Twenty-second news
「私たちは知的生命体の生命エネルギーを糧にして生きています」
玉座にへたり込んだカリーナさんが独り言のように呟き出した。
「この星は過去の愚かな戦争のため生命エネルギーが乏しく、国民を養うために私の母、女王ナビスは多くの星々を制圧し、そこに住む知的生命体から生命エネルギーを奪って糧としていました。大次郎さんが理解し易いように言い換えれば、星が牧場、人が家畜、増やした人は屠殺して食料となる・・・」
「はぁ」
独り言ではなくて僕に話しかけていたようだ。
「私はその行いに反対でした。知的生命体を殺さずとも、少しずつ、少しずつ、エネルギーを分けてもらえれば十分ではないかと・・・」
ネロや虹の彼方たちだけじゃなく、カリーナさんも知的生命体の生命エネルギーを糧にしていたんだ。
「私と母ナビスは対立しました。母にとっては自分たち以外の知的生命体は家畜程度にしか思えなかったのでしょう」
(虹の彼方さんも僕をそう思っているの?)
『ワシは家禽だと思っとる』
(・・・)
「他の星を蹂躙し、その星で生まれた文明や文化を蔑ろにする母と、互いに手を取り合い相互発展していきたい私とで諍いが起きてしまいました」
壮絶なる母娘喧嘩、ということか?
「母の行いに我慢できなくなった私は母を討ち、必要以上に生命エネルギーを消費する人造人間たちもアルカディア国の方々を操り破壊しました」
マミたちはカリーナさんが起こしたクーデターに利用されたのか。
「全ての人造人間を壊しても、少しずついただく植民地となった星々の知的生命体の生命エネルギーでは、この星の民を飢えさせないためには足りません」
本当に少しだけしか生命エネルギーを取らないとそうなるかも。
「今よりも多くの糧を得るには虹の彼方が覚えている、私たちの植民地となっていない知的生命体が住む星々の情報がどうしても必要だったのです」
「カリーナさん・・・」
「ネロの追跡子を地球で見つけたのには、訳があったのですね。ネロ・・・いいえ虹の彼方は勇者王が転生したのに気づいて地球に向かった・・・」
『宿主、少し身体を貸してくれ』
(あぁ)
「御嬢、植民地の奴らのことを思いやる優しい気持ちがあるなら、何故もう少しナビスと話し合わなかったんじゃ」
「何度も、何度も母を説得しました。しかし、私の言うことなど母は聞いてはくれませんでした」
「実の母親を討つとは短絡的だったのではないじゃろか」
「文明が滅びるのはあっという間です。私には時間がなかったのです」
僕はカリーナさんの気持ちがちょっと判る気がする。相手の文化や文明を理解して、少しだけエネルギーを分けてもらう。相手も了解していて、そこに報酬が発生すれば「貿易」として成り立つ。
「Sword & Protective gear systemを装着したアルカディア国の方々は強かったです。母の造った人造人間は、わずか2日で駆逐されました」
「勇者王に勝利の虹を貸し出したのは、アルカディア国民の強さを試すためだったのか?」
「そうです。でも、あの人は・・・。あの勇者王は・・・」
カリーナさんはキッと犬の背中に乗った赤ん坊を睨み付けた。
「勇者王の強さは規格外で参考になりませんでした。おまけにネロを倒すために貸した勝利の虹を勝手に支配してしまい、私が解除命令を出しても勝利の虹は勇者王から外れず、返して欲しいと頼んでも聞いてくれませんでした。仕方なく勇者王の寿命が尽きるまで待って勝利の虹を回収したのです!」
「そしてネロを倒した・・・」
「ええ。やっと見つけたネロを追いかけて地球に辿り着き、たまたま目が合った大次郎さんにネロと闘っていただきました」
(うわぁ! 僕は本当に偶然選ばれたんだ!)
ここまでのカリーナさんの話からすると、僕は何か特別な要素を持っているのかと思っちゃった!
「何の力も持たない大次郎さんでSword & Protective gear systemを試しました。大次郎さんがネロを倒したとき、魔力を持っているアルカディア国の人がSword & Protective gear systemを装着すれば無敵の強さになる。そして、このクーデターが成功すると私は確信しました」
(僕はリトマス試験紙か!)
もしも僕がネロを倒せなくても、アルカディア国の誰かに衝撃の蠍たちを装着してネロと闘わせるつもりだったのだろう。
だからミッチーたちが同行したいと言ったときにすぐに了承したのか。
同行を申し出なかったとしてもミッチーに義龍の片付けを頼んでいたから、そのまま連れ去るつもりだったんじゃないの!?
