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(76) 成形

 滝口は、手元が狂い、不調法で割ってしまったコップをどうしようかと思案していた。割れれば捨てて、新しいコップを買うか、あるいは家の代替え品を使えばいい…という、ただそれだけのことなのだが、なぜか捨てきれず、滝口は迷っていた。なんとか元へ戻せぬものか…と滝口は考えた。だがそれは誰が考えも無理な相談で、一度、高熱炉で溶かしてガラスを粘質にし、作り直さねば無理な相談だった。いや、それにしても、元のコップではないだろう…と、滝口には思えた。では、どうするか? と、滝口は巡った。捨てないとすれば、なんとか見られる形に成形しなければならない。ガラス切り用のカッターがあるにはあったが、モノが曲線では、それもままならない。滝口は自動の研磨けんま機[サンダー]を取り出して割れた部分をけずり始めた。割れた部分の一番、下の部分を水平にカットして切り口をなめらかにすれば、コップは見られる形にはなる…と踏んだのだ。滝口は工作、…いや、成形を開始した。最初は上手うまくいった。ところが、ある程度進んだところで、新たなひびが入った。こうなれば仕方がない…と、滝口は成形を断念し、新聞紙に包んで燃えないゴミ袋へ捨てた。滝口に達成感が損なわれた空虚な時が流れた。しばらくして、ふと、滝口はもう少し、やってみよう…と思い直した。滝口は一端捨てた新聞紙のかたまりひろい出し、中の割れたコップを手にした。

 ふたたび、滝口の成形作業が始まった。滝口の読みは、こうだった。

━ 薄い側壁のガラス面は無理だろう。だが下から1cm程度は、見たところ、幾らかブ厚くなっていた。そこなら研磨しても割れないだろう… ━

 というものだった。で、滝口は実行した。結果は成功だった。サンダーで研磨されながら切断され、手術? いや、成形は無事、成功した。そのあと、サンド・ぺーパーで切断面を滑らかにし、滝口は最終成形し終えたコップを満足げに見遣みやった。すでにコップの形状ではなかったが、なんか捨てずに済んだという安堵あんど感と達成感が、沸々(ふつふつ)と滝口の心中に湧き起こっていた。

━ 付けダレのうつわだな… ━

 割れたコップに新たな命が吹き込まれ、新しく生まれ変わった瞬間だった。成形作は記念として、記念用陳列棚に収納された。殿堂入りである。


                 THE END

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