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097話「戦友」





 第055部隊と無事合流を果たした私たちは小休憩を挟みながらゆっくりと本来の合流地点であるエリアD2の目前エリアC2-7に仮拠点を設立した。テントと神聖魔術の結界を施した簡易的なものでもし魔人族にこの場所が見つかって仕舞えばなす術がない。けれどもD2を攻略するために各隊員の装備と体勢を万全にしておく必要があった。幸いにもその辺りは055部隊が持ってきた追加の装備品の数々と予想以上の兵力にこちらは大いに助けられた。


 「ワルツ先輩が第055部隊にいるとは、予想外でした。」


 「………。」


共に走り回る兵士達の背中を見ながら私達はその様子を見ていた。私たちの準備は整っているため残りは兵士たちの分である。手伝いを申し出ようとしてもやんわり断られてしまったためワルツ先輩と共にこうして見ているだけという少し不思議な時間に入っていた。


 「プラノード。」


 「はい?」


 「ここまで少ない兵力で突破してきたのは大したものだ。私だったらおそらく部下を数名失っていただろう。」


 「……そういう先輩の兵士たちはかなり多いですね。」


 「あぁ出発前に司令が届いた。通常の2〜3倍ほどの兵力がここに補給されることになった。」


 「そんなに?」


 「……おそらくD2で何かがあったということだろう。」


 「魔人軍の中でも強力な兵力を持つ者が現れた。」


 「もしくはそれに匹敵する類のものだ。さもなくばほとんど理由を聞かされないままこうも兵を渡される理由がない。」


 「………。」


目の前の任務に忠実な兵士たちを見ているとこの先の予想をするだけで心が痛くなる。攻めるのと守ることは両立できない、相手を倒すためであるのならば規制はつきものであるが、それが当の自分に回ってきたことを考えると何がなんでも生きて返したくなる。甘い考えかもしれないが。


 「プラノード、君は私と並ぶほどの強者だ。次の戦い被害は大きいが確実に勝てるだろう。」


 「……全員生存は難しいですか。」


 「事実を言ったまでだ。これだけの兵力があるということはそのうちの何人かはオトリ、盾、石垣になる。」


 「……!」


 「私はつくづく自分がこの役職に向いていないことを理解している。単独で挑めば解決できる仕事に、誰かを巻き込む方がよほど面倒だ。」


 「自分に厳しいですね。」


 「……………。」


ワルツ先輩が言っていることはこの先に起こるであろう事実である。確定したわけではないが私もこの戦場で少し先の死の匂いを感じ取れるだけの直感は身についている。だから先輩がかなり非常なことを言っているのは理解して、それに怒ろうとする自分もいれば、対してそれを受け止めなければ先輩のように割り切った考えを持てないことも理解している。


 「だがプラノード今回の占領戦難しいと感じたのならすぐに撤退しろ。」


 「ぇ」


 「私はそれを否定しない。生き残ることを目的とするのは戦場を生きる者にとって正しい行いだ。それが大義によって歪められて無鉄砲に命を放り投げるよりもずっと賢くて偉い。」


 「……先輩は。」


 「私は、自分の力で戦い続けることを選んでいる。」


その端的に現れすぎて勘違いしてしまいそうな言葉を残したままワルツ先輩はどこかへと歩いてしまった。方向は負傷者テントだった。


 「……自分の力で戦い続ける。戦い続けるか。」


 「全く、彼女らしいやり方だなぁ。」


 「!?」


私の独り言、もしくは去っていくワルツ先輩の後ろ姿を追うように言う言葉が背後から聞こえた。驚いた私は向き直ってその姿を目に映す。


 「ノーブル・フォース先輩!?!」


 「はっは。これはまた随分の驚かれようだな。」


大盾をその腕につけドワーフでありながらかなりの高身長が特徴的なフォース先輩が突然背後から現れた、その背格好から見た目そして背後に連れている少数の兵士たちから今ここにいる存在が現実だとすぐに理解した。


 「それは、もちろん……どうしてここに?」


 「D2の攻略だ。君たちの援護をしにね、もちろん上からの命令だがそれでも戦友を助けに来るのは当然だろう?」


 「……フォース先輩、までですか?どうして?」


 「実のところこれは噂だが、D2エリアに魔人族の大群が向かっているという情報がある。おそらくは私たちに対峙するために用意された部隊だ。」


 「………この作戦はそもそもエリアD3の占領を足掛かりとした作戦。ということは」


 「相手も倒すのかそうでないのか拘らず、エリアD2エリアの重要性を理解しているようだ。」


 「大物が現れる。ですか。」


 「上もなんらかの形でD2に厄介な者が来ると予測して君を遣わしたようだが、それでもたりないと感じてでのワシとワルツだ。」


 「ここに魔術秘宝を持った三人がいます。相手はそのクラスだと?」


 「もしかしたらそれ以上かもしれない。どちらにせよ、ワルツがあのようなことを言うのはそういうことだ。」


 「………。」


 「ワルツはワシらの中ではほぼ最強格と言っていいほどの戦闘能力がある。彼女が自分を犠牲にしたがるのも、味方に死んでほしくないからだ。」


 「はい。」


ワルツ先輩の自己治癒能力を考えるとフォース先輩が断言する理由も納得する。あれは純粋な戦闘能力以上に、戦闘継続力が強い能力。相手の力がわからないという前提を置けば私やクリス、ナリタテンマですらワルツ先輩には勝てないだろう。


だがそれゆえに自分に厳しく、100人の味方が死ぬよりも1人の自分が相打ちで殺した方がいい。そういう合理性と自己犠牲が混ざり合った悲しい人なのだと私はフォース先輩の言葉から読み取った。


 「自分を最強たらしめなければ、と思っているんだろう。」


 「………。」


 「ワルツも君のことは評価している。私は守ることくらいしかできないが、どうか良き友人になってくれ。」


 「フォース先輩は?」


 「ワシは、そうではない。長生きから彼女のような精神性が理解できるだけで、肩を並べられるほどに上手い関係ではないんだよ。」


 「………わかりました。」




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