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世界の境界を越えて芽吹く夢  作者: サクマ
第1章 漂着編
5/36

第5話 世界の名は

世界の名前、存在する国と種族を公開します。

ここから、作中の世界設定をちょくちょく出していくつもりです。


一部修正しました。

 

 「それでは、私の知っている世界の知識について簡単にご説明させていただきます。

 ただ、私もこの荒野から外へ出たことがないので、内容が古いもしくは間違っている

 可能性もありますので、それはご容赦下さい」

 

 「了解」


 

 二人は泉の畔に倒れていた樹木に腰掛けて話始める。


 カイトがアルテナから教わった内容は、おおまかに以下の三つである。



 まず、一つ目。

 カイトが今いるこの世界の名前は【プロフォ・エゾス】。

 この世界【プロフォ・エゾス】には、カイト達のいる大陸のみが存在し、他には存在

していないのだといわれている。

 その為かこの大陸には世界と同じ名前がついており【始源大陸プロフォ・エゾス】と

も呼ばれ、これによりこの世界では【大陸】(イコール)【世界】の図式が成り立っている。


 この世界に何故、大陸が一つしかないのかは、それはこの大陸の住人達もよく分かっ

ていないらしい。

 一説には、この世界に実在する唯一絶対の神である『女神アリプト・クパスメス』が

世界創造を行った際、【始源大陸プロフォ・エゾス】しかお創りにならなかったからだ

といわれている。


 ただし、この説には何の根拠もない為、他にも存在するであろう別の大陸を探し求め

に出た者、大海原の向こうを確かめに行った者が大勢いたが、その者達の行方はようと

知れない。




◆◇◆◇◆◇◆◇




 続いて二つ目。

 今度は大陸に存在する国々の説明に移る。


 【始源大陸プロフォ・エゾス】には大小様々な国が存在するが、代表的な国は以下の

7つ。


 始源大陸のほぼ中央に位置し、『女神アリプト・クパスメス』を信仰する神聖教国

【エピシア】。


 『始源大陸プロフォ・エゾス』で最初に建国し、長い歴史と文化を持つ伝統王国

【アルカレフ】。


 数多くの大型獣や鳥を使役し、多種多様な兵種と精強な軍勢を誇る軍事帝国

【グルレノ】。


 多くの迷宮や未開の地が存在し、冒険者達が集まる開拓王国【ランクロント】。


 大小様々な島国から強い結束力を持って構成される、世界唯一の連邦制が特徴の封鎖

連邦【イーレグ】。


 大陸随一の造船・操船技術を持ち、屈指の海運能力が自慢の海洋王国【パラメキア】。


 そして世界で唯一人族以外の種族で建国された魔皇国【リゲル】。



 他にも、正確には国家ではないが上記の七大国に匹敵する国力をもち、世界中の様々

なギルドを統括している自由都市【ユアラス・クリアス】等が存在する。


 現在この大陸では、先述の七大国の内の一つの魔皇国【リゲル】が、神聖教国【エピ

シア】を始めとする他の六王国との全面戦争の状態にある。

  この戦争は二十年近く前から続いており、魔皇国【リゲル】と伝統王国【アルカレ

フ】及び軍事帝国【グルレノ】の両王国の国境を最前線として、激しい戦いが繰り広げ

られているらしい。


 ちなみ、カイトが今いるのは【果ての大地】と呼ばれる場所だ。大陸南部に位置する

文字通りの世界の果て。環境は厳しく、強い魔物も多く生息している世界屈指の危険地

帯である。

 



◆◇◆◇◆◇◆◇




 そして三つ目。

 この世界には、多数の種族が生活をそれぞれ営んでいて、その種類の説明となる。

 この世界の種族は十大種族に分かれ、


  ・(ヒト)

  ・獣牙(ジュウガ)

  ・鳥翼(チョウヨク)

  ・魚鰭(ギョキ)

  ・竜燐(リュウリン)

  ・樹根(ジュネ)

