第21話:英雄の再上場 ―深淵からのバイアウト―
ゼノスが九龍の空に消えて半年。一ノ瀬凛と九条蓮は、彼の遺志を継ぎ、九龍を「希望のモデルケース」として運営していました。
しかし、人類の予想を超えた異変が起きます。空に現れたのは、巨大な黄金の「監査ログ」。神を自称する高次元生命体『天上の理事会』が、地球という惑星の「強制清算」を宣告したのです。
文明が停止し、時間が凍りつく極限状態の中、あの男が「世界のシステム」そのものをハックして帰還します。
九龍の空は、あの日以来、見たこともないほど澄み渡っていた。
だが、その青空に突如として「ヒビ」が入った。
パリ、ニューヨーク、そして九龍。
世界中の大都市の上空に、幾何学的な黄金の紋章が浮かび上がる。それは巨大なディスプレイのように、無機質な文字を人類へと突きつけた。
> 【惑星:地球(Terra) 運営状況:Eランク(債務超過)】
> 【判定:文明の強制終了および全資産の回収を開始します】
>
「……資産の回収? 私たちの命が、ただの『在庫』だって言うの!?」
九龍の司令室で、一ノ瀬凛がモニターを叩き、叫んだ。
「ダメだ、凛さん……。物理法則そのものが書き換えられている。電力、通信、そして『重力』までもが、奴らの手で凍結されているんだ。これは戦争じゃない……ただの『差押え』だ!」
九条蓮が、機能を停止した端末を前に絶望を露わにする。
空から降りてきたのは、巨大な翼を持つ「黄金の執行者」たち。
彼らがステッキを一振りするたび、ビルは砂に還り、人々は意識を失って「魂のデータ」へと変換されていく。九龍の中央広場、ゼノスの記念碑の前に降り立った一人の執行者が、冷酷に告げた。
「不確定要素・九龍。ここが最も『帳簿』を乱していた。まずはここを、更地にする」
執行者が手をかざし、純白の業火が凛たちを飲み込もうとした、その時。
――カチッ、と。
止まっていたはずの時計の秒針が、一秒だけ「逆」に動いた。
「――全資産の凍結? 面白い冗談だ。だが、私の許可なく私の『投資先』に手を触れるのは、ビジネス上、重罪だぞ」
その声が響いた瞬間、凛の目から涙が溢れた。
執行者の業火が、着弾の直前で「氷の結晶」へと変わり、さらには「黄金の硬貨」となって地上に降り注いだのだ。
「……何者だ!? 神の裁定を阻む不純物が……!」
「不純物か。……お前たちの言葉で言うなら、『敵対的買収者』と呼んでもらおうか」
光の粒子が、凛の持つ「折れた万年筆」に収束していく。
白銀のコートを翻し、かつてよりも鋭く、そして深淵のような魔力を纏った男が、そこに立っていた。
「ゼノス……さん!」
「ゼノス! 本当に……本当に帰ってきたのか!?」
「待たせたな、一ノ瀬。九条。……少しの間、世界の『根源』を買い叩きに行っていた」
ゼノスは黄金の瞳で、天空に浮かぶ「神の監査ログ」を見上げた。
彼の手には、実体化した「白銀の契約書」が握られている。
「執行者よ。貴様らの主君に伝えろ。……この地球の経営権は、今この瞬間をもって、私が『全株式の51%』を取得し、掌握した。これより、神々の不当な支配に対する……徹底的な『構造改革』を開始するとな」
「貴様……一介の人類が、神のシステムに『増資』したとでも言うのか!?」
「増資ではない。……お前たちが捨てた『端数』を拾い集め、世界を再定義したのだ」
ゼノスが万年筆を振ると、天空の黄金の紋章がバグを起こしたように赤く染まり、次々と粉砕されていく。
神の奇跡を、論理で上書きする圧倒的なカリスマ。
「さあ、始めようか。……相手が神だろうが、仏だろうが関係ない。赤字を出している運営者には、等しく『退場』願うのが、コンサルタントの仕事だ」
伝説の軍師、再上場。
第3章、人類と神々の「世界の所有権」を賭けた最終決戦が幕を開けた。
第3章、幕開けです!
かつての仲間たちの危機に、世界の法則そのものを味方につけて帰還するゼノス。
第2章までの「経済」という枠を飛び越え、今度は「物理法則や神の奇跡」さえも経営資源として扱う、超次元の物語へと進化します。
「帰還シーンがかっこよすぎて震えた!」「神を相手に買収を仕掛ける発想が最高!」
と思われた方は、ぜひ
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次回予告
神の執行者を一撃で退けたゼノス。
だが、天上からはさらなる「監査役」として、ゼノスの前世の処刑を立案した本人が降臨する。
「君の計算は、天国では通用しないよ」
物理学が崩壊する戦場で、ゼノスが放つ「新時代の等価交換」とは。
第22話:『聖域の不良債権 ―奇跡の安売りは認めない―』




