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(72) 接着

 世間は大型連休である。川山は連休に旅に出ることは、まずなかった。川山がそうするようになったのには、過去の痛い経験があった。遠くまで高速で出かけたのだが、行きの渋滞で半日をむなしくしてしまったのである。当然、旅館にはその日に着けず、キャンセルせざるを得なかった。狂った歯車はすべてを左右する。結果、このときの旅は散々なものとなった。そんなことで、川山は連休は出かけず、日曜大工をすることにしていた。今では、それがある種の楽しみとなっていた。

 今日も川山は日曜大工をしていた。半ば目的のモノが出来上ったとき突然、ポキッ! と鉄芯が折れた。中心となる肝心の棒で、川山は弱ったぞ…と、思案に暮れた。だが、刻々と時間は過ぎていく。川山は金属用の瞬間接着剤を出し、折れた鉄芯を接着した。そして、作業を再開した。制作は順調に進みそうだったが、しばらくしたとき、鉄芯は無惨にも分断して折れてしまった。あんぐりした顔で川山はその折れた鉄芯を見た。だが、見ていても仕方がない・・と川山はハンダゴテを出し、ハンダづけしようと試みた。これで二度目である。しばらくすると接着が完成した。川山は、ヨッシャ! とガッツポーズを決め、作業を再開した。工作は今度こそ順調に行くやに思えた。ところがしばらく進んだとき、ふたたび心棒がポロッ! と折れ、工作物は大きくゆがんだ。川山はフゥ~っと深い溜め息をついた。予定ではそろそろ仕上げにかかる時間が近づいていた。弱ったぞ…と、川山は、ふたたび思案に暮れたが、どうしようもない。スポーツドリンクでのどうるおし、折れた鉄芯を手に持った。

「よしっ! やるか…」

 にわか仕込みではあったが、川山は溶接技術を習得していた。最初から、そうすればよかったな…と、川山はそんな自分に苦笑した。数十分後、工作物は無事、完成していた。予定よりは数時間遅れたが、最後までやり通し完成できたことに川山は満足した。完成した工作物を見ながら川山は即席麺をすすった。そのとき、ふと川山の心中にある想いが浮かんだ。マンションのとなりに住む若い夫婦は、去年、離婚した。新婚四年足らずだった。川山は接着剤だな…と思った。床下ゆかしたの階下に住む中年夫婦は十五年足らずで離婚した。川山はハンダだな…と思った。天井てんじょう上の階に住む老夫婦は四十五年で死別した。川山は溶接だな…と思った。


                THE END

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