これからの行動を決めよう
<~スキル:剣レベルが6に成長しました~>
スキルレベルアップのインフォが流れたので、無事サンショウウオを狩れたのがわかる。
とりあえず、オレとグラシアがクラリチェパーティのお眼鏡に適ったのかどうか聞いてみないとな。
「で、オレ達の戦いはどうだった?遠征についていっても大丈夫そうか?」
「Aはソロ感覚じゃないのか?そんな気はした。で、グラシアの火力がヤバい。ウォータサラマンダーってこんなに短時間で狩るモンスターじゃないぞ?」
とバルバック。
「そうですね。Aは何をしているのかがわからないけど死なないし、攻撃はきっちり当てるのですね、という感想ですが。グラシアの火力がおかしく感じました。」
これはクラリチェ。
「でも・・・、グラシアは魔力使いすぎ・・・。今ので決められなかったら・・・、しばらく何も出来なかったはずなの・・・。Aもちゃんと指示したらいいのに・・・。A自身も・・・、もっと安全策とってもいいと思うの・・・。」
そしてイーリの感想だ。
「まとめると、グラシアは火力は出ているけど魔力配分が甘すぎる、ということか。オレもパーティでの立ち回りをしろってことだな。」
「あれ、は! 決め、られ、そうな、気が、したのよ!」
グラシアは魔力を使い切ったらしい。自然回復(といっても魔力回復薬のおかげで回復量は増えているだろうが)待ちだな。
「ああ、でも無理して決めても仕方が無い場合のほうが多いから、次からは安定行動で頼む。とりあえず今は回復に専念だ。」
「わか、ったわ!」
これはオレが指示しなきゃだめだったってことだな。そもそもにして使える魔法も聞いておかねばならなかったんだな。
「というわけで、変に焦ってランク4の遠征に来るよりも、Aもグラシアも普通に狩猟経験を積むほうが先だと思いました。」
「なるほど。確かにそうだな。オレもグラシアの使える魔法を全部は知らないしな。」
クラリチェの言葉に頷く。
「どうしても遠征を体験したいなら、2人でもいけるくらいのを探したほうがいい。ファイアリザードへのリベンジは俺達だけでやるよ。」
「わかった。ウォータサラマンダーで装備強化はいい感じになりそうか?」
「ああ、ばっちりだと思う。これなら前回のようにはならないだろう。」
おそらく強化するのはバルバックの装備中心だろう。水属性の装備に変われば、相性差でずいぶん楽になるはずだ。
「グラシアはもっと配分考える訓練するの・・・。あと・・・、他の属性魔法も覚えたほうが・・・、魔力は伸びるよ・・・?」
3属性習得しているイーリのありがたいお言葉だ。瞬間最高火力も大切だが、やはり安定性が無ければ後衛としての腕が上がらないってことだな。なるほどなるほど。
「わかったわ。明日カサンドラさんに教えてもらおうかな。」
お。喋りが元に戻っている。回復したか。
「よし、じゃぁ素材回収して帰ろう。」
課題点も見えたし、一息ついたので村に戻ろうと声をかける。が。
「その前に・・・。グラシアに教えておかなくちゃ・・・。」
とイーリがサンショウウオの皮を両手で持つ。
「えっと、何かしら?」
「モンスターの素材は・・・、純粋な魔力を通してあげると・・・。買い取り価格が高くなったりするの・・・。」
そういいながら魔力をこめているらしきイーリ。
「それに・・・、この処理をして・・・、装備屋に持ち込むと・・・。」
「持ち込むと?」
それを興味深い目で見ているグラシア。
「加工費が安くなるの・・・。具体的には・・・、残った素材渡すっていったらただになるくらい・・・。」
「え!?」
「でも・・・、きちんと均一に魔力通さないとダメだから・・・。これも練習するの・・・。」
それはすごいことを聞いたな。グラシアには頑張ってもらおう。
「わかったわ!次の依頼のときから練習するわ!」
「うん・・・。」
魔力を通したウォータサラマンダーの革はイーリ自身の鞄に入れるらしい。頭部も同じく彼女の鞄に入る。その他の骨はバルバックが持つ。
「とりあえず帰る前にお昼ご飯にしましょ?全員分作ったのよ!」
とグラシアが鞄から5人分の弁当箱を取り出す。3日連続手作り弁当だ。負担になってたりはするんだろうが、ここは好意に甘えよう。
それにしてもウォータサラマンダーは長丁場予定だったのだけどな。早く終わったので今ちょうど正午ぐらいだ。
