序章~魔王と勇者の出逢う直前
ここはあるお城の中。
「さびしいなー」
玉座に座り、足をぶらぶらをさせている。
「だれかこないかなー。ゆうしゃとかー」
ずるずるとずり落ちていく彼女はここのお城の主である魔王。
魔王人に災いを与えたり、悪の道に陥れたりする魔物。その言葉は、彼女の父親である元・魔王のためにあるような言葉である。
元・魔王は悪逆非道を尽くし、挑んできた勇者には桁違いの力で追い返していく。だが、彼はもう50世紀も生きたということで隠居をした。そこで、彼は愛娘に魔王の座を託した。
そして、彼女が魔王の座についてから早3日。
「ぱぱうえは、リゾートちというとこにいっているから、ひまだー」
彼女は大人の小人と同じくらいの身長、頭脳は産まれたてのエルフの子供と同じくらい。つまり、見た目と頭脳を人間的に言うと人間の6歳ぐらいということだ。
「そうだ!ドラゴンにのってにんげんのむらをおそおうかな!」
思い立ったらすぐに行動の彼女は、飼育小屋に向かった。
「ぽちー。たまー。今からにんげんのむらをおそうよ!!だから、おきてー」
ドシ、ドシと地響きをさせ歩み寄ってくるドラゴン2匹。
ぽちとたまは彼女の魔王になった記念にと元・魔王から贈られた愛玩動物の一部である。2匹の鼻が彼女に寄せられ、彼女はうれしそうに鼻をなでた。
なで終わると、白色のドラゴンの背中に乗った。
「勇者殿!本日はどちらに?」
「南の森の奥にある魔王の城に、ちょっとな」
「なんと!それは素晴らしい!!あの悪逆非道で無敗な魔王に挑むとは!」
村の者にも伝えてきますな!と言い、村長は出て行った。そのとき、正直行くのがだるいと思った勇者。
「なんだよ、無敗の魔王って・・・まあ、俺も負けしらずだけどな」
その男の親はいたって普通の人である。
その男は生まれも育ちもいたって普通である。
ただ違うのはその男が勇者の素質がずば抜けていたぐらいだ。
小さい頃から木の棒でモンスター退治を行い、森に探検に行くと必ず宝箱を拾ってくる。
そんなことをしていたせいか、周りから勇者になると思われ育った。自分も勇者になるんだと感じながら育ったので、自分が勇者になったことに疑問は感じていない。
そういえば、宝箱を初めて村に持って帰ったとき、大人たちは俺を担ぎ祭っていたな。と思い出に浸っていると、突然外から叫び声が聞こえた。
「勇者殿!!外にドラゴンが!!」
「まかせとっけて。いっちょ、ドラゴンを倒しますか!」
「ちなみに、ドラゴンの背に魔王と名乗る小娘が」
「はあ?魔王ってすっげぇ風格のある男って聞いたけど?」
「ですが、『わたしはまおう!ひまつぶしにこのむらをおそいます!』と」
なんだよ、暇つぶしって・・・と思いながら、村長に村人を避難させるように言った。
「バッチリですぞ!村のみんなはすでに避難小屋に移動しましたぞ」
この村長に若干いらつきながら勇者はドラゴンに向かった。
今思えば、このときから俺の運命はあの魔王に振りまわされる運命だったんだ。