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(73) お金は知っていた

 工場の旋盤前である。工員の甘煮あまには手の動かし方が悪い! と、今日も先輩工員の薄味うすあじしかられていた。よく毎日、これだけ怒れるなぁ~と、つくづく働くのが嫌になるほどの怒られようだった。だが、甘煮はグツグツと薄味に嫌味いやみで煮られても辛抱して耐え忍んだ。そんな甘煮だったが、工場からもらった給料はコツコツとたくわえていた。蓄えられたお金は集合して話し合っていた。甘煮が金融機関に預貯金する前、彼のお金達が送別会を兼ねて開催する[お疲れ会]と呼ばれる会議だった。

『いやぁ~、先月も怒られてたよ、ご主人』

「君は、今月、加わったお金だったね?」

「はい! 新入りのお金です。皆さん、よろしく!」

「と言われても、明日は預けられるからお別れなんだよ、実は…」

 先輩のお金は加わったお金にそうささやいた。

「そうでした…。でも、いずれまた、このいい人の元へ集まりましょう」

「そうだな、そうしよう! なんといってもこの人は俺を呼ぶのに怒られてたし、汗をタラタラといていくれたからな。なんか、離れづらい…」

「というか、離れたくないよな!」

「そうそう!」

「じゃあ、いずれまた、集まってこの人のために尽くそうぜ!」

 オォ~ッ! と人間には聞こえない掛け声が響き、甘煮のお疲れ会はおさつや貨幣で大いに盛り上がっていた。

 一方、こちらは工場から少し離れたところにある宝くじ売り場である。散々、買ってみついだ挙句、やっと1等の前後賞¥200万を手にした塩辛しおからが金をふところへ入れ、歩いていた。家へもどった塩辛は北叟笑ほくそえんで札束を見つめ、手金庫へと入れた。しばらくして、彼がいなくなった途端、手金庫のお金達はボソボソとつぶやき始めた。塩辛からの[逃避会]が彼の手金庫の中で、さっそく開かれたのである。

「運が悪い! こいつは働かずに我々を手に入れた!」

「そうだ! 早く、この男から離れよう!」

 塩辛の逃避会のお札達は満場一致で彼からの逃避を決議した。

 三年後、金融機関を出た甘煮の手元にお疲れ会の連中が再結集していた。彼のために働こうと戻ってきたお金達である。甘煮は自分のためではなく、家族のためのお金を預貯金していたのだった。一方、塩辛の手元には、すでに宝くじで得たお金達は残っていなかった。お金達はすべて彼から逃避したのである。塩辛は遊び金で彼等をすべて使い果たしたのだった。手にした人々を、お金は知っていた。

 

               THE END

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