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(68) 蒟蒻[こんにゃく]

 柔崎やわさき蒟蒻こんにゃくのような高校生だ。苗字みょうじからして柔らかそうな男子生徒である。彼はすぐフニャリと曲がる自然体で生き続けていた。あたかも、裏も表もない蒟蒻そのものだった。ついた渾名あだなはそのものズバリ、コンニャクである。

「おい! 2組のコンニャクだ。ちょうどいいや。ムシャクシャしていたとこだし、愚痴を聞いてもらおうぜ」

「そうだな…」

 イジメではない。柔崎は[なんでも聞き係]になっていた。男子、女子生徒を問わず柔崎のところへ来て、愚痴をブツブツと吐いてはスカッ! として帰っていった。いつの間にか、その評判は全校にも及び、学年を問わず、彼のところへ来ては愚痴るようになっていった。また、その時々の柔崎の対応が上手うまく、生徒達の愚痴を聞くだけでなく、いい相談相手として解決策や解消策も示したから尚更なおさらだった。学校はイジメの逆現象として、見て見ぬ振りをした。というよりか、校長は密かに見守る方針を取った。彼はすでに多くの先生をしのぎ、学校の有名人であった。そして今日も、同学年で1組の男子が二名、柔崎に目をつけ、近寄ろうとしていた。

「ちょっとさぁ~、話があるんだけど時間、あるかなぁ~」

「ああ、すみませんねぇ~。放課後の5時10分からにしてもらえませんかぁ~。もうすぐ予約の方が来られるんで…」

「ふ~ん、そうなんだ…。じゃあ、それで頼むよ!」

「はい、分かりました」

 柔崎は予約ノートへ鉛筆で記入した。男子生徒二名は立ち去ろうとした。

「あっ! すみません! もう一度、こちら向いて下さい」

 背に声を受け、ギクッ! と立ち止った男子生徒二名は振り向いた。

「え~~と。竹川君に松海君ですね。すみません、お手間を取らせました。では、のちほど…」

 この高校には名札必携の古き伝統の校則があった。柔崎は二人の名札を見て素早くノートへメモし、足早に去った。逆に取り残された二人は茫然ぼうぜんと柔崎を見送る破目になった。

「お待たせしました! どういった内容でしょう?」

 校舎裏である。すでに女子生徒が待機していた。その生徒は、すぐにペチャクチャと愚痴りだした。

「ああ~そうでしたか。それは、いけない! 向田さん、それは、あなたの方が正しいですよ、ぜったい! 無視してやりなさい、無視、無視!」

「ありがとう、コンニャク。いえ、柔崎君」

「まあ、僕もそれとなく手は打っときますが…」

「どうするつもり?」

「それとなく、そうしないように言い含めますよ」

「そう、お願いするわね。スカッ! としたわ」

 向田は軽く礼をすると去っていった。

「これで、一つ片づいたと…。あっ! いけねぇや。授業が始まる!」

 柔崎はメモし終えたノートを手に、教室へと急いだ。

 

               THE END

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