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(25) つかれる人[3] 付かれる人

 牧原由香は今をときめく若手アイドルである。中学一年のとき、偶然、歩いていたスクランブル交差点で声をかけられたのがきっかけで芸能界デビューを果たした。とはいえ、声をかけたのはスカウトマンではなく所属事務所の女性事務員だった。由香はそういう状況もあり、その宮田千沙に、さほど身の危険も感じないままスムースにムーンライズ・カンパニーの専属となったのだ。それ以降、どういう訳か由香はマネージャーがよく変わった。

「君ね! これで6人目だよ。マネージャーをそう度々(たびたび)、変わられたんじゃ、うちとしても困るんだよ。何か言ってるの?」

「私、なにも言ってません! なんか、いつの間にか押し黙って…」

「しばらくすると、必ずここへ来るんだよ。担当を変えてくれってね。そういうの、本当に困るんだよね。なにかあるんだろ? 訳がさ。そうとしか考えられん」

 社長の蓮杖は渋面しぶづらで由香に迫った。由香にはまったく心当たりがなく、なにかを言ったという記憶もなかった。

「いえ…」

「そうか、まあいい…。お疲れ! 今日は帰っていいぞ」

「あの…明日は?」

 由香は恐る恐るたずねた。

「次が見つかるまで、事務員の宮田君に付いてもらう! 本当に頼んだよ! もう…」

「あっ! はいっ!」

 間髪いれず、由香は明るく返事していた。事務所内では、どういう訳か宮田千沙と由香は相性があった。このとき由香はムーンライズ・カンパニーのドル箱スターとなりつつあった。韓国の女性9名の人気アイドルグループと引けを取らない容貌と体躯を備え持ち、アクション的フリは互角と思えた。そして、今や飛ぶ鳥を落とす勢いで歌謡部門の各賞を総なめにする存在となっていたのである。だから当然、スケジュールは過密を極めた。由香はメイク室でもウトウトと眠ることが多くなっていた。

「よくご存知かと思いますが今日から担当します宮田です」

 千沙は早朝に由香のマンションを訪れた。

「ああ、よくお会いしますね。最初もあなたでした…」

「そうでしたか? ああ、そういえば…」

 千沙は、しらを切った。だが内心では、そうよ、私は生前のあなたなんだから…と呟いていた。そうなのだ。宮田千沙は一年後、過労で自殺する牧原由香の死霊しりょうが乗り移った存在だった。死ぬことはなかったと、過去の自分に伝えるために千沙は絶えず由香に付いていた。いつも由香のマネジャーの後ろに、もう一人、由香の死霊が乗り移った千沙がいたのである。


               THE END

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