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第16話

秘密練習の成果がすぐに出る訳でもなく、その週末の試合でも負けてしまいましたが、松本さんの動きがちょっとだけわかるようになって喰らいつくことができたと思います。試合時間も13分近くまで持たせることができたんですよ。(12分32秒くらいだったかな?)


休日を挟んで次の日の練習が終わった後に、立野さんと山田さんからお話があるそうです。なんだろう?私の試合が不甲斐なくて秘密練習はもう終わりってことはないですよね?


「晴子、お疲れー。先週は特に説明もなくあんな感じでスパーリングしたんだけど、一応意味があったんだけどわかる?」

いえ、よくわかってないです。強いて言えば松本さんもレスリングをやっていたからそれに慣れるため?でしょうか。


「まあそれもあるんだけど、今回のは私たちの技術とか気迫とかを体験して欲しかったのよ。晴子は格闘技の経験がないでしょ?だから少しでもこういうものだっていうのを知って欲しかったのよね。一応?私たちは?ひな子よりは強いと思ってるから?みっちりスパーリングしたことで何を仕掛けられても落ち着いて行動ができるようになるかなって。この体験がすぐに活かせるかどうかはわからないけど決して無駄にはならないと思うのよ」

なるほど、そういう意味があったんですか。


「それと、かけられた技を外したり逃げるにはその技のことを知って使えるようになってないといけないですから。体で感じて動くのも大切なことですけど、きちんと頭で理解して動けるようにしておくのも大切なことですよ」

私に足りないものを補ってくれて松本さんの対策を体と頭に叩き込んでくれたっれことですね。他には、自分が受けて嫌なことを相手にかけてみるとかでした。


「ふふーん、これで私も強くなれるってワケね、そろそろ他の先輩たちにもアッと言わせたいと思ってたのよ。それでどんどん目立って人気が出たら、グッズの売り上げも増えてお給料もガッポガッポよ!」

一緒に練習した堀田さんもご機嫌です。そうなんです、私以外の皆さんはすでにグッズが発売れているんですよ。まだアニメ風デフォルメキャラのキーホルダーやブロマイドしかないんですけど。他の皆さんや先輩たちのブロマイドはポーズがありきたりだったりするんですけど、堀田さんはさすがアイドルっていうくらいポージングや表情が素敵で可愛らしいんですよ。売れ行きも好調で選手別でも半分から上くらいの順位なんですって。そのうちタオルとかTシャツとかも発売されるかもしれません。


それはともかくとして、今日からいよいよ必殺技を何にしようかと考えながら試していきましょう!ということになりました!やっと来ましたよ!!必殺技ですよ必殺技!!!


私にもっとプロレス技の知識があれば良かったんですけど、知らずに他の面識のない選手の技を使いそうになったり、危険すぎて受け身が取れないアニメや特撮でしか見られない技だったり、人の動きや体の仕組みの関係で無理な技だったりしか思いつかなくて、結局同期の皆さんに協力してもらった次第です、ハイ。


「晴子はひな子より背が大きから上から落とすようなスープレックス系がいいと思うのよ、ここではまだ見たことがないダブルアーム・スープレックスなんてどうかしら?」

おお、ここではまだ見たことのない技、ですか!心惹かれますね。


「私からは色々な体勢から腕ひしぎ十字固めに入ることができる動きかしら?ひとつの技ですけど、どこから入るのわからなかったら脅威になると思うんですよ」

「あらー、綾ちゃんとちょっと被っちゃったわ、まあ私のは押さえ込みなんだけどね。松本さんが技をかけるスキを見つけた一瞬でクルッとってどうよ?あとはそうねー、何種類かを立て続けにかけられると意外と厳しいのよ」

山田さんと堀田さんの意見は新しい技じゃなかったですけど、使い方次第で必殺技のようになりそうです。しかも以前に見たり教わったりしてるから身につけるのも早いかもしれませんね。


「晴ちゃんは打撃が苦手だから、いっそのこと体当たりしちゃうのはどうかしら。私はぶちかましがいいと思うのよ。不意に近づいてきたときやコーナーまで吹き飛ばせば結構なダメージを与えられるわよ」

そうなんです。多少は改善してきましたがまだ叩いたり蹴ったりが怖いんですよ。体当たりならショルダー・タックルとそれほど変わらないと思うのでなんとかできそうです。

そんな感じで必殺技のことをあれこれ説明を受けて、じゃあ早速どういうものか実際に受けみましょう、という時でした。


「皆さーん、何してるデスカー」

道場の入り口からリングまでの間に足音や気配を感じさせることなくジャスミンさんがやってきてるじゃありませんか!ジャスミンさんは以前来日した時に一度食べたらハマってしまって以来食べられる時は前田さんの食堂に行ってるって聞いていたから、今の時間だとそこにいるはずなのに!