「「「「ありがとう、いただきます。」」」」「いただきます。」
村でよく出る依頼について雑談したりしながら食べる。だいたいは《カリウド》と同じ狩猟対象だが、たまに聞いたことのないモンスターも混じっている。自分の知っているモンスターと属性の違う場合もある。
そしてそれ以外では、グラシアがサンショウウオの長剣を作るという話もする。先程の情報量代わりに加工費と鉄鉱石は彼女の持ち出しになるらしい。
「「「「「ご馳走様でした。」」」」」
食べ終わったのでゆっくり帰ると2時くらいに村に着いた。依頼の生産をしてもらおう。
「こんにちはシャーロット。今日の依頼の精算を頼む。素材買取はなしで。」
「こんにちはだニャ!A達は今日はウォータサラマンダーのはずだったニャ?相変わらず早いニャー!でも素材は売ってくれないんだニャ?サンショウウオ素材は需要あるから高値で買い取るニャよ?ダメ?ダメかニャー・・・。まぁ売ってくれなくても、討伐証明のために見せてもらうから一応奥に来るニャ。1人でいいニャよ?」
「じゃぁ・・・、私が行くの・・・。」
イーリが立候補し、ネコミミさんと一緒に奥へ行く。革を持っているのは彼女なので妥当だ。
そしてすぐ帰ってくる。イーリの右手には査定用紙が握られている。
「報告するの・・・。」
「ああ、行こう。」
促されて依頼カウンターへ。
「ただいま、アリス。依頼は成功だ。査定が終了したので依頼完了の手続きをお願いする。」
「おかえりなさいー、ご無事で何よりですよー!それにしてもお早いお帰りですねー!さすがですー!」
相変わらずテンションが高い。かわいい。
「では登録証を出してくださいー。」
5人でいつものように手の甲を見せる。
「はい、これで依頼完了ですー!おつかれさまでしたー!5人に6,000ゴールドずつ入金しておきましたよー!そしてA様がランク4にー、グラシアさんがランク3になりましたーおめでとうございますー!」
一応ランクは上がったか。
「おめでとうございますA、グラシア。」「おめでとう!」「おめでとう・・・。」
「「ありがとう!」」
クラリチェたちにも祝福される。うん、こういうのは嬉しい。
「あ、それで。2人でもいけそうな遠征依頼を探しておいてくれないか?」
「わかりましたー!見繕っておきますねー!」
「よろしく頼む。」「お願いするわ。」
「はいはーい!では明日ご用意しておきますねー!ではではー!」
アリスに見送られてカウンターを離れる。
「それで、これからどうするんだ?」
「まずは装備屋ですね。ウォータサラマンダーの鎧一式を作ってもらいいにいきましょう。」
「ああ。」
5人で装備屋へ。
「邪魔する。」「お邪魔するわ。」「お邪魔します。」「入るぜ。」「こんにちは・・・。」
「はい、いらっしゃいませ。今日はどのようなご用事ですかな?」
「俺の鎧を新調したいんだ。材料はウォータサラマンダー。イーリ。」
「これなの・・・。」
イーリが素材を出そうとするが、
「ウォータサラマンダーの革ですと、ここでは狭すぎますな。奥のほうへいらしてくだされ」
ご隠居にそういわれる。確かにここで出すといっぱいいっぱいになるだろう。
奥の倉庫らしきところへ連れて行かれたので、そこでサンショウウオの体を鞄から出す。
「ほうほう!これは!見事に処理されていますな!素晴らしい。」
「余ったら引き取って貰っていいから・・・それも含めて計算して・・・。」
「そうですな、これだけの大きさですと、こちらからの持ち出しになりますな。素材費は持込なので当然0、加工代が盾・兜・鎧・ズボン・ブーツそれぞれ2,000。余る部分の買取が30,000ゴールドですな。それでよろしいですかな?」
「ああ。ゴールドはクラリチェたち3人の登録証へお願いする。」
「A、いいのですか?」
「素材は渡すって話だっただろう?遠征の諸経費の足しにしてくれ。グラシアもそれでいいか?」
「そういう話だったから私は別に異存ないわよ?」
「遠慮なく好意に甘えさせてもらうぜ!まぁ俺の取り分は装備と相殺なんだけどな。」「ありがとう・・・。」
「お話がまとまったようですな。では精神を集中して。武具作成!」
ご隠居の掛け声とともに放たれた魔法が、バルバックの体を包んだあとサンショウウオの革へと向かい、
ボン!
