第4話:トレンドは私が作る ―魔導倉庫の怪―
第3話では、財閥令嬢・西園寺エリカから「自社ブランドの再建」を依頼されたゼノス。
一見華やかなアパレル業界の裏に隠された、資金を食い潰す『寄生虫』の正体とは?
今回は、ゼノスが巨大な在庫倉庫で、現代の常識を覆す「在庫整理」を披露します!
「ここが、『ルミナス・モード』の基幹倉庫か。……ふむ、澱んでいるな」
千葉県・湾岸エリアに位置する広大な物流センター。
ゼノスが足を踏み入れると、そこには天井まで積み上がった「売れ残り」の段ボールの山が、不気味な迷宮のように広がっていた。
「ゼノスさん、これ……全部在庫ですか? これじゃ資金が寝ちゃうどころか、維持費だけで死んじゃいますよ!」
凛がタブレットの数字と実物を照らし合わせ、顔を青くする。
「ああ。だが、ただの在庫ではない。……エリカ、お前の会社のシステムを管理しているのは誰だ?」
ゼノスに問われ、横を歩くエリカが苦渋の表情で答える。
「……副社長の郷田よ。父の代からの古参で、ITと物流の効率化はすべて彼が握っているわ」
「なるほど。その郷田という男、なかなかの『術士』だな。……一ノ瀬、この棚の配置を見てみろ」
ゼノスが指差したのは、一見無造作に並んだラックだった。
だが、彼が万年筆で空間に数式を描くと、棚の隙間に流れる空気がねじれ、奇妙な幾何学模様が浮かび上がった。
「これは……異世界の『精神遅延』の術式に酷似している。ピッキング作業員の動線をわざと0.5秒ずつ遅らせ、さらに視覚的な死角を作ることで、特定の『高価な在庫』が紛失しても気づかないように設計されている」
「えっ、わざと効率を下げて……横領してるってこと!?」
凛が叫ぶ。
「そうだ。そして、その『消えた在庫』は別のダミー会社経由で安く買い叩かれ、裏市場で流されている。……九条、そこに隠れているのは分かっているぞ。お前もその片棒を担いでいるのか?」
倉庫の影から、九条蓮がゆっくりと姿を現した。
その顔には、敗北の屈辱を超えた、狂気じみた笑みが浮かんでいる。
「……片棒? 心外だな。私はただ、郷田副社長に『より洗練されたアルゴリズム』を提供しただけだ。ゼノス、君の言う通り、この倉庫は一つの生命体だ。君一人の手で、この巨大なシステムの『淀み』が解消できると思うか?」
「解消? ……いや、書き換える(オーバーライド)。一ノ瀬、録画の準備をしろ」
ゼノスはそう言うと、倉庫の壁にある巨大な分電盤へ歩み寄った。
彼は万年筆の先で、配線の間に目に見えない『魔導回路』を直接刻み込んでいく。
「全作業員に告ぐ。今からこの倉庫は、世界で最も効率的な『聖域』に変わる」
ゼノスが指をパチンと鳴らした瞬間――。
倉庫内のLEDライトが、幻想的な青白い光へと変貌した。
「な、何!? 体が……勝手に動く!? 迷わない……次に取るべき箱が、光って見えるぞ!」
作業員たちが驚愕の声を上げる。
ゼノスが展開したのは、異世界の軍隊で使われる**【集団加速】と【最適経路誘導】**の複合魔導。
作業員たちの視界には、取るべき商品がハイライトされ、足元には最短ルートが矢印で表示される。
「バカな……! こんなシステム、どこにも存在しない! AR(拡張現実)デバイスも無しに、どうやって!?」
九条が絶叫する。
「九条。お前は計算機を信じたが、私は『空間そのもの』を定義し直した。……エリカ、三時間待て。ここにある滞留在庫はすべて整理され、明日には『奇跡の新作』として店頭に並ぶ」
ゼノスは、埃を被っていた数年前の売れ残りドレスを一枚手に取った。
彼が軽く指で触れると、古臭かったデザインの細部が、微細な『変形魔法』によって現代のトレンドを数歩先取りした「究極の一着」へと昇華される。
「トレンドとは追うものではない。私が定めるものだ」
圧倒的な効率と、美的な奇跡。
ゼノスの無双は、アパレル業界という巨大な権力の塔を、根底から揺らし始めていた。
第4話をお読みいただきありがとうございます!
倉庫そのものを「魔導ハック」してしまったゼノス。九条の最新アルゴリズムすら、彼の『定義変更』の前には無力でした。
在庫の山を「お宝」に変えたゼノスですが、いよいよ副社長・郷田との直接対決が迫ります。
そして、ゼノスが作った「究極の一着」が、SNSで前代未聞の爆発を起こすことに……。
**「ゼノス様、かっこよすぎ!」「九条の驚き顔がクセになる」**と思った方は、ぜひ
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次回予告
ゼノスがリメイクした「一点物」のドレスが、世界的な歌姫の目に留まる。
逆転のランウェイが、今始まる――。
第5話:『逆転のランウェイ ―魔法を纏う歌姫―




