装備を整えてみよう
「A様、武器適正はわかりましたか?ずいぶんとかかっていたようですけれど。」
訓練部屋から出ると受付の美人さんから声がかかった。ああそういう話だったっけ。普通はすぐ終わるんだろうなぁ。
とりあえず受付に座る。
「ああ。ついでに訓練もしてもらっていた。適正は《剣と丸盾》だ。」
「念のためステータスを見せていただけますか?」
「ああ。ステータスオープン」
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名前 :逆村 詠
年齢 :20
性別 :男
職業 :狩人《剣と丸盾》Lv2
体力 :120
魔力 : 20
スタミナ:120
筋力/攻撃力 : 60/60
耐久/物理防御力 : 80/85
器用 : 110
敏捷 : 50
魔法技能/魔法攻撃力: 30/15
精神/魔法防御力 : 80/45
スキル :<剣Lv2><盾Lv2><回避Lv1>
装備
右手 :
左手 :
頭部 :
上半身:トレーナー(2)
下半身:ジーンズ(2)
脚部 :スニーカー(1)
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お。数値が上がってるわ。《カリウド》には細かいパラメータの概念がなかったからな。
自分自身のレベルがないってことはスキルレベルでパラメーターが上がるのか。
「閲覧許可っと」
「・・・はい。確かに。それでは失礼します・・・えいっ!」
妙にかわいい感じの掛け声だな。何だろう。ステータスをカードに貼り付けているのか?
「こほん。これで登録完了いたしました。こちらがA様の狩人登録証です。依頼を受けていただく場合にはこちらをご提示ください。」
「わかった。」
ICカードみたいだな。主にサイズが。そして受け取ると左腕に吸収されて手の甲に浮き出ている。どうなってるんだ!?狩人名と職業欄だけの表示だし、実害はなさそうだが。
「現在登録されたばっかりですので、A様は初級のランク1ですね。登録証の色が青なのが初級で、ふちの金のラインがランクの数を表しています。」
「ああ。」
「ランクが5になると、昇級試験を受けることが可能となります。級は初級→中級→上級→特級→特上級なっておりまして、特上級のランク5が最高です。」
「ランクを上げるには?」
「依頼を受けていただくとそれに応じたポイントが溜まり、自動的にランクアップします。また、下の級の依頼ではポイントが加算されません。」
「なるほど了解。」
「以上で登録証と等級の説明を終えさせていただきますが。何かご質問はございますか?」
「いや、大丈夫だ。」
「そうですか。それではA様、A様は初登録なのでそのままギルド提携の装備屋に行っていただけますか?初期装備をプレゼントいたします。異国のお召し物も大変けっこうなのですけれど、やはり装備は大切なので。」
そういえばずっとトレーナーにGパン、スニーカーだったな。
「助かる。ありがとう」
「いえいえ。ではA様の狩人人生に幸あらんことを!」
席を立って装備屋とやらに向かおう。やはり初期装備はもらえるのか。ギルド提携とかいってたから装備更新でふんだくって赤字は出ないんだろうなぁ。まぁそこまでカツカツな生活をする気はないが。
「~~~♪そっうびがだっいっじ♪もちものがだいじ♪かーりーしゅーらーばー♪~~♪」
昔流行ったアニソンの替え歌を口ずさみながら歩いていく。ついでに所持金の確認もしておこう。財布は・・・無事だ。が、中身が見たことのない紙幣と硬貨になっている。しかし理解はできる。なるほど、通貨単位はゴールドか。どうも中身の金額がそのまま円→ゴールドに変換されたようだ。
装備屋とあとは雑貨屋で大体の価格帯を調べればいいか。よし、着いた。ギルドの入り口に近いところだ。
「邪魔する。」
「いらっしゃい!お、異国の人かい?悪いね、ここは狩人専門店なんだよ」
江戸時代の大店のご隠居っぽい人が出てきた。何でちょんまげなんだ。どこ文化だ
「ああ。先ほど登録してきたところだ。これが登録証な。」
左手の甲を見せる。
「早とちりしてしまってすまんね。はい、確かに確認したよ。ちょいとまっとくれ」
そして奥に行って、荷物を抱えてすぐ出てきた。
「はいよ、お客人。これが革鎧一式と剣と盾だ。サイズが合わないことはないと思うがきつかったら言っとくれ」
「ああ。確かに受け取った。ここで着替えても大丈夫か?」
「もちろんだよ」
いそいそと着替えてみる。この体型でもきつくない。というかジャストフィットだ。さすがはゲーム世界というべきだろうか。剣の鞘は背中側の腰に水平に取り付けるようになっていたのでそうした。盾は常に左手でいいだろう。
「ぴったりだ。ありがとう」
「それはよかった。よくお似合いですよ。」
