表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

24/29

第23話:摩天楼の略奪者 ―自由の女神を買い戻せ―

天上の監査役エゼキエルを退けたゼノス。しかし、神々の「清算」は加速します。

次の標的は、かつての経済の心臓・ニューヨーク。

自由の女神は黄金の「神罰の杖」へと姿を変え、マンハッタンの摩天楼は、人類の精神エネルギーを吸い上げる巨大な「アンテナ」へと改造されてしまいました。

ゼノスは、かつてない大規模な『敵対的買収』を仕掛けるため、凛をニューヨーク現地法人のCEOとして送り出します。

 かつて「眠らない街」と呼ばれたニューヨークは、今や「目覚めない街」と化していた。

 ハドソン川に立つ自由の女神は、その松明から不気味な黄金の光を放ち、街全体を「絶対服従」の結界で包み込んでいる。

 道行く人々は、まるで操り人形のように等間隔で歩き、無表情に神への賛美を呟き続けていた。

「……酷い。自由の街が、神様の『家畜小屋』にされてる……」

 マンハッタンの屋上に降り立った一ノ瀬凛が、拳を震わせる。

「一ノ瀬。……ここはもう、国家ではない。神という唯一のオーナーが所有する『私有地』だ」

 ゼノスは、風に翻るコートを抑え、眼下の光景を冷徹に分析した。

 彼の視界には、摩天楼の一棟一棟が、天上の理事会へエネルギーを送る「送電ケーブル」として視えていた。

「凛。……お前に、このニューヨークの『運営権ライセンス』を買い戻す大役を任せる」

「えっ……? 私が、ニューヨークを買い戻す……!?」

「そうだ。……九条。お前は自由の女神の『管理権限』をハックしろ。……私は、この街に眠る『負の遺産』を掘り起こしてくる」

 ゼノスが指先を弾くと、凛の胸元に、一輪の「白銀の薔薇」のブローチが現れた。

 それは、九龍の民一千万人の意志を凝縮した、地上最強の「信用クレジット」の結晶。

「凛。……神様が与える『偽りの幸福』に対し、お前は人間の『不器用な願い』を市場に流せ。……お前の想いが、この街の新しい基軸通貨だ」

 作戦が開始された。

 凛は、街の中心部――タイムズスクウェアへと向かう。

 そこでは、第二の監査役、【美】のラファエルが、黄金のハープを奏でながら、人々の感性を「均一な美」へと染め上げていた。

「――醜いね。悩み、苦しみ、泥にまみれる人間なんて。……すべて私の旋律で、美しい『部品』に変えてあげよう」

 ラファエルの音楽が、凛の精神を侵食しようとする。

 だが、凛はブローチに手を当て、力強く叫んだ。

「――いいえ! 泥にまみれても、悩んでも、それが私たちが生きてきた証なの! ……私は、この不完全な世界を……『定価』で買い取ります!!」

 凛から放たれた白銀の光が、ラファエルの黄金の旋律を真っ向から打ち砕いた。

 一人の少女の「意志」が、神が定義した「美」という独占市場を破壊し始めたのだ。

 一方、ゼノスはウォール街の地下深くにいた。

 そこには、過去数百年の強欲と絶望が沈殿した「負のアーカイブ」が眠っていた。

「……神よ。お前たちは、人間の『光』だけを吸い上げ、この『闇』を無視してきたな」

 ゼノスが地下の壁に万年筆を突き立てる。

 

「――【次元連結・不良債権の証券化デッド・スワップ】!!」

 ニューヨーク中に沈んでいた、数百年分の「悔しさ」や「野心」といった負の感情が、ゼノスの魔導によって爆発的なエネルギーへと変換される。

 それは、神々が最も嫌う「予測不能な人間臭さ」という名の猛毒。

 ――ズ、ズズズズズズッ!!

 自由の女神が、苦しげに鳴動した。

 黄金の光が剥がれ落ち、その下から、本来の青銅の肌が露わになっていく。

「……馬鹿な! 私の完璧な調和が、こんな泥臭い感情に汚されるなんて……!」

 ラファエルが悲鳴を上げる。

「ラファエル。……美しさに原価をかけすぎだ。……お前の『美』という商品は、今日をもって……全品リコール(回収)だ」

 ゼノスの宣告と共に、ニューヨークの全ビルが、人々の「意志」を取り戻して一斉に輝きを放った。

 神のアンテナは崩壊し、自由の女神は再び、人類の自立を象徴する像へと戻った。

「……勝った……。買い戻せたんだ、私たちの自由を!」

 凛が、夕日に染まるマンハッタンを見上げ、涙を流す。

 だが、空高くからは、さらに巨大な「怒り」の波動が降りてきた。

 二人を同時に倒された『天上の理事会』が、ついに物理的な殲滅を開始しようとしていた。

第23話をお読みいただきありがとうございます!

「自由」という概念を、感情と信用というリソースで買い戻す。凛の成長がゼノスの戦略とガッチリ噛み合ったエピソードでした。

「凛ちゃんの叫びに感動した!」「不良債権をエネルギーに変える発想が最高」

と思ってくださった方は、ぜひ

・ブックマーク登録

・下の【☆☆☆☆☆】評価

をよろしくお願いいたします!

第3章、戦いは欧州、そして神々の本拠地へと一気に加速します。

次回予告

ニューヨークを奪還したゼノスに、天上の理事会から「最終通告」が届く。

欧州全土を巨大な「裁判所」に変え、人類すべての『罪』を量るという。

ゼノスの前に現れたのは、かつて前世で彼に知略を授け、そして裏切った「師」の影。

「ゼノス、君の論理は……愛を知らない」

第24話:『聖域の収支報告書 ―愛という名の非論理的投資―』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