  ・蟲殻(チュウカク)

  ・精霊族

  ・魔族

  ・神族



 上記の種族が世界各地に存在している。ちなみに、この世界には『女神アリプト・ク

パスメス』以外の神は存在しないのだが、便宜上一つの種族として数えられている。

 神族以外の種族は更に細かく分類することが可能で、その一例として人族の内訳を紹

介する。


 人族は基本的に○○人と呼ばれる者を示し、大きく十種類に別れ、種別は以下の通り。

  

   ・普人(アスロポフ)

   ・獣人(クテフ)

   ・鳥人(プルサフ)

   ・魚人(フサノフ)

   ・竜人(ドラコフ)

   ・蟲人(モドフ)

   ・樹人(フトフ)

   ・巨人(ギガーフ)

   ・長耳人(エルフ)

   ・鉱人(ドワーフ)

 

 上記の分け方から行くと、カイトは一応(・・)普人族、アルテナは獣人族に分類される。


 ここからまた更に細かく分けることが可能。例を挙げると獣人ならば狼人族・虎人族

等、鳥人族なら鷹人族・鷺人族等といった具合になる。

 

 一応他にも、細かい分類はあるのだが話はここまでにして、世界についての説明を一

度終了する。



 「まずはこんな処でしょうか?」


 「有難う、アルテナ」


 「恐れ入ります。それでは次は…」


 「ああ、アルテナ。今はこの位でいいよ」


 「? カイト様、宜しいのですか?」


 「うん。情けないけれど、一度に聞いても覚え切れないだろうから、とりあえずはこ

れで良いよ。また何か分からない事があったら、その時に聞くから」


 「分かりました。ところでカイト様、私も幾つかお伺いしても宜しいでしょうか?」


 

 世界の説明をしていたアルテナが、今度はカイトに対して質問をする。



 「うん。いいよ」


 「有難うございます。それではカイト様、カイト様はどんな目的で、何故こんな処で

旅をされているのですか?」



 いきなり痛い処をついた質問が飛んできた。もっとも、七体もの魔物を瞬く間に殲滅

し、空まで飛んでみせる人間がいきなり現れたのだ、彼女からしてみれば当然の質問だ

ろう。


 

 「旅の目的は色々とあるけど、あえて一言に纏めるなら『修行』かな」


 「『修行』ですか?」

 

 「そう。『受け継いだモノを守る為、託されたモノを守る為、交わした誓いを果たす

 為』に、僕は強くなりたい。強くならなくちゃいけない。そしてそれは僕が何処に居

 ようとも変わらない」



 あえて本当の事は言わず、はぐらかしたような返答をするカイト。もっとも、本当の

意味での嘘はついていない。


 

 「確かに強くなるのでしたら、この【果ての大地】はうってつけの場所でしょうが。

 ですが、カイト様の現在の装備は、とても修行の為にこの地へ来た人の物とは思えません」


 「ゴメン、そこにはつっこまないで。自覚はしてるから……」


 

 一応、武器と戦う術はあるにはあるが、今のカイトは日本の高校の制服姿だ。しかも

夏服。とても旅をする人間の格好には見えない。

 アルテナの言っていることは正論だが、こればかりはどうしようもない。カイトとて

来ようと思ってこの世界に来たわけでもないし、好き好んでこんな軽装とさえ言えない

ような恰好をして、此処に居るわけではないのだから。



 「はあ…。そういえば、カイト様は武術の心得も魔法の造詣も深いようですが、どの

 ような方に師事されておられていたのですか?さぞ名のある武芸者の方とお見受けし

 ますが」


 