似合ってるのかどうかはよくわからないしお世辞だろうけど、ほめられて悪い気はしない。
「ありがとう。そうだ店主、このあたりの宿でよさげなところとその値段が知りたいのだが。」
「はて。狩人登録したのならギルド経営の宿で泊まるだけは無料のはずですな。」
「そうなのか。いや、ありがとう。良い店に来てよかった」
「そのぶんご贔屓にしてもらえるとうれしいですな」
「ああ。おそらくはそうなるだろう」
「ではまたのお越しをお待ちしております。」
「ああ。」
店を出てぼうっと歩く。泊まるだけは無料ってことは飯代はかかるんだな。これは《カリウド》と同じか。
「~~♪ちょっとごういん♪タックル→ほーうでん♪~~~♪」
さっきの曲が頭から離れなくなった。だめだな。とりあえず依頼カウンターを探しておかねば。明日からのために。
あったあった。装備屋から新規受付に戻るちょうど中間あたりか。よし。
「すまない。」
「はいはーい、いらっしゃいませー!あ、狩人さんですねー!おすすめ依頼、ありますよ!?」
えらいハイテンションだな。ってウサミミ!?《カリウド》には人間種以外いなかったはずだが。
「いや、依頼を受けに来たわけじゃないんだ。」
「そうですかー・・・。」
目に見えてしょんぼりしたぞ。耳からも力が抜けてロップイヤーみたいになってる。かわいい。
「あ、で。ギルド提携の宿の場所を教えてもらいたいんだ。今日は登録やらで疲れたから、明日からは依頼を受けようと思っている。」
「そうだったんですね!初めての狩人でもどうにかなっちゃう依頼をご用意してまってますね!えっと宿屋ですと、ギルドを出て左ですねー!ザッカリウドって看板が目印です!」
「ああ。ありがとう。」
「ではまたあしたー!おまちしていますね!」
「ああ。明日はよろしく頼む。」
宿屋の場所も聞けたし、とりあえず行ってみよう。それに外に出ないと時間もわからないしな。
そういえば雑貨屋に寄っていないが。入り口の装備屋の向かいにあったか。しかし買うものがないからなぁ。明日にしよう。今は建物出て宿屋だ。
入り口付近で4人パーティーとすれ違った。前衛3人に後衛1人か。上機嫌そうだったので狩りは成功したのだろう。
「お!ルーキーか!」
「おう!」
先頭の《両手持ち長剣》使いが話しかけてきたので応えるが、ゴルドンみたいになってしまった。
「ゴルドンさんフォロワーか。気持ちわかるぜ」
わかるのか。
「まぁそんなところ。登録したばっかりで、ゴルドン氏にしごかれて、疲れて寝に行くところ。」
「ゴルドン師!?そっか。じゃ、依頼は明日からだな。頑張れよ!」
気持ちよく去っていった。しかし、ちゃんとほかにも狩人いたんだな。時間帯の問題か。これから戻ってくる人間が増えるのなら夕飯にちょうど良い時間ってことか。
建物を出て左、おお!見える。3階建ての宿屋、ザッカリウド。温泉とかはあるんだろうか。それは雪山の村限定なんだろうか。
「邪魔する。」
「邪魔するんなら帰って」
宿屋に入るとそういわれた。近畿地方か!?
世界観ぐちゃぐちゃじゃないか?雑貨屋はどうなっているのかが気になる。
「いや、客だ。狩人名はA。」
「ん?いらっしゃい、見ぃひん顔やね。Aて、えらいたいそうな名前やねぇ。一応登録翔見せてな。」
「おう。」
左手を見せる。
「うわぁほんまもんのルーキーやねぇ。ここんとこ新規登録とかおらへんかったからえらい珍しいわ。」
「そうなのか。」
「せやねん。で、どうするん?寝るだけやったらタダやけど、晩御飯は食べるん?」
「ああ。」
「んなら500ゴールドなー。朝は300やけどどうする?セットなら700にしとくけど?」
「セットで。」
「りょうかーい。どうする?すぐ食べる?温めなおすだけやからすぐいけるで。」
「ああ、すぐ食べる。」
「わかった。ちょいかけてまってて」
「ああ。」
食堂で待っていると肉と酒が運ばれてきた。酒で炭水化物取るのか。
「はいー700ゴールドいただきますー」
「じゃぁこれで。」
財布を取り出して払う。500ゴールド硬貨1枚と100ゴールド硬貨2枚だ。
「まいど。じゃぁごゆっくり~。食べ終わったら自分で下げてな。」
「ああ。そういえば、この宿は温泉ってあるのか?」
「風呂はあるけど温泉やないわ。とりあえず風呂場で洗濯は禁止やで。洗いもんあるなら言うて。タライ貸すから。」
「ああ、わかった。あと、部屋は何号室だ?」
「ん~2階の5号室やね。一番奥。」
「わかった、ありがとう」
礼を言って、食事にありつく。肉は正体がわからない。だがうまい。塩コショウと何らかのハーブでうまく臭みを消している。酒は・・・蒸留酒だな。強い、が、うまい。
あっという間に堪能して、食器を下げる。そして体を洗って、おやすみなさい。
明日はいい依頼とめぐり合えますように。
※ギルド見取り図(概観)