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(38) 一輪の赤い薔薇[バラ]

 正喜は散々、虫に食われた薔薇バラを見て、しみじみ思った。地面から幾筋も分かれて生えている細い枝のような幹・・葉は一枚すらなく、見事! と言えるまでに食べ尽くされて茶色に変色していた。よ~く見れば、その茶色の枝には蓑虫があちらこちらとぶら下がっている。その数、ざっと二百匹はいるようだ。大群である。思い返せば、ここ二十年ばかり、花の咲く春から夏を除いて緑の青々と茂る枝葉を見たことがない…と正喜は思った。この惨状を見なかったことにすれば事は足りる。だが、正喜は見てしまったのだ。

 それから二時間ばかり、枝からむしり取るようにして集めた蓑虫の数は、やはり二百匹ばかりに及んだ。世間一般には、この行為を駆除という。これは植物側から見て・・という観点になる。動物側から見れば、天災に見舞われた…と、まあこうなるのかも知れない。そんなことを哲学的に考えている場合ではない…と正喜は刹那せつな、思った。正喜は、ともかく雑念を振り払うことにした。

 駆除した蓑虫は落ち葉で焼いたが、少し哀れに思え、次の日の駆除作業からは遠くへ捨てるだけにした。見回すと薔薇が中心ながらも、梅・・その他の樹も結構、食われていた。結局、見て見ぬふりの旅人を決め込み、それ以降、正喜は見ないことにした。自然の摂理には一定の法則がある。減反で草だらけになった田畑により虫が増えた。もちろん、異常気象に伴う暑い季節が長引いたこともその一因なのだが…。すべては人間が自然を壊しているのかも知れないと正喜は思った。

 一週間が経ち、茶色い枝だけの薔薇に緑の葉が生え始めた。そしてよく見れば、その先端に一輪の赤い薔薇が咲いているではないか。正喜にはその花が、せめてもの薔薇の樹の礼に思えた。


                THE END

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