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096話「合流戦」





 エリアD2へと足を運ぶ私たち。第055隊とのエリアの合同占領作戦が展開されるためその目前であるエリアC2-7のところで合流計画をたて、時間を合わせながらその場所に向かっていた。が、そこまでの道中では多くの魔暴を引き連れた魔人族の襲撃が相次ぎ連続的な襲撃に苦戦を強いられる中、私たちは殲滅と突破を図りながら戦っていた。


 「!」


 「これは、なんたる数でしょう!」


ミハイルが息を切らしながらそうこぼす通り、目の前には無数の魔暴が展開していた。それも今までの生半可に隙があるものではなくこちらの陣形に対応したような形で数の有利を活かした徹底的な防衛線が貼られていた。そして隙あらば乱戦に持ち込もうとするような攻撃性もある。


 「敵の指揮官が、随分とッ!」


口を出している暇があるのならば、突破に気を使えというものだが、私が行ったらおそらく周りの魔暴達でミハイル達に襲いかかってくる。そんなビジョンが見える中で、考えなしの行動はできなかった。

道中の連戦も相次いだことでこちらの対魔暴用の道具もほとんど切らしてしまった。今の私たちにあるのは自前の支給された装備と疲弊した脳からの知恵だった。


 「っ、あぁ!?」


 「おい、大丈夫か!!」


少しずつ前に進んでいる部隊であるが後ろの兵士たちを見ればその体力の限界性がよくわかる。単調な魔暴相手に隙をつかれる、そんな事態が進んでいけば行くほど露呈し人としての限界を感じざるおえない。


 (私はともかくとして、これじゃあ決定打が得られない。)


 「………プラノード殿、行ってください。ここの指揮は私が変わりますゆえ、あなたは指揮官を!」


思い悩んでいる私に、苦言を呈すミハイル。その瞳には炎が宿っていたが今にも消えそうな燃え尽きそうな薪の姿も同時に想像できた。


 「そんなことを言わないでください!」


 「ですが、これしかありません。貴方も、わかっているでしょう……っ。」


 「………。」


 「この老骨はこの辺りが潮時なのですよ。もとより今回の戦いで生き残れる兆しはありませんでした。っはは、歴戦の直感というやつです。」


 「っでしたら、その直感は捨てずに取っておいた方が良いですよ。縛られた運命や時間なんて、簡単に振り解ける証明になるんですから!!」


 「プラノード殿……。」


かつて私もそうだったことを思いだす。予知夢の中でも決して回避できないものは存在して、そしてそれに自分が悩まされて迷わされて落ち込まされて、後悔されて、向き合うことすら怖かったことが、逃げたくなるようなことが、それでも今こうして自分の最善信じて戦い続けて、両親と共に歪んだ形ではあれかの広い世界にいる。その現実が、悪夢に囚われていた私を救って、そして打ち砕いている理由になるのだ。


 「最後は自分がどうするか。諦めるのか最後まで足掻くかの違いです。」


 「………プラノード殿?」


自分の言った言葉に再び気付かされた私は目の前の魔暴切り伏せ、とんでもない奇策を思いつく。勝利を狙うことに貪欲になった頭の悪い考えだと理解しているが、それでもこの背後にいる兵士たちにとっての希望を見出す戦いになれるように。


 「今から突撃を開始する。我こそはというもはついてこい!!そして目の前の悪鬼を打ち砕く!」


 『─────オォォォォォ!!』


苦しんだ声から出る叫びだった。けれども私の声に答えてくれた兵士たちの心はすでに突き動いていた。ヤケクソではあるがそれでも目の前の未来を信じて見ようとする希望の声だ。


 「プラノード。わかりました、この老骨粉骨砕身の覚悟のもと、貴方の動きについていきます!!」


陣形を少し変え、前面に強く、そして背面に弱い形にする。すでに魔暴達が目の前でこちらをいつ喰らおうかとソワソワしている中、私たちは覚悟を背負った戦いをしようとしている。

