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(13) 解毒<3>

 そのとき、女店員が注文の品を持ってきたので、二人の会話はしばらく途切れた。無言で二人は飲み食いした。篠口は特に空腹だったから、話すいとまがなかった。

 十数分後、食べ終えた篠口が、下流へ放出されるダムの水のように口火を切った。

「俺達って、死ぬまで今のままか? な! お前どう思う」

「死ぬまで、ってこっちゃないでしょ」

「ああ、まあな。やめるまでだが…」

 篠口は一瞬、押し黙った。

「一度、あの社長席へ座ってみたいもんです。あの回転椅子のクッションが心地よさそうです」

「ははは…お前は能天気でいいな。俺にはそんな発想、浮かびもしなかったぜ」

「まあ、専務席でも常務席でもいいんですが…。少し心地悪くなりますがね」

 そんなこたぁ有り得ないだろう…と思えた篠口だったが、下がったテンションは一気に回復し、大声で笑い転げた。幸いフリーズの店内に客の姿はなく、遠くで棒立ちする女店員だけがいぶかしげに大声で笑う篠口を見る程度で済んだ。二人はその後もしばらく語り合い、店を出ると別れた。その後ろ姿は傷ついた二匹の狼が互いの傷を舐めあう姿に似通っていた。

 次の朝、出勤した篠口は会社のエントランスへ入ろうとしていた。今日からまたホルマリン漬けか…と、恐らく定刻には退社できない想定を胸に秘めて、篠口はエレベーター前に立った。そのとき、おやっ? と首を傾げる事態に篠口は気づいた。昨日までとは明らかに違う篠口に対する社員達の態度だった。すべての者が停止し、一歩下がって篠口に一礼する。篠口は、おいおい! やめてくれよ・・と口が開きかけたが、思うに留めた。状況が錯綜し、篠口の頭を混乱させていた。何故、自分に頭を下げるんだ? という疑問がまず、芽生えた。とりあえず、課へ行こう・・と篠口は急いだ。篠口が昨日まで座っていた課長席はあった。篠口は安心感からか、ほっとした。

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