Twenty-fifth good-bye
僕は星を観るのが好きだ。
数百光年、数千光年と離れた星の瞬きを観ていると『この星々の輝きが地球に届くまでの時間に比べれば、人間の一生なんて一瞬で終わるようなものだ』と思う。ましてや数千億もある星のひとつの、更に『70億分の1』である自分の悩みなどちっぽけなことだ。
今日も芦ノ湖スカイラインに車を停め、サンルーフを開け、シートを倒して星空を観る。
「こんばんは」
不意に声をかけられた。シートを起こして窓をみると美少女が立っていた。
「あ。こんばんは」
窓を開けてはいないが、サンルーフが開いているので声は通る。
「良い夜ですね」
「あぁ、綺麗な星空だね」
先ほどから車は1台も通っていない。この美少女は歩いてきたのか。
「ちょっといいですか?」
いつの間にか助手席に女の子が座っていた。
「いや、もう帰りますから」
「そうおっしゃらずに。少しだけですから」
女の子が右手を振るとスイッチが切れたかのように気を失ってしまった。
気がついたらベッドに寝かされていた。
「あら、気がつかれましたか。大次郎さん」
箱根で僕に声をかけてきた美少女が隣に裸で寝ていた。何故、裸なんだ!? おまけに僕の名前を知っている。名乗っていないのに、何で知っているんだ?
「では行きましょうか」
「行きましょうって、何処に?」
「天の川銀河、アンドロメダ銀河に大マゼラン星雲。それだけじゃないわ。異次元にある無数の星々を訪ねる旅に行きましょう」
「な、なんで!? どうして!?」
『やはり宿主は何も覚えていないようじゃな』
頭の中で声がする。誰なんだ!?
「後で説明します。今はすぐに次元転移しちゃいましょう」
「はあ? 次元転移って何!?」
「遠く、長い旅に出ても、次元転移すれば今の時間と場所に帰ってこられるので安心してください」
「だから次元転移って何!?」
僕の質問は無視された。謎の美少女が右手を振ると、信じられないくらい目が回った。もしも僕がラム酒なら、オレンジキュラソーとレモンジュース、オレンジジュース、パイナップルジュースを加え、そこにダークラムをフロートさせてフルーツを飾ってストローを添えれば『マイ・タイ』が出来上がっている。「トロピカル・カクテルの女王」になれるくらいシェイクされた。
「御嬢、まずは何処にいく?」
僕が勝手にしゃべっている! 頭の中でしゃべっていた奴に身体を乗っ取られた!
「まずはアルカディア国に行って、みなさんに謝らないと」
「そうじゃな、それがいい」
「そうと決まれば大次郎さん、よろしくお願いします」
(はぁ?)
僕はこの巨乳美少女といきなり愛し合ってしまった。出会ったばかりで氏素性も知らないのに。そういう軽いノリはダメだと思ってはいたが性的衝動が抑えきれなかった。
『宿主、これからもよろしくな』
頭の中の声は「これからも」と言った。どういうことなんだ?
『御嬢と宿主は、夫婦と言っても過言ではない』
「えぇ!?」
僕はこの巨乳美少女を知っている? しかも愛し合う仲だったらしい。でも過去にこんな美少女に出会っていたら忘れるはずがない。
この美少女との出会いから、忘れた原因となった出来事等を、星々を旅する間に説明してくれるというので聞いてやることにした。
「時間はたっぷりあります。ひとつずつ説明しましょう、まずはネロの話を・・・」
「あの、こんなことしておいて何なのですが、まずは自己紹介してもらえませんか・・・」




