表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
別離の花(仮タイトル)  作者: 小松菜大佐
1章 一人歩む『傲慢』
2/37

1話 

細かく投稿していくスタイル

『魔法三番隊、前へ』

「「「「「了解!」」」」」

脳内に直接響く声に従い、十人規模の人影が動く。


それぞれの手には杖や、分厚い本があり、またそれらは魔法陣を周りにまとわせ、まばゆい光を放っている。またそれは赤、青、黄、様々な色をしていて、時間と共にその大きさを膨れ上がらせていった。


 その向く先には、形様々、大きさ様々、しかし体色はすべからく黒をした、異形の化物が蠢いている。


 この場にいる人間は全員、降って湧いたこの化物共に抵抗するために、必死に戦っているのだ。


 手に持つ剣で断ち切り、槍で肉を貫き、魔法が炸裂する。ところどころで爆音が轟き、そのたびに化物共は身を削っていく。しかしそれでも唸るような咆哮を上げて、また甲高い奇声をあげて突き進んでくる。


 群がる化物たちの中の一匹、8本の足を持った犬のような怪物が飛び出してきた。俗に『ケルベロス』と呼ばれるそれは、その足全てを使い生み出されるその爆発的なスピードが特徴である。


その速さは他の怪物達とは比類にならぬ程で、他の化物の相手をしていた剣士が反応しきれず、突破を許してしまった。


 飛びかかる先には魔法を準備している男が一人いる。


「う、うわあっ!?」


集中が途切れ、空中に描かれた魔法陣は結果をあげることなく、儚い音を立て消失する。それはすなわち、その男の抵抗する手段が失われたことを示していた。一瞬の内に、その男の顔が強ばる。


「んっぐ、ぬぅぅううううう!!!」


そこに割って入った男が右手の盾でその攻撃を受ける。


 無理にかばったせいで崩れた体勢を立て直し、ケルベロスの体を突き飛ばした後、男は追撃を仕掛けた。周りを警戒しながら足8本の内の1本を踏み砕き、怯んだ所で左手に持つ剣を頸に突き刺す。


その一撃を受けてケルベロスも地に倒れ伏した。ぴくり、一度体を震わせた後、その輪郭を崩し、影も形もなくなる。


 息をつき、庇われた男は手を上げる。


「ありがとう!」


「礼はいらん、次だッ! 次次!!」


「あ、ああ!」


『魔法三番隊は後退だ。再詠唱までの時間稼ぎの為、槍三番隊は前へ』


「「「「了解ッ!!」」」」


「りょ、了解!」


周りの隊員たちの返事もあって、ようやく落ち着いた男は遅れて返事をした。




「あーくそっ、生き残ったら飯奢ってくださいよ先輩!」


所変わって、血気盛んに飛び込んでいく剣士の若者に叫びかける魔法士の、リーダー格の男。そして、後ろまで引いた魔法士の男が乾いた喉を潤しながら言う。


「俺だって戦ってるんだ、無茶言うな。むしろお前らが隊長の俺を労ってくれても構わないんだぞ!」


受けた言葉を返した後、軽く笑みさえ浮かべて魔法を展開していくのは、リーダー格の男。魔法陣は数を重ね、そのたびにその面積を増やしていく。大して集中している素振りも見せぬままやってのける余裕が、この男の優秀さを現していた。


 そこへ。


「おい、来たぞ! 迎え撃て!」


男が剣で指し示す先は空中の一角であった。


 空が黒い。それは雨雲に似ているが、だがそれは『ミュートリア』と呼ばれる怪物の一種の群れであった。先端に嘴に似た鋭い突起物が備わっており、空中から滑空して標的を貫く、いわば特攻型である。


 それがあの数だ。この場の人間に嫌が応にも緊張が走った。


 それぞれが魔法を放ち、弓を放ち、攻撃手段を持たない近接武器を持つ人間は退避する。戦場は一気に騒然となった。


「撃て! 撃て!! 奴らは脆い、当てさえすれば止められるんだッ!!」


 それがミュートリアの弱点。

 再確認するように誰かが吠える。それに呼応するように、周りからの攻撃はさらに激しくなる。


 魔法の範囲に飛び込み、また矢に射抜かれ、次々ミュートリアは四散していく。しかし、それでもその物量の前に取りこぼしがいくつも出てしまった。


 そのいくつかのミュートリアが向かう先には、先のベテランの魔法士の男が。自分に矛先が向けられたことを察して、顔が一気に恐怖に染め上げられる。なんとか、元々詠唱を行っていた魔法を発動するも、仕留めきれない。

 その数5匹。絶望するには十分すぎる数字だった。


 晴れた空から注ぐ陽光とは対称的な黒の嘴が、やけに鋭く、妖しく、輝きを放ったように、男には見えた。


「や、止めろ、くるなぁァッ――――」


男の悲鳴は途中で途切れた。


まず足を貫かれ、動きが止まった瞬間に胸に腹に腕に喉にミュートリアの嘴が突き立ち、一瞬にして男の体は穴だらけになった。それでもまだ鴉のように、他のミュートリアが続いて男の死体へと群がっていく。


 そのうじゃうじゃとミュートリアがひしめく場所の延長線上で、


「――――」


剣士によって固く守られた魔法士が魔法陣を展開していた。


 色は赤。炎魔法だ。まともに聞き取れないようなスピードで詠唱を連ね、同時に魔法陣が重なっていく。


「――――完了。照射開始」


 ある程度まで広がった後、一気に収縮して、その中央から極太の火炎放射が放たれた。


 ミュートリアが軒並み焼き焦がされる中、当然その射線上には先の男の死体がある。


 しかし周りの人間は、それに気づかない。男が上げた悲鳴は途切れ、それも混乱から来る騒ぎでかき消されていたし、何よりただ他人に視線を向ける余裕がなかったからだ。


 火炎放射を放った魔法士の男も、そこにミュートリアが集まっていたから放っただけであり、そこについさっきまで話していた男がいたことを知らなかった。


 炎にあぶられ、群がるミュートリアが消し飛ぶ中、男の死体も焦がされていく。


 これが戦場。


 ベテランでも気を抜けば死ぬ。抜かなくても死ぬ。新兵ならばなおさらに。

 そして誰も、その死を気に留めない。留める間もなく自分も死ぬ。その死体でさえも、弔われることなく、気づかれぬまま利用される。影も形も残らないことだってある。


 ある意味全ての人間に平等な環境。


 過酷、苛酷、残酷が過ぎるこの場所で、それでも人は躍り続ける。


 その全ての瞳が向く先には、一つ大きなドームがあった。


頭痛いのでここで寝ますww

この化物なによ、といった説明は次回になると思います

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