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第9話:アマテラスの黄昏 ―停滞する太陽―

元総理からの依頼を受け、国家プロジェクト『アマテラス』の闇に切り込むことになったゼノス。

その背後にいたのは、かつての宿敵・九条蓮の父であり、九条財閥の当主・大和でした。

最新鋭のエネルギーセンターに乗り込んだゼノスと凛。

そこには、現代科学の限界と、人間の強欲が生み出した「巨大な欠陥」が隠されていました。

「――不法侵入ですよ、ゼノス。いや、『元』同僚と呼ぶべきかな」

 次世代エネルギーセンター、中央制御室。

 全面強化ガラスの向こうで、巨大な人工太陽のような実験炉が眩い光を放っている。

 冷徹な声の主は、最新の白衣を纏った九条蓮だった。その隣には、重厚な風格を漂わせた壮年の男――九条財閥当主、九条大和が立っている。

「蓮から聞いていたが、なるほど、傲岸不遜な男だ。元総理の差し金か何か知らんが、ここは国家の最高機密。一介のコンサルタントが口を出せる領域ではない」

 大和の威圧的な視線がゼノスを射抜く。だが、ゼノスは実験炉から溢れ出す光を、眩しがることもなく見つめ返した。

「最高機密、か。……私には、死にかけた怪物が断末魔の叫びを上げているようにしか見えんぞ、九条」

「何を……! この『アマテラス』は、量子収束によって無限のエネルギーを生み出す、人類の希望だ!」

 蓮が色をなして反論する。

「希望だと? 笑わせるな。一ノ瀬、制御パネルの第三層を表示しろ。魔法……いや、お前たちの言う『ノイズ』の発生率だ」

「えっ、あ、はい! 出します!」

 凛がゼノスから渡されていたハッキング用の魔導触媒(USBメモリ)を端子に差し込む。

 モニターに映し出されたのは、理論値とは程遠い、激しく波打つ不安定な波形だった。

「エネルギーが循環していない。この炉は外部から膨大な電力を食い潰し、熱として排出しているだけだ。……お前たちは、新エネルギーの開発に成功したのではない。『巨大な電気ストーブ』を作っただけだ」

 中央制御室に、凍り付くような沈黙が流れた。

 九条大和の頬が、わずかに引き攣る。

「……それがどうした。プロジェクトさえ続けば、国から補助金が降りる。九条財閥が潤い、その富が回る。それが『経営』というものだ」

「それは経営ではない。国家という肉体を蝕む『癌』だ。……九条。お前たちが制御できずにいるそのエネルギーの『渦』、私が手懐けてやろう」

 ゼノスが、懐からあの古い万年筆を取り出す。

「よせ! 下手に触れば暴走して、この半径数キロが消し飛ぶぞ!」

 蓮が叫び、警備員たちが一斉に銃を構える。

「一ノ瀬、下がっていろ。……これから、本物の『太陽』の点火を見せてやる」

 ゼノスが万年筆を虚空に突き立てると、彼の背後に巨大な魔法陣――幾何学的な数理モデルが展開された。

 それは、暴走する量子エネルギーの「ベクトル」を強制的に書き換える、異世界の禁呪を応用した制御理論。

「――【理の外殻ロジカル・シェル】、展開。エネルギーの逆流を反転、循環サイクルへと回せ」

 ゼノスが指先で空間をなぞるたびに、唸りを上げていた実験炉が、嘘のように静まり返っていく。

 暴力的な光が、穏やかで透き通るような黄金色の輝きへと変化した。

「バカな……。理論上不可能なはずの『完全収束』を……指先一つで、やってのけたというのか……!?」

 蓮が膝をつき、モニターに映る「効率100%」の数字を見て絶句する。

「九条。お前の息子は数字に溺れ、お前は欲に溺れた。……だが、今日この瞬間をもって、『アマテラス』は九条の私物ではなく、国民の財産となる。全データの権限を、東條元総理の管轄下へ移譲した」

「……き、貴様ぁぁぁ!!」

 大和が激昂し、ゼノスに掴みかかろうとしたその時。

 制御室の扉が開き、東條元総理が直属の特捜部を引き連れて現れた。

「九条大和。国家予算の横領、および公文書偽造の疑いで同行願おう。……ゼノス君、見事な『処方箋』だった」

 崩れ落ちる九条大和。呆然と立ち尽くす蓮。

 ゼノスは万年筆をしまい、眩い光を放つ人工太陽を背に、出口へと歩き出す。

「ゼノスさん……、本当にやっちゃいましたね。明日、世界が変わりますよ」

 凛が、震える声で、しかし誇らしげに言った。

「ああ。……だが、これはまだ『掃除』に過ぎない。本当の戦いは、これからだ」

 国家規模の闇を晴らしたゼノス。だが、彼の瞳はすでに、さらにその先にある「世界の歪み」を見据えていた。

第9話をお読みいただきありがとうございます!

ついに国家プロジェクトにメスを入れ、宿敵・九条親子を沈めたゼノス。

圧倒的な「効率100%」という数字の暴力で、既存の利権を粉砕する爽快感を楽しんでいただけたでしょうか。

次回はいよいよ第1章、完結回となります。

一躍、時の人となったゼノスと凛。彼らが次に選ぶ道とは?

そして、敗北した九条蓮が選ぶ、衝撃の「再起」の方法とは……。

**「人工太陽までハックするなんて……!」「九条親子の自滅、スカッとしました!」**と思った方は、ぜひ

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次回予告

国家の救世主となったゼノスに、世界中からオファーが殺到する。

だが、彼はすべての利権を捨て、新たな「野望」を口にする。

第1章、堂々の完結!

第10話:『宰相の凱旋 ―そして世界は最適化される―』

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