第一話~地獄耳勇者の新技
「ぽち!いえと、ひとをもっとふみちらかせ」
ガオーと白色のドラゴンは答えるかのように鳴いた。
白色のドラゴンは大きい足を振り下ろし、青い炎を吐き出す。青い炎で焼かれた家は灰になるまで焼かれていった。もちろん、村長によって村人たちは非難していたのでこのドラゴンたちの被害にはあっていない。
「おかしいな?ひとがいない・・・」
魔王は首を傾げながら村をドラゴンの上から眺めていた。
黒いドラゴンがしっぽでひとつ、ふたつと家を消していった。
「そこの自称魔王!!」
「!?・・・むらびと!ぽち、たま!!あそこにいるむらびとAをさっさところして!」
魔王の乗る白色のドラゴンの前に立ちはだかったのは村人Aではなく、勇者だった。
勇者は細身の剣を構え、ドラゴンの上にいる魔王を睨んだ。
「村人じゃねぇよ!勇者だ、勇者!!」
「むー。こえがきこえない・・・・」
魔王の耳には勇者の声が聞こえていない。
勇者の耳には魔王の声が聞こえている。
なぜ二人の間にこのような差があるのか。それは、魔王の耳が都合よくできており、勇者の声を意識的に聞いていないのか。もしくは、勇者が地獄耳なのか。きっと、後者なんだろうと思われるが。
「よいしょっと」
魔王は掛け声とともにとんっと軽やかにドラゴンから降りた。
「さっきあなたはなにといっていたのですか?」
「はあ?え、いや・・・村人じゃねぇよ。勇者だ、勇者っと」
ちょっと勇者はさっきの台詞をもう一度言うのが恥ずかしいのか、魔王から視線を逸らしながら言った。
「そんな!ゆうしゃというのは、もっとふといけんをもって、たたかうときはじめんとうみがせつだんされていくってきいたのに!!」
「はあ!?どんな勇者だよ?そんなやつがいたら世界が破壊されまくっているじゃないか!」
「だって、パパうえの『5世紀にわたる魔王による世界征服日記』にかいてたんだもん」
ちなみに彼女の魔王知識はパパ上こと、元・魔王によって叩き込まれていた。元・魔王によると、『魔王になるための英才教育を可笑し楽しく教えた』らしい。
「お前、魔王なのか?」
「れっきとしたまおうだもん!わたしはさんだいめまおう!!」
「3代目!?おまえの前のやつが俺が倒すべき魔王か!」
「まえ?パパうえをたおすの?パパうえはせかいでいちばんつよいんだから!むらびとAごときがたおすことできないよ!!」
「ちっげぇよ!俺は村人Aじゃなくて勇者だ!」
いまだに勘違いをしている魔王に勇者は思わず持っている剣を地面にたたきつけた。
すると、地面はそこから割れていった。
「えっ・・・そんなバカな!!」
「じめんがわれた・・・・!」
地面が割れていき、ドラゴン2匹は雄叫びを上げながら飛んでいった。
「ほんとうにあなたはゆうしゃだったんだ!!」
「なんで割れたんだ!?」
「パパうえの日記にはゆうしゃはわたしのねがいをかなえることができるって!!」
笑顔で勇者を見上げる魔王。勇者はまだ困惑をしている。自分の剣によって地面が割れたことに。
そして2人の会話は噛み合っていないのだ。
「わたしね!せかいせいふくをすることがゆめんなんだ!!」
魔王は可愛らしい笑顔でえいっと手をたたくと、黒い霧が発生し2人を包んだ。
「このままおしろまでいっきにびゅーん!」
勇者は魔王に拉致をされてしまった。
勇者が村からお城に強制的移動をさせられたとき、最後に聞いたのは村長の声だった。
「勇者殿が魔王をどこかにお連れになられた!きっと留めをさしに移動をされたにちがいないぞ!みなのども、よろこべ!!」
いや俺が魔王に留めをさされるに違いないと思った勇者だった。
それに俺は勇者だけども、魔法を使えるわけがないだろと言おうとするころには可愛い部屋についていたのだ。
ついた途端に彼女は倒れた。