仲間を失うことは指揮官としての恥である、がそれよりもこのもの達を一人でも多く生かし、そして戦いに挑む覚悟を犠牲にしない、それこそが今1番でやることだと私は結論づけた。


 「突撃───ッ」


私を最前列に後方にミハイルさんを。

そんな陣形で私たちは目の前の魔暴に向かって突撃を開始した。無論私の斬り合う速度がどれほど速いかが肝になるため次の瞬間魔人が現れてもいいように全力で目の前を切り伏せる。


 「プラノード抜刀術───セツナ!!」


連撃性を高めたプラノード抜刀術で目の前から押し寄せ我先にと私を狙ってくる魔暴達を一匹残らず切り伏せながら突き進む。前面にしか適用されないこの技だがこの際奥にいる魔人族の元へと辿り着くにはこれが1番手っ取り早い、突撃に最適な技である。


 「遅れるな!続け、必ず越えるんだ!」


兵士たちの叫びが後ろから聞こえるも、構わずただただ一点へと向かい続ける。そして魔人族の顔が見える距離まで近づくことができた。


 「速い、ガ。遅い!さぁゆけ!我が雑草ども、こいつらを蹴散らすのダ!!」


 「っ!!」


目の前から防御特化の魔暴が10体、そして背後からは攻撃特化の魔暴が30体、流石のこの戦局で目の前の突破を選んだら予測していた被害よりもまずいことになる。最悪私も含め全滅である。ここにくるまでに私もかなり疲弊してしまっているため、息が切れ切れである。

抜刀術の連続消費はこういうところで神経と体力を使うためここで超えなければ意味がない。


 「っ敵が!多い!!」


 「隊長!?!足ぃぃぃいいぁっ!!」


 「慌てるなぁ!プラノード殿行ってくださいィ!」


 (まずいっ。)


少なくともあと10秒は欲しい。だがそんな時間すらなく後ろの兵士はやられて私もきっとギリギリのタイミングで追いつかれてしまうような気がする。部隊の壊滅、その二文字が脳裏をよぎった時、急と胸が苦しくなる痛みがきた。だがここで止まったらそれこそ先程の決意の無駄になる。だからこそギリギリだろうとやらなければならない、決意のゆえに私は抜刀術を繰り出そうとする。


 「コイ、貴様の覚悟がどれほどか────」


嘲笑うような顔でこちらを見下す魔人族、だが言葉の途中から何かの物体が魔人族の頭部を吹き飛ばした。空気を叩き割るかのような音がその場で響き頭をなくした魔人族は最も簡単にバタンと魔暴達の中に倒れていった。


 「!?」


何が起こったのか理解ができない私は呆然とする。魔暴も混乱するわけでもなくその場で固まり、時間が止まったかのような空気が数秒流れそしてその中で声が聞こえる。


 「……殲滅任務。攻撃開始。」


静寂ともなった戦場の中でその落ち着いた号令はやけに耳に届いた。次の瞬間武器を持った兵士たちが戦場へと大勢参戦してきた、私たちの部隊ではない、他の部隊からの援護だった。

そしてその瞬間から魔暴達はようやく自分たちの指揮官を失ったのだと逃亡と混乱が混じった戦闘を行うことを始めた。だが指揮官がよほど頭が良かったのか周りの魔暴達は参戦してきた兵士たちに気圧されて一瞬で叩き潰されていった。


 「味方の援護を受けつつ、後退!防御陣形を維持したまま生き残ることを最優先!!」


 「ハ!!」


私の指示に従う兵士たちとミハイルは、言われた通り後退。そしてそれを素早くフォローするかのように衛生兵と仲間の別部隊の兵士たちが肩を貸し、味方が傾れ込んでくる方向へと退避していく。


