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第14話:焦熱の軍師 ―熱エネルギーを買い叩け―

ミハイルの情報の海を暴き、九龍の闇を白日の下に晒したゼノス。

しかし、勝利の余韻を打ち砕くように、地下空間の天井を焼き切りながら、紅蓮の巨漢――八部衆が三人目【火】のヴォルカンが降臨します。

さらにその背後には、九龍の不動産と大地を掌握する【地】のガイウスが静かに控えていました。

「動く破壊」と「動かぬ封殺」。

正反対の属性を持つ二人の八部衆による、物理法則を蹂躙する連携攻撃が、ゼノスたちを「生きたままの埋葬」へと追い詰めようとしていました。

「――ネズミ共が。紙の上の数字や、水の底の嘘で遊ぶ時間は終わりだ」

 地下五千メートルのサーバー区。

 天井から滴り落ちる溶岩のような液体が、先ほどまで冷たかった冷却水を一瞬で沸騰させた。

 蒸気が立ち込める中、重厚な真紅の装甲服パワードスーツを軋ませて降り立ったのは、身長二メートルを超える巨漢、ヴォルカン。その背負った巨大な放射ユニットからは、太陽の表面温度に匹敵する「死の光」が漏れ出している。

 だが、真の脅威は背後にあった。

 ヴォルカンの影から、黄金の僧衣を纏った老人が、一歩も歩むことなく「地面ごと」滑るように現れたのだ。

 八部衆が四人目、【地】のガイウス。彼が数珠を軽く鳴らすと、逃げ場であるはずの通路が、まるで生き物のように隆起し、鉄の扉ごと完全に「岩壁」へと同化して消えた。

「……南無。ヴォルカンよ、あまり焼きすぎるな。私の『地』が、こやつらの灰を抱く場所を失う」

「ハッ! 灰も残さねぇよ。……死ねッ!」

 ヴォルカンが右腕の放射口を向けた。

 放たれたのは、超高密度のプラズマ。閉鎖された地下空間では、その熱膨張だけで鼓膜が破れ、肺が焼ける。

「あ、熱い……っ! ゼノスさん、後ろも横も、壁が……!」

 凛が膝をつき、熱風に顔を歪める。ガイウスが操る「地」によって、退路はすべて数メートルの厚い岩盤へと変えられていた。

「バカな……。ヴォルカンの熱で溶けた壁を、ガイウスが瞬時に再構築して固めている! これじゃ、永久に出られない業火のオーブンだ!」

 九条蓮が、オーバーヒートを起こしたタブレットを投げ捨てて叫ぶ。

「……破壊と再生の循環ループか。八部衆、ようやくまともな『経営連携』を見せ始めたな」

 ゼノスは、熱風に髪をなびかせながらも、一歩も引かずにヴォルカンの前に立った。

 彼の黄金の瞳は、ヴォルカンが放つ「熱」のベクトルを、刻一刻と変化する「市場価格」のように冷徹に分析している。

「ヴォルカン。お前の熱は無駄が多い。ガイウス。お前の地は、熱によって強度が下がることを忘れている。……九条。今すぐ私の背中の術式に手をかざせ。お前の論理ロジックを、奴らの循環を断ち切る『楔』にするぞ」

「……! 分かった。死なば諸共だ、やってやる!」

 九条がゼノスの背中に手を触れた瞬間、ゼノスの周囲に幾何学的な紋章が爆発的に展開された。

「――【次元連結・熱力学投資サーモ・インベストメント】」

 ゼノスが指先をヴォルカンのプラズマに向けた。

 本来、すべてを焼き尽くすはずの熱が、ゼノスの防護壁に接触した瞬間、なぜか「冷却エネルギー」へと反転したのだ。

「……なに!? 俺の火力が、冷えてやがるだと!?」

「お前たちが私を閉じ込めるために作ったこの『檻』。……これこそが、最高の『熱交換器ボイラー』だと思わないか?」

 ゼノスが足元の大地――ガイウスの領域に万年筆を突き立てた。

 ヴォルカンの熱を冷気に変え、その際に発生した膨大な「温度差エネルギー」を、ゼノスはガイウスが操る地中の「金属鉱物」へと一気に流し込んだのだ。

「九条! 奴らの熱を『磁場』にコンバートした。今のこの空間は、世界で最も巨大な『超電磁加速器』だ。……全エネルギーを地中の磁界に同調させろ!」

「了解! ……喰らえ! 超電磁・九龍粉砕レールガン・バースト!!」

 ヴォルカンの熱と、ガイウスの地。二人の力が、ゼノスの「経営的変換」によって、二人を直撃する超電磁砲へと作り替えられた。

 地下空間の壁が、内側から弾け飛び、凄まじい衝撃波がヴォルカンとガイウスを襲う。

 ドォォォォォォォォン!!

 真紅の装甲が砕け、黄金の僧衣が裂ける。自分たちが作った「檻」に閉じ込められ、自分たちのエネルギーで自滅する二人。

「……破壊エネルギーを投資に回し、敵の防壁を弾丸として買い叩く。……これが私の『経営』だ」

 崩れ落ちる巨漢と老人。

 熱気が引き、静寂が戻った地下空間で、ゼノスは煤のついたコートを軽く叩いた。

 だが、その出口の闇から、二つの不気味な笑い声が重なって響いてきた。

「あはは! ヴォルカンのおじさんも、ガイウスのおじいちゃんも、ダサすぎ!」

「……効率、最悪。……俺たちの、出番。……でしょ、セレネ?」

 闇の中から現れたのは、電子の雷を纏ったパンクな少年、【雷】のライトニング。

 そして、鏡のようなドレスを纏い、月光のような幻影を操る少女、【月】のセレネ。

 熱と地。その次は、**「精神(幻)」と「神経(電撃)」**の複合攻撃。

 ゼノスの知略さえも狂わせる、若き二人の「最速コンビ」が、不敵な笑みを浮かべていた。

第14話をお読みいただきありがとうございます!

「順番待ち」を廃止し、タイトル通り「熱を資源として買い叩く」ゼノスの無双劇を、コンビ戦という形で大幅に強化しました。

間髪入れずに現れた次なるコンビ、ライトニング&セレネ。

物理的な破壊を超えた、精神と神経をハックする彼らに対し、ゼノスはどう立ち向かうのか。

「破壊エネルギーを投資に回す発想、格好いい!」「コンビ戦のスピード感がすごい」

と思っていただけましたら、ぜひ

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次回予告

視界を奪うセレネの幻惑と、神経を焼くライトニングの雷。

偽りの記憶の中で、ゼノスは凛と九条を「敵」と誤認させられる。

孤立無援の精神世界で、ゼノスが放つ究極の「自己投資」とは?

第15話:『月と雷の狂騒曲 ―偽りの絆と真実の対価―』

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