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(25) つかれる人[1] 疲れる人

「どうも身体が、けだるいなあ」

「ですね…。でも、僕なんか、課長に比べれば3倍は、やってるんですよ!」

 不満顔で肩を片手で揉みながら、課長補佐の杉下は戸山に返した。

「ああ、そうだったな、すまん。これも管理職の悲哀か…」

「…ですよね」

「慰め合っていても仕方ない。どうする、勝負は明日あしただ」

「ここまでの質問は飛ばない、とは思うんですが…」

「ああ、まあ決算書の数値はかなり細かいからな。ここまで勉強した議員さま方がおられれば別だが…」

「しかし、万が一ということもあります。流用充当の答弁文だけは片づけておきましょう」

「だな。そのときの逃げ筋は必要だ」

「別に悪いことをしている訳じゃないんですけどね。これも、結果として生じた予算の組み替えなんですから…」

 自己弁護するように杉下は正当化して言った。

「そうだよ。俺達に比べりゃ国なんか悪いの一杯いるぜ」

 杉下はうなずいて笑った。戸山は机から小瓶の錠剤を2粒、手の平に乗せると口へと運び、湯呑ゆのみで飲んだ。

「栄養剤ですか?」

 杉下は湯呑みを机へ置いた戸山にたずねた。

「ああ、○△薬品の総合ビタミン剤だ。これ飲むと身体が軽くなってな」

「○△薬品? 余り聞きませんね」

 いぶかしげに杉下はその小瓶を見た。

「ははは…そりゃそうだろ。この前、回ってきたセールスマンにもらった地方製薬の試供品だ。それから病みつきになってさ。君もどうだい?」

 戸山は小瓶を手にすると、2錠だして杉下にすすめた。

「ああ、有難うございます」

 上司ということもあり無碍むげには断れず、杉下はその2錠を受け取った。

「なんか、身体がフワ~っと軽くなったように疲れが消えるんだ。それも即だ。まあ、だまされたと思って。言っとくが、違法ドラッグじゃないぜ」

「はあ…」

 勧められた杉下は半信半疑で錠剤を口へと運んだ。飲んだ直後、異変は起きた。身体がアドバルーンのように軽くなり、疲労感が消えた。

「軽いですね!」

「だろ?!」

 二人は笑いながら残りの仕事を片づけた。これで、議会は乗り切れるだろうと思えたところで切りをつけ、二人は職場をあとにした。

 翌日、定例議会が催された。

「おい! 担当課長の戸山君が見えんぞ! それに杉下君も…」

 議長の海渡が不安げに見回しながら議会事務局長の服部に言った。

「それなんですが、疲れたから飛びます・・とだけ電話が」

「誰が?」

「それが、二人ともなんです」

「疲れたから飛ぶ? どういうことだ?」

「さあ? 疲れたんでしょう」

「どうするんだ、君!」

「大丈夫です。答弁用の原稿が机にありましたから…」

「そうか、それならいいんだ。疲れたか…」

 海渡と服部は顔を見合わせ、ホッとした笑みでうなずいた。

 その頃、戸山と杉下は優雅に空を飛んでいた。雲の下には区役所があった。


              THE END

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