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(100) 困った人

 男は悩んでいた。することなすこと、すべてが裏目に出るのだ。

━ 俺なんか、この世に無用なんじゃないか。だったら、いっそう、ここから飛び降りて死んでしまおう… ━

 男がそう考えたことは幾度もあった。そして今日も、この小高い山の絶壁へ来ていた。

 夕方、男は病室に寝ていた。

「また、あなたですかっ! これで、何度目でしたかねっ!!」

 医者が病室へあわただしく入ってきて、不機嫌な顔で言った。

「… さあ…」

 医者は、なにやらじられたファイルを開け、確認するように回数を数えた。

「…31! …32! …33度目です!」

「ああ、そんなになりますか…」

 男は感慨深そうに、しみじみと言った。

「ほんとに、困った人だ! 私も医者ですから、治療はしますよっ! そりゃ、しますよっ! だけど、また来る人は、さすがに嫌だ! いや、そういう意味じゃなくて…。なんて言うのか…」

「患者はるが、わざと来る人は嫌だと?」

「そう、それっ!! あんたが言ってどうするんです、困った人だ」

「私は、わざとじゃないんです。死ねないんですよ、先生」

「そりゃ、無理でしょうよ、あの場所なら…。落ちても、下にクッションがありますから。まあ、軽い打撲かかすり傷」

「そうなんですか?」

「私にいてどうするんです! 困った人だ。分かるでしょうが、あなたにも…」

 医者はいつものことなのか、掠り傷の男の腕を粗末に手指で確認した。

「私、いそがしいんでねっ! それじゃ! あとはいつものように…。困った人だ!」

「どうも…」

 男にとっては、医者に会えることが唯一ゆいいつ、希望がかなう瞬間だった。

 医者は、ついてきた若い女看護師に無言で指示した。そして、男の腕を離すとUターンして部屋のドアを開けた。医者は内心で、ちっとも困っていなかった。この男がちょうどストレスを晴らすいい材料になっていたのだった。

「困った人だっ!!」

 医者はドアを閉じると、少し大きめの声で言い放った。


                THE END

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