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(26) 真似お月見

 名月が煌々と蒼白い光を放って部屋の廊下へ射し込んでいた。廊下の上には小机が置かれ、その上にはすすきが数本生けられた花瓶と団子が盛りつけられた三方さんぼうが乗っている。それを前にして、小坂家の三人が十五夜の月を眺めていた。

 小坂家は瓦屋根の日本家屋に住んでいる。その庭と家の外を分かつ簡素な生け垣の向こうには一面の芒の原野が広がり、穏やかな田舎特有の自然風景を四季を通じて見ることができた。そして今は、いい風情の秋半ばである。当然、こうした自然のたたずまいの中で、多くの野趣あふれる動物が姿を見せては消えたりしていた。この夜、現れたたぬき腹鼓はらつづみ家の三匹もその一員で、中秋の名月をでていた。その距離は小坂家の人々から10mばかり先で近かった。月が蒼白く照らすとはいえ辺りは暗い夜の闇で、腹鼓一家の姿は三人にはまったく見えなかった。だが逆に、小坂家の会話はすべて腹鼓一家に筒抜けだった。

「いい、月夜だわ…」

 小坂家の母が言った。

「シィ~! 十五夜は黙って見るもんだ!」

 小坂家の父がたしなめた。

「…」

 小坂家の母はうなずいて黙った。

『いい、月夜だこと…』

 腹鼓家の母狸がそう言って、ポン! と腹鼓を一つ打った。

『シィ~! 十五夜は腹鼓を打たずに見るもんだ!』

 腹鼓家の父狸が窘めた。

『…』

 腹鼓家の母狸は頷いて黙った。

「…それにしても、いい月だな」

 小坂家の父が思わずつぶやいて腕組みをした。

『…それにしても、いい月だな』

 腹鼓家の父狸が思わず呟いて腹鼓を一つ打った。

「早くお供えの団子を食べようよ!」

『早くお供えの柿を食べようよ!』

 両家の子供達は、そう言った。十五夜の月がニタリ! と笑った。


               THE END

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