誰であろうこの戦場において味方を助ける行動をしたものは信じることができる。私は再び武器を引き抜き残り少ないと感じながらもまだ余裕ある心で目の前の魔暴達の殲滅へと向かった。


よほど的確の指示を下してくれていたのか、魔暴達はあっという間に片付けられ、戦闘は終了した。


 「………。」


 「救援が間に合って良かったです!」


手際が良い別部隊の兵士たちの動きを見ていた私に一人の兵士が声をかけてくれた。仲間を救援したことがかなり誇らしいようで、わざわざ私に向かってそう言ってくれた。


 「こちらこそ。……第055部隊。」


 「はい、目的の合流地点目前で、戦っているのを見たため指揮官殿が救援をと、それで参戦しました次第です!」


まさか合流部隊に助けられるとはと内心思いながらも私はその活発な青年の兵士にまだ尋ねたいことがあった。


 「指揮官殿は?」


 「ハ、あちらです。今負傷者の手当てをしております、安心してください。指揮官殿の手当ては軍最高峰です!きっと貴方様の部隊の兵士たちも問題ないです!!」


 「……ありがとう。」


指揮官が負傷者の手当て?その若干考えつかない人物がいるであろう場所へと私は向かっていった。テントもなくただただ衛生兵達が固まる場所、そこに大勢の負傷兵達が手当てを受けてもらっていた。


 (今まで見てきた救護の中でも格段に手際が良い。誰だろう、指揮官は。)


そこにいる衛生兵達の手際が私の部隊にいる兵士よりも格段に良いため思わず目を見開く、そしてここまで手際が良いのは指揮官による影響だと推察しつつ、本当にどんな人なのかと感謝と訝しむ気持ちを抱えたまま、もう少し歩く。


 「回復魔術が使えないのであれば、ここはまわりの体のラインに巻きつけるような形で強引に抑えろ。治った時に骨が変形しないように気をつけながら、元の形に戻してやるんだ。──耐えろ…」


的確な指示の声が聞こえてくる。それはまるで医療のお手本を見せているかのような声色で、どこか真っ直ぐ過ぎてどこか冷徹なイメージができる。そしてそれを観察するかのように余った衛生兵とまだ万全の兵士たちが取り囲んでいる。その声色的に衛生兵のトップかと考えたが、それにしてはどこか様子が変だと思い私も近づく。


 「プラノード殿!」


 「ミハイルさん。」


 「よくご無事で。」


 「それはこちらもです。………?」


 「あの人集りですか?指揮官殿ですよ。参戦してくださった部隊の。」


 「ここの?」


首を傾ける。ミハイルはそんな私に同調しながら頷き笑顔を見せながら、背中を押してあの人集りの中へと勧める。そんな彼の好意受け取り、私も見学者の一員のように輪の中心へと入っていく。


その中心にいたのは。


 「これで完成────お前達、私の話を聞くなら後にしろ。自分の仕事をしろ。」


 『ハ!!!』


勉強になったという意思を表しながら衛生兵の多くはマジ通り仕事に戻った。その様子には不服そうに聞こえないため息をつきながらベットで横たわっている重症兵の手当てを終えていた。淡い青色の髪が特徴的な人物、真っ白な服からはいかにもなく衛生兵のような印象を受けなくもないが、それが黒の服に着る大上着だと知ると特務的な軍人のイメージに様変わりする。


 「まだなにか用か?」


機械的で呆れたような口調をする目の前の彼女に向けて、私も身が閉まる思いをした。が、ここで引く理由はないので声をかけてみる。


 「第055部隊隊長ですね。」


 「!」


その私の呼び声に聞き覚えがあったのか、はたまた一般兵ではないと感じ取ったのか、彼女は目を大きくしながら鋭い眼光で私に振り向く。表情をあまり出さない彼女は眉が少し動く程度で驚いているのか、どうかわからない。だが確実に声色はそれを表している。


 「ラナ・プラノード……!」


 「お久しぶりです。スワード・ワルツ先輩。」




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