依頼の清算をしてみよう
村に着くと夕方だった。時計を持ち歩く習慣はないし、スマホも転移のときになくしたらしいので正確な時間がわからない。陽が傾いてきているので晩ごはんには少し早いかな、くらいだろう。
早いとこ報告をしないとなと思いつつ、狩人ギルドの依頼カウンターへ。
「あー!A様、おかえりなさーい!首尾はどうですかー?」
相変わらずハイテンションのウサミミさんが出迎えてくれた。
「ただいまアリス氏。10頭だけ狩猟終わったのと、対象以外を狩ったので清算をしてもらいたい。」
「おぉー!すごいですよA様ー!一日で10頭終わるとは思いませんでしたー。大体期限ぎりぎりまでかかるんですよねー!」
「そうなのか。で、狩猟証明のイノシシの頭と、それ以外の素材はどこに出せば?」
「向かいのカウンターで買い取り受付をしているのでー、そちらに出してもらってですねー!その後こちらに戻ってきてくださいー!」
「了解、またあとで。」
「はいはーい!」
やはり生ものを扱うカウンターは違うようだ。当然といえば当然か。
「こんばんわ。ここで依頼と狩猟の生産をしてもらえると聞いたのだが。」
「こんばんわだニャ!まずは登録証を出すニャ!」
ニャ。こちらはネコミミさんか。とりあえず左手を見せる。
「ふむふむ、Aだニャ?あたしはシャーロット、以後よろしくだニャ!」
「ああ、よろしくシャーロット氏。」
「とりあえずここで生首転がすのは嫌だから、奥に来るニャ。そこで鑑定を行うニャ!」
奥に連れて行かれて
「ここで出すニャ!」
と指示された台の上にグラウンドファングの頭と胴体を出す。
「依頼対象外だが買い取って欲しい。あとイノシシの頭はその中に入っている。」
「ふむーこれは小ぶりだけど立派なグラウンドファングだニャー。というよりもAは腕利きだニャ!普通は首だけ落として無傷の状態ってのは考えられないニャ!」
「ありがとう。」
「それに野良イノシシの方も一撃で首を綺麗に落としてるから、胴体の方も期待できるニャ!」
「そうなのか?」
「そうだニャ!という諸々を精査してーだニャ。野良イノシシ10頭の依頼の方は問題なく終了で1,000×10頭と2,000。そこから1割引いて10,800。」
シャーロットはさらさらと紙に書いていく。
「胴体は回収班待ちだけど、素材上乗せは確実だからそれが200×10頭だニャ。あとはグラウンドファングだけど、サイズが小なので基本が5,000。ただし素材が完璧に取れているので5割増しだニャ。」
狩ったグラウンドファングは野良イノシシ5頭分か
「というわけで査定は合計20,300ゴールドだニャ。これを持って行って依頼カウンターで手続きすれば完了ニャ!ゴールド受け取れるニャ。」
「ああ、わかった。ありがとう。」
「しかしAはほんとに新人ニャ?ここまで綺麗な剣筋ってあまり見たことがないのニャ・・・。」
「昨日登録したばかりの新人だ。あまり褒められると図に乗ってしまうからやめて欲しい。」
「そうかニャ?でも期待の新人だニャー。また素材買取とかあれば持ってくるといいニャ!」
「そうさせてもらう。」
渡された用紙を持って依頼カウンターへ。
「アリス氏、査定が終了した。」
「お帰りなさい、A様ー!ふむふむーこれはすごい金額ですねー!というかグラウンドファング狩猟ですかー。ギルドの見立てではまだ発生しないはずだったんですけどー・・・。」
後半になってテンションが下がってウサミミが垂れる。
「あれは一人で狩猟するモンスターじゃないんですよねー・・・。というか装備が初期のままじゃ厳しいはずでー・・・。」
考え込んでしまわれた。
「あ、ごめんなさいA様!登録証出してくださいー。依頼完了手続きに移りますのでー!」
左手を出す。
「はい、これでA様は初級のランク3になりましたー!すごいですー1日で2ランクってあまりないのですよー!?」
「あまりってことは前例はあるのか。」
ちょっと安心した。
「依頼のほかにモンスターを狩ったりすると、査定がプラスでランクが上がったりするのですよー」
「なるほど。」
「そしてこれが今回の報酬はですねー登録証から使えるようにしておきましたのでー。ギルド提携店ならどこででも使えますよー。なくす心配もないですしー」
プリペイドみたいな感じかな。
「ありがとう。あ、アリス氏。ゴルドン氏にちょっと聞きたいことがあるのだが今大丈夫だろうか?」
「ゴルドンさんですねー?おそらく武器訓練室で鍛錬中なので大丈夫だと思いますよー?」