「御嬢のクーデター計画で予想外の事態は勇者王降臨、か・・・」
「くっ! 転生って何なんですか!? なんで勝手に生まれ変わっているんですか!?」
「・・・私も驚いている」
犬の背中で腕組みをした赤ん坊が答えた。こうしてみるとただの赤ん坊だが、先ほどまでの大暴れぶりを思うと金愚義龍の何十倍もの化け物だ。
「私をどうします? 処刑しますか? 投獄しますか? うぅぅぅぅぅ」
カリーナさんは両手で顔を押さえて泣き出してしまった。
自分の星の人たちのこと。植民地で虐げられていた人たちのこと。カリーナさんなりに皆が幸せに暮らせることを願って起こした革命だったのだろう。
「どうしましょうか? Alexander・Allen・Armstrong・Albemarle・Third様」
僕は勇者王に相談してみた。
「私は大次郎殿から助けを求められただけだ。アルカディア国の民を解放できたので、後は国へ帰すだけだ。大次郎殿がカリーナ殿の処分を決めて構わない」
マミたちはまだ立ち上がれない。一度死んで復活したのだから、いきなり元気満々という訳にはいかないようだ。
「判りました。僕に任せてください」
と言ったものの、どうしたものか。直接の被害者はネロに殺されてしまったミッチーたちなのだろうが、ネロはカリーナさんの母ナビスの命令で動いていた訳だし、そのナビスもカリーナさんに討たれちゃったし。
そもそも知らない星のクーデターの首謀者を裁くことなんて、僕にはできない!
「人造人間は皆壊してしまったので植民地支配も今日でお終い」
涙を拭きながらカリーナさんは歩き出した。
「王宮もこんなになっちゃって・・・。私にはもう何もありません」
カリーナさんが左手を挙げた。
『まずいっ! 宿主、御嬢は死ぬ気だ!』
「カリーナさんっ!」
僕は慌ててカリーナさんを羽交い締めした。
「離してください! もう、植民地にしていた方から生命エネルギーを分けていただくこともできない、新しい星を見つけることもできない。私たちは滅び行く運命の民族なんです!」
「あらぁ? そんなことはないかもよぉ?」
魔力が強力だ、というだけで連れてきちゃったベルちゃんが僕らの前にやってきた。
虹の彼方は淫魔と言っていたが、僕からしたらストライクの美少女だ。
「話を聞いていたら、どうもカリーナちゃんたちは私の一族と同類なのかもぉ」
「え? 同類ってどういうこと?」
「遠い親戚ぃ? ご先祖様ぁ? とにかく仲間だと思うわぁ」
カリーナさんも淫魔だったのか!? 黙っていれば巨乳の美少女で、こちらも僕的にはストライクなのだが。
「生命エネルギーを糧にするってことわぁ、吸精しているってことなんじゃなぁい?」
「はぁ?」
「ここに男がいるんだからぁ、試してみればぁ?」
ベルちゃんはそう言うと、どこからかステッキを取り出し僕とカリーナさんの額を軽く叩いた。
きた。きた。きた。きた。きた。
僕の性的衝動が爆発した。カリーナさんも僕をトロンとした目つきで見ている。僕の「BIG・1」は「Super・1」に変形した。
「いくぞ、カリーナ!」
「喜んで! 大次郎さん!」
カリーナさんをお姫様抱っこして大きめの瓦礫の陰に連れ込んだ。
そして僕らは愛し合った。しゃべる犬エイチ、勇者王、マミたちのことなど忘れて只管愛し合った。
『淫魔の魅了魔法には気をつけろと注意したのじゃが・・・。まぁ、いいか』
「いい加減にしろ! 私たちは先に帰るぞ! そろそろミルクの時間だ」
勇者王はマミたちを連れて空間転移してしまった。
「あのぉ、お試しなんだからそろそろいいかなぁ?」
朝日が昇ってきたと思っていたのに、いつの間にか夕陽に変わっていた。ベルちゃんも呆れてしまったようだ。
「大次郎さん、私は満たされたわ! すごく満たされた!」
「僕も満足だよ、カリーナ」
「どうやらカリーナちゃんの民族も吸精で満たされるようねぇ。よかったわぁ。これからはいろいろな星の人たちと愛し合ってみてねぇ」
「ありがとうございました! あの、お名前は?」
「あらぁ、名乗っていなかったわねぇ。私は金星からやってきた愛の天使、キューティーベルちゃんです!」
「ベルちゃん、本当にありがとう! 私たちは愛し合うことで糧を得られる、愛の民族でしたのね!」
「ふふふ、そういうことよぉ。宇宙は愛で満たされているのよぉ」
「では、もう一度愛し合おうか、カリーナ」
「はい! 大次郎さん!」
「えぇーっ、そろそろ帰りましょうよぉーっ。ベルちゃん、飽きちゃった」
ベルちゃんがステッキで僕とカリーナさんの額を軽く叩いた。
正気に戻った。正気に戻った途端、腰が抜けた。やばい、立てない。
「じゃあ、カリーナちゃん。機会があったらまた様子を見に来るわぁ」
「ありがとうございました、私は女王としてこの素晴らしい行為を国中に広めたいと思います」
「カリーナ、また来る」
「大次郎さんは毎日来てくださいね!」
「OK!」
ベルちゃんが僕を連れて空間転移した。
カリーナさんが別れの挨拶をしたので、また会うつもりがあるのだろう。
っていうか、毎日来てくれと言われてしまった。




