(13) 解毒<15>
社長室へ工藤が入ったのは、その五分後である。
「また、ですね…」
「工藤、えらく落ち着いてるな」
「いやあ、そうでもないんですが…。昨日、寝ずに考えたんです。それで、やっと少し分かってきました」
「なにが?」
「僕が課長に言ったことがありましたよね」
「俺に何か言ったか?」
篠口は思い当たらなかったのか、訊ねた。
「いつでしたか…もう、随分前になりますが、課長が俺達、死ぬまで今のままか? ってお訊ねになって、僕が、一度、社長の椅子へ座ってみたいと言ったことがあったじゃないですか」
「そんなこと、あったかなあ?」
「ありましたよ。この不思議な出来事が起こる以前でした。僕は、その回転椅子のクッションは心地よさそうだって言いました」
工藤は篠口が座る社長席の椅子を指さした。
「ああ…そういや、そんなことを聞いたような。だが、それが原因だと?」
「いや、はっきりとはしないんですが。どうもそれくらいしか考えつくことがないんですよ」
「君が思ったことが、現実になったってことか? それじゃ、二度目の今朝は、どうなんだ?」
「いや、僕は思い当たらないんですが、課長は? いや、社長は?」
「課長でいいんだよ、課長で。だいたい、この世界がおかしい!」
篠口は少し怒りぎみに断言した。
「はあ、すみません」
「いや、謝る必要はないが…。ああ、そういや、俺もこの世界へ来る前、決裁を押しながら椅子でふんずり返っていたい、と思ったことがあったな」
篠口にも思い当たる節はあった。