「行ってみる。また依頼を受けに来るのでよろしく頼む。」
「はいはーい!よろしくですよー!」
武器訓練室をノックする。
「おう!誰だか知らんが入れ!」
「邪魔する。」
入るとゴルドンは《両手持ち長剣》を振り回していた。
「誰かと思えば丸っこいのか!どうした、もう剣レベル5になったか!?」
「いや、それはまだだが少しゴルドン氏に教えてもらいたいことがあって。」
「おう!何でも聞け!教えられる範囲で教えてやる!」
「えっと。ほんとに基本的なことなんだけど、戦闘中に自分の体力と魔力とスタミナを把握する方法。」
「ん?ああ。ほんとに基本的なことだな。とりあえずステータスオープンって言ってみな?」
「ステータスオープン」
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名前 :逆村 詠
年齢 :20
性別 :男
職業 :狩人《剣と丸盾》使いLv2
体力 :120
魔力 : 20
スタミナ:120
筋力/攻撃力 : 75/175
耐久/物理防御力 : 80/180
器用 : 115
敏捷 : 60
魔法技能/魔法攻撃力: 30/15
精神/魔法防御力 : 80/95
スキル :<剣Lv3><盾Lv2><回避Lv2>
装備
右手 :アイアンソード(100)
左手 :バックラー(10)(0)<受け流しLv1>
頭部 :革の兜(20)(10)
上半身:革の鎧(30)(20)
下半身:革のズボン(25)(10)
脚部 :革のブーツ(15)(10)
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またちょっとパラメーターが上がっている。
「おう!でだな。ステータスは見たい範囲だけ見れるってことを覚えておけ!体力と魔力とスタミナだけ見たい!とかな」
なるほど。見たい範囲を思い描くのか。
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名前 :逆村 詠
体力 :120
魔力 : 20
スタミナ:120
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「お、できた」
「出来たな!?で、だ。そのイメージを呼び出すために呪文を決めろ。」
「呪文?」
「ステータスオープン小でも体力表示でもなんでもいい。イメージに紐付けてやるのが肝要だ。」
「では体力表示で。」
「いったんステータス画面を消して、その呪文で呼び出してみろ」
「体力表示」
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名前 :逆村 詠
体力 :120
魔力 : 20
スタミナ:120
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「おお!ありがとうゴルドン氏!」
「出来たな?ほかには何かあるのか?」
「ああ、とりあえず属性についての基本情報が自分の知識と同じか確かめたい。あと武器の種類。」
「おう!属性は土、水、火、風、氷、雷、光、闇の8種類なのはわかっているな。」
「ああ。」
「前6個を基本属性、光と闇を特殊属性と呼ぶ。これもいいな?」
「ああ。」
「で。土>水>火>風>土で優位な属性だ。氷は火と風に強く、土と水に弱い。雷は水と土に強く、火と風に弱い。水と風、土と火、氷と雷には有利不利がない。」
「それも大丈夫」
「光と闇はほかの属性に対する有利不利はなくてだな、自身の属性の耐性のみを持つ。それでだ。武器に光属性を与えると、一定確率で一定時間拘束効果が発生する。闇は一定確率で一定時間の継続ダメージだ。」
継続ダメージってことは体力だけ奪えるのだな。
「ああ。とりあえず自分の知識が間違ってないってことがわかった。ありがとう」
「おう!で、武器だが。後衛は魔法職だから端折るぞ。」
「ああ。」
「《剣と丸盾》《両手持ち長剣》《双剣》《刀》《大戦斧》《突撃槍と大盾》《機械槍》《メイスと中盾》の8種類だな。扱いを覚えたいのがあったら教えてやるぞ!まぁ本格的な扱いはスキルを習得してからだがな!無論スキル習得に至る訓練も望むならしてやる。」
「そのときはよろしく頼む、ありがとう。」
「おう!じゃあまた来い!」
《カリウド》世界と基本設定は変わっていないのは確認できた。というかゴルドン氏は武器なら何でも扱えるのか。すごいな。
とりあえず今日は晩ごはんを食べて寝てしまおう。