>扉の向こう②<
「これは…俺だ…」
物体の正体は俺の死体だった。
体は引き裂かれまるでボロ雑巾のようだ。
「なんで…こんなものが…」
この空間が異質なものであるのはわかっていたが、突然こんな衝撃的な物を見せつけられ俺の頭はパニックに陥った。
「それはお前の最期の姿だ。」
死体を挟んだ向こう側には少女が立っていた。
「最期の姿…?」
俺はなるべく死体を視界に入れないように少女を見た。
長い黒髪に高身長。外見年齢は年上のようだ。
「最期って…俺は死んだんですか?」
少女は死体を見て答えた。
「そうだ。お前はこの通り何者かによって惨殺された。」
「じゃあ…ここは死後の世界なんですか?」
少女は再び視線を俺に戻した。
「違うな。お前はまだ生きている。」
「いや…今死んだって…」
「お前は確かに死んだ。しかしそれはもう過去の出来事だ。今現在お前は生きている。そして、生き延びねばならないのだ。」
何を言っているんだ…
俺の置かれている状況がわからない…。
俺の記憶がどこで途絶えて、どこから覚えているのかも。
いったい彼女は何を知っているのだろう。
「えっと…俺はこれから何をすれば…」
「説明している暇はない。すぐに迎えが来るぞ。」
次の瞬間、右方向から凄まじい光が差し少女を飲み込んだ。
「くっ…眩しい…」
俺は咄嗟に目を閉じたが光は瞼を貫き、俺の脳に強い衝撃を走らせた。