 話題が変わった事にホッとしつつ質問に答える。



 「剣術も体術も魔術も、基礎は全て【恩師様】から教わったよ。それと【恩師様】の

 名前は聞いても分からないよ。なにしろどれだけ強くなろうとも、ご自身の名の売る

 行為を一切しなかったからね。というよりも、売名行為自体を嫌っていたから」



 カイトは異世界から来たのだから、アルテナが彼の【恩師様】の名前を聞いても分か

らないのは、至極当然だ。ただし、彼の言葉の後半の内容も全くの事実なのだが。



 「そうなのですか? 冒険者にしろ、戦士にしろ、魔術師にしろ強くなったら自分の

 名を売るのが普通なのでは?」


 「まあ、そうなんだろうけどね。一つ質問するけど、アルテナにとって『戦い』と『

 力』って何?」


 「『戦い』と『力』ですか…?」


 「【恩師様】にとって、『戦い』とは『大切なモノを理不尽で不条理な災いから守る

 事』、そして『力』とは『災いを退けるために必要なモノ』だったんだよ。そして【

 恩師様】は大切な人を守る為に、仲間達と一緒にみた夢を実現させる為に強くなられ

 たんだ。だから、我欲で売名行為を行うような事はなさらなかったんだよ。僕もその

 お考えが正しいと信じている」


 「そうだったのですか…」


 「うん。僕はそんな【恩師様】に師事し、多くの事を学び多くのモノを頂いた。この

 剣もその一つだ」


 

 そう言ってカイトは自分の左腰にある剣を軽く叩く。その際、カイトの剣をアルテナ

は注視する。



 「あまり見ない形の剣みたいですね。片刃の剣、曲剣のようですが…。その……」


 「見てみる?」


 

 アルテナの意図を察し、腰の剣を彼女の前に差し出す。

 見せてもらえるとは思っていなかったので、あっさり許可を貰えた事にアルテナは思

わず驚いしまう。



 「っ!? 宜しいのですかっ!?」


 「アルテナの事は信用しているよ。重いから気をつけて」


 「有難うございますっ! それでは、拝見させて頂きます」



 カイトの剣を恭しく受け取り鞘を、柄を、鍔を凝視していく。


 

 「鞘にも柄にも鍔にも、目立った装飾はされていないけど、造りがすごい丁寧でとて

 も緻密。それでいて実戦の中においても、朽ちず耐え抜くような力強さを感じます。

 刀身も拝見してもよろしいでしょうか?」


 「いいけど気を付けてね?」


 「はいっ!」


 

 ゆっくりとした動作で剣を鞘から抜いていく。

 

 

 「これは……」



 抜き放った刀身をみて思わず、アルテナの口から感嘆の息吹と言葉が漏れる。

 

 反りは浅く、刃紋のない直刃、鋒は両刃造り。


 武器の真髄を極めて造られてなお、武器の範疇にとどまらない何かを秘めた剣。

 

 自身の知らない技術で作られたであろう、初めて見る剣に見惚れてしまうアルテナ。


 一頻り見定めた後、剣を鞘に戻し持ち主であるカイトに返す。



 「眼福でした。初めて見る剣でしたが、さぞ名のある名工が打った業物なのでしょ

 う」


 「業物には違いがないけど、これを打った人は無名だよ。だって【恩師様】が打った

 んだから」



 受け取った剣を左腰に着け直しながらながら、何でもないように答える。



 「!? カイト様のお師匠様は鍛冶職人でもあられるのですか?」


 「うん。武術や魔術をはじめ、あらゆる事に精通した超超超完璧超人でね。刀剣の鍛

 冶の腕前も、超超一級品だったよ。この剣は武者修行に出される時に、餞別として頂

 いたんだ」


 「そうだったのですか。ですが、何故それだけの技量を持ちえながら、無名だったの

 ですか?」


 「【恩師様】は確かに大切な人を守る為に、夢を実現させる為に、腕を磨き己を鍛え

 て強くなられた。だけど、強すぎる力は平和の世では危険だ。【恩師様】はご自身の

 力や技術が多くの人を救うよりも、傷つけてしまうことを恐れたんだよ。だから力や

 技術が広まるような事は避けたんだ」


 

 戦う者にしろ、極める者しろ、追求する者にしろ、ただ力を求めそれを振るえばいい

訳では決してない事を端的に示す言葉だ。


 

