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第8話:国家の病、賢者の処方箋

最新科学で挑んできた九条を、皮肉にも「物理法則」で退けたゼノス。

凛を救い出し、二人の絆はより強固なものとなりました。

しかし、一介のコンサルタントが「世界をハックした」という事実は、ついに国家の番人たちの知るところとなります。

今回は、政財界のフィクサーが登場し、ゼノスに「日本という国の再建」を突きつけます。

「――ゼノスさん、これ……マジですか? 本物の黒塗りの車が、事務所の前にズラッと並んでるんですけど」

 数日前の事件の傷も癒えた凛が、窓の外を見て声を震わせる。

 アルトワイル事務所の前に並ぶのは、外交官ナンバーをつけた最高級セダン。そこから現れたのは、老いた身ながらも、周囲の空気を圧迫するような覇気を纏った老人だった。

「あなたが、噂の『賢者』か。……私は元総理の東條とうじょうだ。単刀直入に言おう。この国を救ってほしい」

 日本政界のフィクサーとして知られる東條が、ゼノスの前に深く頭を下げた。

 凛は驚きのあまり、持っていた湯呑みを落としそうになる。

「元総理が直々に……!? ゼノスさん、これ国家予算レベルの仕事ですよ!」

「国家、か。……規模が大きくなっただけで、やることは同じだ。東條と言ったか。お前が言う『病』とは何だ?」

 ゼノスは促され、老人が差し出した極秘資料に目を通す。

 そこには、日本の次世代エネルギー供給計画の失敗と、それに伴う天文学的な損失が記されていた。

「新エネルギー開発プロジェクト『アマテラス』。表向きは技術的問題で停滞していることになっている。……だが、裏では特定の巨大企業と外国資本が癒着し、予算を『虚無』へと流し続けているのだ。このままでは半年以内に日本のインフラは崩壊する」

「なるほど。富の流動が一点で凝固し、国全体の生命力を吸い取っているわけか。……典型的な『吸魔の陣』だな」

 ゼノスは万年筆を指先で回しながら、資料の地図を一瞥した。

「東條。この計画の責任者は誰だ?」

「……九条財閥の現当主であり、九条蓮の父。九条大和やまとだ」

 その名を聞いた瞬間、事務所の空気が凍りついた。

 敗北を喫した九条蓮の背後にいたのは、国家を食い物にする巨大な怪物だったのだ。

「面白い。九条の息子は論理を弄び、親は利権を貪るか。……いいだろう、東條。この国の『詰まり』、私が通してやろう。ただし、私の処方箋は劇薬だ。古い秩序の半分が崩壊するが、それでもいいな?」

「……国民が飢えるよりは、はるかにマシだ」

 東條が去った後、凛が不安げにゼノスを見つめた。

「ゼノスさん……これ、相手は国ですよ? 九条さんの時みたいに、現場のハックだけでどうにかなるレベルじゃ……」

「一ノ瀬。大きな組織も、小さな村も、原理は変わらん。……エネルギーとは、この世界における『マナの代替品』だ。流れをせき止めている岩を一つどかせば、あとは勝手に濁流がすべてを押し流す」

 ゼノスは事務所のホワイトボードに、日本の送電網を模した巨大な「術式」を描き始めた。

 それは経済学でも工学でもない、異世界の賢者だけが視ている「国家再興の設計図」だった。

「準備しろ、一ノ瀬。明日、我々は九条財閥の本丸、次世代エネルギーセンターへ乗り込む」

 現代社会の最深部。

 国家を治療するための、あまりに過激なコンサルティングが始まろうとしていた。

第8話をお読みいただきありがとうございます!

物語のスケールが一気に「国家レベル」へと跳ね上がりました。

九条蓮の父親という、最大の壁が立ちはだかります。

ゼノスは「新エネルギー」という現代の最先端分野を、どうやって異世界の知識でハックしていくのか?

そして、ゼノスの相棒として覚悟を決めた凛の成長にもご注目ください!

**「元総理が来るなんて激アツ!」「国家を治療するコンサル、最高です」**と思った方は、ぜひ

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いよいよ第1章、決戦の火蓋が切って落とされます!

次回予告

九条財閥が隠蔽する「欠陥システム」。

ゼノスは数千億の最新設備を前に、たった一本の万年筆で「エネルギーの革命」を起こす。

第9話:『アマテラスの黄昏 ―停滞する太陽―』

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