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第四話~ママ(?)と勇者のちょめちょめ

 勇者が寝ていた部屋から魔王の玉座に移動していると何かが聞こえてきた。

「ん?なんか聞こえないか?」

「ああ。微かにですが、耳に不愉快な声が聞こえますね」

 勇者はヴェルディ・アミーゴ・プリゼンティング・カバオ・ジョセフィーヌ120世と初めて共感することができた。

「ねえねえ、ヴェルディ・アミーゴ・プリゼティング・カバオ・ジョセフィーヌ120せい!ママがきたよ!」

「ママ?」

「魔王様。あれはママと呼んではいけません。ゴミと呼んでくださいと何回も申しましたよ」

「だって、ママがいってたもん」

「ママってなんだ?」

 勇者のつぶやいた疑問は魔王に顔なしに届いていなかった。

「魔王様。わたくしはゴミの掃除をしてまいります」

「そうじ?わたしのへやはいったらだめだよ!!」

 年頃な娘な発言をする魔王にショックを隠せない顔なしはその場に崩れ落ちた。

魔王はその顔なしに念押しかのようにだめだよ!と言い勇者の手を引き玉座に向かった。

 勇者は顔なしが気になり後ろを振り向くと、そこはありえないぐらいの水が溢れていた。見ることを後悔してしまうほどの衝撃を勇者に与えていた。

 なぜなら、水は水でもなぜか黄色の濁ったものだった。

「え、ちょっと。気持ち悪いんですけど!」

「あのね、ママはいつもぎょくざにきてね、いろんなことおしえてくれるの」

「それってママなのか?」

 勇者の知っている『ママ』というのは、裁縫やら何やらを家で行い、夫の助けをしていたり、特にすることといえば、子育てだろう。勇者は魔王の間違った知識を正してやらないと俺が疲れてしまうと確信をしていた。

 魔王は久しぶりにママに会えるので、鼻歌を歌いながら玉座に向かった。

 勇者は何も答えてくれない魔王を睨みながら後をついていった。

「あらー、お久しぶりね。魔王ちゃん」

「そうだね!ママ!!」

 玉座のある部屋につくとてっかてかに光る唇を惜しげもなしに突き出している見た目男がいた。

 そう見た目が男がいた。

「そこのいい男はだれかしら?」

 声変わりを終えた男が無理やり甲高い声を出そうとしている不愉快極まる音の発生源は見た目男からだった。

「ゆうしゃっていって、ひとだすけをしてくれるいいひとなんだよ!」

「んまあ、そんないい人がいたのね。私も助けてもらいたいわね」

 うっかりしたらこの見た目男の台詞の語尾にはハートマークがつくのではないのかと思うほどのピンク色をみせていた。

「ああ。私のことはママか、ボスと呼んでね」

 またもや見えないピンクのハートが飛んできた。

 いや、ピンクというより紫色のハートが飛んでくる。

「私のことを間違えてダンディなおじさまと呼んだら、あなたのあごを2つに割るわよ?」

「・・・イエッサー。ボス」

 勇者は精一杯の抵抗のようにボスと呼んだ。

 ママはその返事にうれしそうに鼻を鳴らした。

「ママはね!いろんなめずらしいものをみさせてくれるんだよ!」

 魔王の出す珍しい物の中には、何か得体の知らない物の名前が含まれていた。

 昔の偉い人が使用していたとかいう仮面などがちょいちょいでてきた。

「あ、勇者ちゃん。私は盗賊じゃないからね。だから、私を退治しようとしたらだめよ!」

 人差し指でめっとしてくる、ママに鳥肌全開で答える勇者。

「まーた、あなたは勝手に入りましたね!!このゴミが!!」

「んまあ、私のことはゴミではなくママって呼ぶように教えたはずよ?お仕置きね」

 また頭痛の種が舞い込んできやがってと、勇者は空気を読んで心の中でつぶやいていた。

 顔なしは人差し指をママの厚い胸元をさしていた。ママは顔をすぐに崩し、勇者には理解のし難い行動をした。

「お仕置きというより、本音はあなたみたいないい体の男を抱きしめていたいのよね!」

 もちろん、勇者ちゃんも抱きしめてあげるわよ!と、ばっちーんと右目をウィンクしてくるママ。そのとき、顔なしは全ての穴という穴から水分を分泌していた。

「ママは、きょうなにをもってきてくれたの?」

 汗か涙でべちょべちょな顔なしの体をママは離し、魔王の前に綺麗な小細工をされた箱を出し、開けてみせてくれた。

「んふふ。魔王ちゃんの気に入りそうな・・・呪いの人形、そして五寸釘のセットよ!」

「またあなたは魔王様に変なものを渡そうと!!」

「ヴェルディ・アミーゴ・プリゼンティング・カバオ・ジョセフィーヌ120しぇい・・・したかんだ・・・あのね!わたしね!これほしかったんだ!」

 笑顔でにこにこしている魔王に顔なしは、人間でいう鼻のあたりから赤い血らしきものを出していた。

 どんびきをしている勇者。その勇者の真正面にたっているママはムフフと笑いながら、魔王の頭をやさしくなでていた。そのやさしくなでている手は男の手で、無骨な手をしていた。

「ママのてね、パパのてより、おとこーって感じがする!」

「魔王ちゃん、女性には漢って言ったら駄目なのよ?」

 ママはなでる力をさらに強くし、魔王の頭をさらにくしゃくしゃとしていった。

 魔王は嫌がる様子を見せなく、むしろうれしそうにしていた。

 勇者はボスの性別が男なんだと確信を得ていた。

 顔なしは水分を出しきったのかやつれているようにみえた。

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