 「ついでに言うなら、【恩師様】は僕や他の兄弟達が弟子になる事にも難色を示して

 おられた」


 「ご兄弟がおられたのですか? それと難色を示しておられたとは?」


 「兄弟達とは血の繋がりは無いけどね。難色を示しておられた理由は簡単だよ、自分

 が教えたその力で僕らが戦いの渦に身を投じる事を、そして危険に巻き込まれる事を

 嫌ったんだ。自分が持つ力の危険性は当のご自身がよく知っておられたからね。それ

 が原因で、僕らに不幸な目に遭って欲しくはなかったんだよ」


 「でもカイト様は教えを受けた……」


 「苦労したけどね。僕はどうしても【恩師様】の弟子になりたかった。弟子にして貰

 う為、出して頂いた試練に必死になって合格して、弟子にしてもらった。もっとも、

 教えて頂いたのは『基礎』だけだったけどね。それでも、死と隣り合わせな命懸けの

 修行の連続だったよ。【恩師様】曰く『中途半端な決意や覚悟で、中途半端に力を身

 につける事が一番危険だ』と仰ってた」



 遠い目をしてその時の事を懐かしむカイト。もっともその内容は常人であれば、とて

も懐かしめるような内容ではないが。



 「そうでしたか。何も知らず立ち入った事を聞いて申し訳ありませんでした……」


 「気にしなくていいよ。さてとと」

 


 カイトはそう言って立ち上がり茂みに向かう。どうやら泉の他の岸辺へ行くようだ。



 「どちらへ行かれるのですか?」


 「水浴び。とまでいかなくてもせめて顔や上半身の汗を落としてさっぱりしたい。そ

 れとも二人一緒に裸になって水浴びをするかい?」


 

 立ち止まり笑って答えるカイト。後半のセリフはただの冗談だったのだが、



 「………あの……カイト様がそう仰るのであれば…………」

 

 どうやら彼女は本気にしたらしい。

 顔を真っ赤にし、俯きながら恥ずかしそうに消え入りそうな声で答えるアルテナ。

 凛とした雰囲気を持つ彼女がこういう仕草をすると、とても愛らしく見える。

 まだ出会って間もないが、それでも彼女が冗談でこんな事を言うような女性ではない

のは間違い無い。



 「…アルテナは僕を信用してくれている。その気持ちだけを受け取っておくよ……」



 あえて彼女も自分の冗談にのってくれたんだな、と強引な解釈をして茂みの中に入っ

ていく。

 

 改めて言うまでも無い事だが、カイトも男だ。理性的に振舞ってはいても、正直なと

ころ女性には興味深々である。彼女の言葉にしても、もしかしたらその先のコトも了承

してくれていたのでは、と妄想する程には助平心がある。

 加えて、異世界に飛ばされるという異常事態に巻き込まれたのだ。仲間たちとはぐれ

てたった一人という不安と孤独。常に命の危険さらされているという恐怖と重圧。表面

上は冷静に対処しているように見えても、割といっぱいいっぱいなのだ。それが一時の

過ちであれ、慰め合いであれ、依存であれ心の均衡を保つための休息は必要である。

 だが、この時のカイトはまだ己の理性を、心の均衡を保つ事が出来た。それは、とて

もとても危うく、一歩間違えれば己の破滅を招きかねないものだったが。

 



 この後二人は、それぞれ泉の別々の場所で汗と砂を落としていたわけだが、アルテナ

は地球でいうところの『G』によく似た蟲を見かけ、大声で悲鳴を上げてしまう。その

悲鳴を聞いて駆け付けたカイトに生まれた時と同じ姿を見られてしまうのだが、その後

の事は割愛させていただくとする。



カイト君が強いのは才能のおかげだけではありません。強くなろうとする想いと努力、そして【恩師様】の教えがあればこそ強くなれたのです。

彼が何のために力を求め、強くなろうとするのかは、後々明らかにしようと思います。

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