第7話:鉄の論理、銀の魔弾
前話では、攫われた凛を救うため、ゼノスが初めてその圧倒的な「武」の力を解放しました。
しかし、その戦闘データは宿敵・九条蓮によってすべて記録されていました。
「魔法は単なる未知の物理現象に過ぎない」と断じる九条が、最新の科学兵器を手に、ゼノスを「詰ませ」に現れます。
「――重力偏差、10.8G。エネルギー波形、カオス理論に基づいた特異点を確認」
凛を助け出し、倉庫から出ようとしたゼノスの前に、数機のドローンが音もなく舞い降りた。
ドローンのスピーカーから響くのは、かつてのエリートの余裕を取り戻した九条蓮の声だ。
「ゼノス。君の『奇跡』を解析させてもらったよ。君が使っているのは、周囲の自由電子を特定の幾何学パターンで励起させる『物理現象』だ。ならば、そのパターンを相殺することは容易い」
倉庫の周囲に配置されていた大型の電磁パルス発生装置が一斉に起動する。
空気がジリジリと震え、ゼノスが展開しようとした防護壁の術式が、霧散するように消えていった。
「ほう。マナの干渉波を、電磁波の逆位相で打ち消したか。現代の叡智も捨てたものではないな」
ゼノスは感心したように呟くが、その視線は依然として冷徹だ。
ドローンの影から、特殊なスーツを纏った九条がゆっくりと歩み寄ってくる。その手には、最新鋭の非殺傷弾――だが確実に神経を焼く「銀の魔弾」を装填した銃が握られていた。
「魔法が使えなければ、君はただの人間だ。……さあ、チェックメイトだ、ゼノス。大人しく我々のファームに戻り、その知恵をデータとして提供してもらおうか」
横で意識を取り戻した凛が、青ざめた顔でゼノスの服を掴む。
「ゼノスさん……魔法が、使えないんですか……?」
「一ノ瀬、勘違いするな。私が宰相として国を動かしていたのは、指先から火を出すためではない」
ゼノスはゆっくりと、懐から一本の万年筆を取り出した。
魔法が封じられた空間。だが、彼の瞳に宿る「覇王の輝き」は微塵も揺らいでいなかった。
「九条。お前は『現象』を封じただけで、『理』を理解していない」
「強がりを! 全方位からジャミングをかけているんだ。君に勝ち筋など――」
「計算してみろ、九条。この倉庫の構造、鉄骨の腐食具合、そして今お前が起動させた高周波装置の振動。……これらすべてが組み合わさった時、何が起こるか」
ゼノスが万年筆の先で、床の一点をコン、と叩いた。
その瞬間、魔法ではない「物理的な破壊」が起きた。
高周波の共振が倉庫のボルトを限界まで加熱し、ゼノスが叩いた一点を起点に、天井の巨大な鉄骨が九条とゼノスの間に凄まじい轟音を立てて落下したのだ。
「なっ……!? 計算外だ! なぜ今、このタイミングで落盤が!」
「魔法が封じられたなら、物理法則を使えばいい。お前の機械が発する振動こそが、この建物を壊す引き金だったのだよ」
土煙が舞い上がる中、ゼノスは凛を抱きかかえ、九条の手が届かない出口へと悠然と歩き出す。
「九条。お前の論理は鉄のように硬いが、脆い。……一ノ瀬、行くぞ。次は、この愚かな男に『本物の経営』というものを見せてやる」
背後で九条の絶叫が響くが、ゼノスは一度も振り返らなかった。
魔法を封じられてなお、世界のすべてを武器に変える男。その真の恐ろしさを、九条はまだ理解していなかった。
第7話をお読みいただきありがとうございます!
科学vs魔法の第一ラウンド。九条の「アンチ・マジック」を、まさかの「物理学」で切り抜けたゼノスでした。
九条も執念深く、次はさらに巨大な国家予算規模のプロジェクトでゼノスを潰しにかかります。
ゼノスと凛の事務所は、この事件を経てより深い信頼関係で結ばれていくことに……。
**「万年筆一回叩くだけで勝つの格好よすぎ!」「理屈で勝つゼノス様最高!」**と思った方は、ぜひ
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第1章完結まであと数話。加速していきます!
次回予告
凛を救い出したゼノスの元に、今度は「国家」からの要請が届く。
日本を揺るがす巨大エネルギー利権の裏側に、異世界の賢者がメスを入れる。
第8話:『国家の病、賢者の処方箋』




