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(71) 消えた棒

 はて? と、神はお考えになった。下界では一人の男が何やらくしたらしく、うろうろとあたりを探し歩いていた。アチラ・・コチラ・・ソチラ・・やはり、ない…。男は思案に暮れた末、あきらめたらしく、どっしりとゆかへ座り込んだ。そのかん、およそ半時間だった。そして、しばらくすると、男はやはり諦め切れなかったのか、ふたたび探し始めた。しかし、男が探す目的の物は、ついに見つからなかった。二時間ばかりが経過し、辺りには夕闇が迫っていた。神は天界からその様子の一部始終をご覧になっておられた。そして、ついに見つからず途方に暮れるその男を少し哀れにおぼされた。男は何やらつぶやき始めた

『あやつ、なにやら口を動かして言っておるな。どれどれ…』

 神はお手を神耳しんじへとお近づけになり、聞き耳をお立てになった。千里眼せんりがんとはよく使われる人間の言葉だが、この場合は神の千里耳せんりじである。

『なになに…、フムフム』

 男が呟いていたのは、こうである。

「はぁ~、どこを探してもない。この前は他へ置き忘れていたから、すぐ見つかったんだが…。今回は、どこにもない?」

『ほっほっほっ…なるほどのう、馬鹿なやつだ。あそこにあるではないか。少し離れてはおるがのう。ほ~っほっほっほっ…』

 神は瞬間、お分かりになったのです。その棒がどこにあるかを…。

『人間とは仕方がない生き者ものじゃて…。ソレッ!!』

 神の御手みてが動くや、全天に閃光せんこうが走り、すさまじい雷鳴がとどろきました。

 下界では男が不思議そうに空を見上げております。それもそのはずで、雲など、ほんのひと握りもなく、閃光が走り雷鳴が轟くはずがなかったのだ。その男が見つけられなかった棒は神によって命を吹き込まれ、にわかに生きるがごとく動き、元の位置へ戻ったのだった。それは、男がその棒を買い求める前、存在していた店だった。

「まあ、いいか…。明日あした、買うとしよう…」

 男は溜め息を一つき、夕飯の準備を始めた。

 その翌日、その棒は店で男によって、ふたたび買われ、男の家へと無事、戻った。棒は男が置いた元の場所に戻ったのである。ただ、男の心中には棒を失って買ったという気持が残った。新しかったが、その棒は何年か前に男が買い求めた棒であった。

『ほっほっほっ…まあ、よかろうて…』

 神は、ニタリと笑顔を見せられ、虚空こくう彼方かなたへ姿をおかくしになった。


                 THE END

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