という音とともに装備になった。半分くらいは革のままだ。
「ここで着替えていかれますかな?」
「ああ。」
バルバックは試着室へ向かう。程なく彼(?)は戻ってきた。淡い水色のサンショウウオ装備を纏っている。ご隠居が好みを汲んだのか、鎧も目まで隠すデザインだし、相変わらず体型からは性別がわからないな。
「よくお似合いですよ!ではお3方、登録証をお出しくだされ。」
クラリチェパーティ3人が手の甲を見せる。ゴールドが入金されたようだ。あ、バルバックはプラマイ0だから入金されないのか。
「いい取引でしたな。またいいものがあったら持ってきてくだされ。」
「「「「「ありがとう。」」」」」
5人で礼を言って店を後にする。
「じゃぁ、武器の方も作っちゃいましょ!」
ギルドの建物を出たところでグラシアがそう言い、彼女の家に向かう。
「別にバルバックさんだけでもいいんだけど、みんなはどうする?」
「特にやることも無いから見学したい。」
オレの忌憚なき意見だ。
「武器が生まれる瞬間はいつ見てもわくわくしますからね、お邪魔でなければ私も見たいですよ?」
クラリチェも見たいようだ。
「魔力使い過ぎないか心配だから・・・。私も見るの・・・。」
イーリは心配しすぎではないだろうか。
「わかったわ!」
そしてグラシア家の工房へ。前回の魔法陣の上にバルバックが骨を置く。グラシアは倉庫から鉄鉱石を持ってきたようで、それを骨の隣に置く。今回は武器をベースにしないんだな。
「すぅ・・・っ!いくわ!武器製作魔法!!」
掛け声とともにグラシアが手をかざすと、魔法陣が光を放つ。置かれた素材は光に包まれてひとかたまりなっていき、光が収まると1本の薄い青の剣になっていた。バルバックの今の剣とほぼ長さが同じだ。
「ふぅ・・・。成功ね!バルバックさん微調整するから振ってみて!」
「ああ。」
バルバックが2~3回振るう。
「いや、調整いらないぜ!すごく手になじむ。ありがとうグラシア!」
どうやらいいものが出来たみたいだ。
「どういたしまして!」
「バルバック、剣の詳細を見せてもらってもいいか?」
「ん?いいぜ。武器表示、閲覧許可」
======
装備
右手 :水流剣・威伏(220)(水50)
======
この世界でのステータスオープンのカスタムは基本なのか。基本なんだろうな。
それにしてもこの武器は属性値が高いな。そして名前はサンショウウオだからだろうか。
「ありがとう。しかしすごいなこの武器。そういえばグラシア、武器の名前って作った人間が決めるのか?」
「作ったら名づけられているのがほとんどね。私には意味のわからない名前とか結構あるもの。これもよくわからないけど、『威力で敵を斬り伏せ叩き伏せねじ伏せる』とかそういう意味でしょ?」
そうなのか?
「あと、私の作った武器をほめてくれてありがと!」
まぁいいか。