(42) 人材あります![5]
━ これが現実とすれば、このあと俺は風呂から出た自分に出会うことになる。今日の無駄な動きはするなと、上手く伝えられないだろうか…、待て待て待て! そんなことが出来る筈がない、これは現実じゃない… ━
戸倉は卓袱台へ顔を伏せた。疲れからか、戸倉はその姿勢のままウトウトと眠りへと引き込まれていった。そして、30分が経過し、ついに接近遭遇のときがきた。
『やあ、お先でした…』
自分と瓜二つの男は、落ちついてまったく驚かない上にやけに馴れなれしかった。その風呂上がりの姿は、完璧に昨日の自分である。戸倉の方が幾らか怯んでドギマギした。
「はあ…」
通り過ぎる昨日の自分にそう返して、軽くお辞儀するしか今の戸倉には出来なかった。いや、それより、ともかく俺の前から早く消えてくれ…という思いの方が強かったかも知れない。
『あっ! そうそう。これだけは言っておかねばなりません。私はあなたですが、異次元のあなた、という存在なのです』
「えっ?! どういうことですか?」
戸倉は恐怖心を忘れて訊ねていた。
『どういうこともなにも、…そういうことです』
「いえ、よく分からないんですよ、俺には!」
『ははは…、困ったお人だ。異次元だと私は、こうも違いますか。まあ、それはあなたの方も言えることなんですが…』
そういや、こいつは少し俺より穏やかな性格のようだ…と戸倉は思った。




