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(29) 正義の味方

 勇太は背伸びしながら欠伸あくびを一つすると深夜のアパートを出た。よくよく考えれば、勇太の実力からすると高級マンションに住み、地下駐車場に止め置いた外車に飛び乗ったとしても不思議ではなかった。が、それがどうだ。勇太は安アパートから飛び出ると地下鉄階段へ向かったのである。こんなギャップが、なぜ出来たのか? その事実を知ったとしても、恐らく他人には理解出来ないだろう。勇太の実態は、なにを隠そう、才能に秀でた正義の味方だった。勇太が向かったのは、二つ駅向こうに格安で買った廃工場だった。その中には勇太が正義の味方へ変化へんげできるグッズが収納されていた。グッズとはいえ、子供 だましの玩具おもちゃなどではない。正真正銘の本物のスーパーマシーンである。今夜のスケジュールは、このマシーンで解析した悪党退治だった。警察が逮捕できない犯人を勇太の手で逮捕し、交番へ通報する手はずは、いつものように出来ていた。一般人でも逮捕できる・・とは、二年ばかり前、勇太がひょんなことで得た知識だった。それ以降、警察でもかなり評判になるほど勇太の存在は有名になっていた。警察も表彰状を送ろうとしていたが、いかんせん、忽然と消える勇太の情報をつかみかねていた。むろん、犯人ではないから手配できる訳でもなく、表彰状は何枚もうず高く積まれたまま、うやむやにされていたのだった。いや、逆にこの事件も解決してくれるんじゃないか…という密かな期待が警察内部ではささやかれ始めていた。そして、今夜である。

 犯人の潜伏先と情報は、すでにマシーンにより解析済みで固まっていた。警察は、その行方ゆくえを知るべくもなく、捜査中であった。

「な、なに奴だ!」

 勇太はおもむろに胸ポケットに挿したICレコーダーのスイッチを押した。すると、辺りに突如として、♪ ※ ♪の格好いいカラオケ曲が賑やかに鳴り響いた。

「ははは…、名乗るほどの者ではない! 悪を退治する正義の味方だっ!」

 突然、現れた正義の味方とその音に犯人はうろたえた。勇太は睡眠銃を腰から抜くと、まるで、害虫を駆除するようにブシュ~~と犯人めがけて噴射した。

「ウッ! …」

 犯人はうめき声を漏らすと、バタッ! と倒れ、寝息をかき始めた。勇太はICレコーダーのスイッチを切ると、いつものように犯人を柱にくくりつけたあと、 ━ 正義の味方 参上! ━ と書かれた紙を柱に貼り、廃工場へと引き上げた。乗り込んだ車は、まだこの世に存在しない時空瞬間移動装置だった。開発者は当然、勇太である。この車がマスコミに知られれば一躍、勇太は世の人となり、億万長者の有名人だったが、彼はそれをしなかった。まさに正義の味方そのものだった。

 時空瞬間移動で廃工場に現れた勇太は、車を工場内へ格納すると鍵をかけて出た。そして、地下鉄に乗りアパートへ戻ったのは夜中の二時過ぎだった。

「いつものように、○○の逃亡犯はドコソコに逮捕して括りつけてあります」

「ドコソコですか?! あっ! あなたは、もしかして正義の味方さん! ちょ、ちょっとお待ち下さい!」

 電話対応に出た警官の声ははずんだ。彼だけではない。署の面々、全員が色めきたった。

「…」

 勇太は小さく笑うと格好よく電話を切った。

 次の朝、テレビ各局は正義の味方がふたたび現れたと華々しく報道した。

 

                THE END


  ※=七色仮面の歌、月光仮面は誰でしょう、海底人8823etc.の懐かしい曲が入ります。読者の好みにお任せ致します。

                          作者より

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