、ここで腕のロックが外れます。
♫タタタタン、タタッタン パラッ タタタタン、タタッタン …
実)松本選手がなりふり構わずエルボーとパンチを繰り出し対角線のコーナーへ、追いかけて串刺し式のラリアット!間髪入れずにその場でドロップキック!リングの中央へ連れて行くとバックに回り必殺のジャーマンスープレックスホールド!これはカウント2で返される!そのまま両者ダウン!お互いに消耗しています!
上)ジャーマンは松本選手のとっておきですからね、これを返されたとなると自分が一番驚いてるんじゃないでしょうか。ここから立て直せるかがポイントになりそうです。
♫パパラッ!タララララララーララン!パーラーラッ!タララララララーララン!パーラーラッ!...
実)両者倒れたまま時間が過ぎていきます。先に立ち上がりそうなのは佐藤選手か?それを追って松本選手も自分にカツを入れるように大きな声を出して立ち上がります。佐藤選手にハンマーパンチ、これは力が入ってないぞ?そこにお返しとばかりにエルボー!左、右と連発!その場で回転してバックエルボー!戻るようにもう一発顔面にヒット!これは強烈です!倒れた松本選手にカバー!カウントギリギリで肩をあげます、どうだ、大丈夫か?
『このお嬢ちゃん気持ちが強いね、そんなにお前さんに負けたくないってか』
そうだと思います、唯一負けてない後輩ですから。
『こういうのは見習えよ?じゃあ最後にお嬢ちゃんに敬意を込めて。お前さんもちゃんと見ておけよ』
はい、よろしくお願いします。
♫タララララーラーラーーーンー、タララララーラーラーーーンー、タララララーラーラーーーンー…
実)ゆっくりと立ち上がる佐藤選手、もう一度汗を弾くと頭を掴んで松本選手を立たせます。そこで腕を取る、出るかダブルアームスープレックス!持ち上げてそのまま後ろに投げると、いやーーー、前に落としたーーー!パワーボムのように前に落としましたーーー!これは返せないか、カウント3が入りました!
「18分34秒、18分34秒、体固めにより佐藤選手の勝ち!」
最後は豪快な技を決めて佐藤選手が初勝利を収めました!セコンド陣がなだれ込んで両者に詰め寄ります。松本選手のダメージが気になりますが大丈夫でしょうか。それにしても上田選手、最後の技は何だったんでしょうか。
上)多分、いや間違いなくタイガードライバーですね。それにしてもなぜあの技を知っていたのか不思議です。
実)確認ですけど、ご自身で直接指導したわけではないんですよね?
上)ええ、私は秘密練習の許可を出したのとケガをしないように、としか言ってないですね。どこかで過去の映像を見ていたのかもしれません。セコンドもびっくりしていますよ。
『じゃあこれで帰るわ、お疲れさん。この後いろいろ大変かもしれんけど頑張りな。それと、俺は赤か黒が好みかなー、ぐふふふっ』
もー、最後の最後に何言ってるんですが!でもすごかったなー、これの1/5でも動けるようになったらおじさんの力を借りなくても勝てそうな気がします。それには基礎からもっとやり直さないといけないですね。ちょっ、工藤さんいつの間に何やってるんですか、恥ずかしいじゃないですか!
あ、ヤバい、急に体中が痛くなって力が入らなくなってきた…
実)いやー、それにしても驚きました!一年近く勝利のなかった佐藤選手がいきなりあんな戦い方をして劇的な勝利を収めました。試合途中から人が入れ替わったかのような、どちらが先輩で新人かなんていう立場がわからなくなってしましました。同期の選手たちも嬉しそうです。工藤選手が肩車をして喜びを爆発させています。
おっと、肩車から降りたら様子がおかしいぞ?急に力か入らなくなったか倒れ込んでしまいます。両者とも満身創痍です。セコンドに肩を担がれて会場を後にしていく姿に客席からは温かい拍手が両者に送られていきます。
「これより、リング調整のため20分間の休憩時間を設けさせていただきます。20分後にはプロレスリング・ドリームファクトリーより重大発表がございますので、それまでに席にお戻りくださいますようよろしくお願いします。繰り返し申し上げます…」
♫スパルタンX / Keith Morrison みたいな曲だと思っていただけると嬉しいです
こんな感じでお話が続いていきます お気に召されたら次回からもよろしくお願いします
もしかしたら今後はあの人の元タッグパートナーや元付き人、先日引退を発表した選手他を出場させるかもしれません
次話は6月25日を予定しています