一瞬にして固まる私たちをよそに、慌てて堀田さんが駆け寄り何か話しかけているようです。

どうしましょうか。ここはどうやって誤魔化そうか、それとも素直に話して他の人には内緒にしてもらおうか、どちらがいいんでしょうか。


しばらくして堀田さんとジャスミンさんがこちらにやってきました。話によると、いつもこの時間は静かな道場が食堂から少し早く帰ってきたら明かりが点いていたので、覗いたら私たちだったので声をかけたそうです。日本は都会じゃなくても明るいし夜に一人で出歩いても安全だからいいデスネーと感心しながらそんな風に話していたそうです。


「ああ…ジャスミンさん、私たちはこの子に新しいプロレス技を教えてあげている最中だったんですよ。他の先輩たちを驚かせたいので、このことはスミマセン、内緒にしておきたいんですけどいいですか?」

「オー、サプラーイズ!わかりました、いいデスヨー。私も見るの、できますカー?」

結局素直に話して協力してもらうことにしたんですけど、立野さんも思ってなかった展開になったようでちょっと動揺してるみたいです。どうする?みたいな目で私を見てきたので、バレなければいいと思いますよ。


「わかりました、ゆっくり見ていってください。でも、くれぐれも内緒でお願いします」

「謝謝!ありがとうございマスヨー。でも、くれぐれも…シェンマイース(※1)?なんゆう意味デスカ?」

後半からは堀田さんにそう話しかけているのは、くれぐれもってどういう意味か聞いているみたいです。中国語にするとどうなるんですかね。

そういえばジャスミンさんて「○○アルヨー」って言わないんですよね。あれはアニメや中国人風のコミカルなマジシャンの影響が幅広く伝わってるだけで、そんな話し方は元々しないみたいです。日本語会話の本や教室でそんなことと教えるわけないですよね。


そんな私のどうでもいいことは置いといて、いよいよ必殺技の練習が始まります。安全のためにリングの中に陸上のマットを用意します。

マットの端っこの方に立たされるとダブルアーム・スープレックスっていうのを受けてみることから始まります。まず前かがみになると背中側に両手を持っていかれるとそのままロックされ、上に持ち上げられながら一回転して放り出されるように背中からマットに落ちました。マットに落ちる直前で腕のロックは外れましたが、マットがなかったらと思うとこれはちょっと怖かったですね。


「じゃあこれをかけてみましょうか」

体型が松本さんに似てるということで堀田さんを相手に実践していきます。腕をロックしてから持ち上げるのにちょっとしたコツが必要でしたが持ち上げるところまではできました。あとは投げた後の腕の外すタイミングが難しかったです。


「ちょっとー、いつまで投げられないといけないのよー。私の方が先に参っちゃうわよ、もー!」

それもそうですね。投げる方も大変だけど投げられる方も大変なんですよね。さて、どうしたものでしょうか…

「晴ちゃん、あれ持ってきてみる?」

工藤さんと目があうとそんなことを提案されました。あれって?ああ、あれのことですか。ちょっと練習を中断して合宿所の部屋に戻り、急いで持って帰ってきました。

「あははっ!晴子もよくやるわね、こんなもの作ってたなんて。いやあ感心するわー。言ってくれたらダミーがあったのに」

「うふふっ佐藤さん、私も打ち込みダルマを相手に練習をしていたものですよ。そのようなものを作られたっていうことはよく決心してくれたという事でいいですね!一緒に世界制覇を目指せますね!」

「アイヤー!これが日本の木人デスカー!でも柔らかいデスネー」


息を切らして道場に戻り、私のプライベートスパーリング相手のヨシコさん(いろいろ修理したり作り替えたりで3代目)を紹介しました。レスリングにも柔道にも、似たような人形的なものがあったんですね。でも山田さん、世界制覇はともかくとしてまず一勝です。そしてジャスミンさん、これは木人とは違いますから!


私の練習をそっちのけにしてヨシコさん相手に技の掛け合いが始まってしまいましたよ。マットもあるし相手もケガしないから大丈夫ですかね。見たことのあるような、ないような技が,,,わっ!そんな頭から落としちゃダメですって!あああ、体中の関節が曲がっちゃいけない方向に折れちゃってますよ!!

ただの遊びなのかストレス発散なのか、実は内緒で技の開発をしてたのを試してるのかわからないですけど収集つかなくなっちゃいましたよ!なんだかなーもう。でも楽しそうだからいいか、私もたまにやってるからあまり強く言えないんですよねー。


※1 什麼意思と表記します

Google翻訳を参考にしています

次話は5月5日を予定しています

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